運動する人としない人、体はこんなに違う|10年後の自分を理学療法士が比較解説【2026年版】
2026.05.18
健康について
「最近、体が重い気がする」「昔より疲れやすくなった」。そんなふうに感じたことはありませんか。
実はその感覚、気のせいではないかもしれません。運動習慣のある人とない人では、見た目だけでなく、体の内側でも大きな違いが生まれています。しかもその差は、年齢を重ねるほど広がっていきます。
この記事では、理学療法士の視点から5つの観点で体の違いを比較します。筋肉・骨・心肺・脳・日常生活の質という切り口で、10年後の体格差をお伝えします。
💡 この記事について
本記事はセルフケアや健康維持に関する内容を含みます。症状や不調がある方は、必ず医療機関にご相談ください。
目次
- 日本人の運動習慣の現実
- 比較①:筋肉と筋力の変化
- 比較②:骨密度と関節への影響
- 比較③:心肺機能と代謝の違い
- 比較④:脳とメンタルへの影響
- 比較⑤:10年後の日常生活の質
- 「今からでも遅くない」理学療法士からのメッセージ
- よくある質問(FAQ)
- まとめ
日本人の運動習慣の現実

まず、私たちの現状を確認しましょう。
令和6年の「国民健康・栄養調査」によると、運動習慣がある人の割合は男性38.5%でした1。女性は31.5%です1。「運動習慣あり」の定義は、1回30分以上の運動を週2回以上、1年以上継続している人です。
つまり成人の約6〜7割は、十分な運動習慣を持っていないことになります。
特に注目したいのは、働き盛りの世代です。男性30〜40代・女性40代では運動習慣者の割合が最も低く、20%台前後という結果が出ています1。「忙しくて運動できない」という期間が長いほど、体への影響は蓄積していきます。
では、運動している人とそうでない人では、実際に体はどう変わるのでしょうか。5つの観点から見ていきます。
比較①:筋肉と筋力の変化
運動習慣がある人
定期的に体を動かしている人は、加齢による筋肉量の低下を大幅に抑えられます。筋トレや有酸素運動を続けることで、筋繊維が刺激されます。筋肉の合成と分解のバランスが保たれる状態が続きます。
日常生活でも差は明確に出てきます。重い荷物をスムーズに持てる、階段を息切れせずに上れる。長時間歩いても疲れにくい状態が維持されます。
運動習慣がない人
筋肉量は40歳前後から少しずつ減り始めます2。使わない筋肉は優先的に分解されてエネルギーに回されます。運動しない生活が続くほど、減少は加速していきます。
運動習慣のない60代では下肢筋力が20代比で30〜40%程度低下することも珍しくありません。「重い荷物が持てなくなった」といった変化は、サルコペニア(筋肉量低下)の初期サインと考えられます2。
65歳以上の高齢者の約15%がサルコペニアに該当するとされています3。運動不足はその最大のリスク要因のひとつです。
筋肉の変化については、運動習慣とリハビリの深い関係|理学療法士が見てきた「差」の正体もご覧ください。

比較②:骨密度と関節への影響
運動習慣がある人
骨は「使う」ことで強くなります。歩く・走る・筋トレをすると、物理的な刺激が骨芽細胞(骨を作る細胞)を活性化させます。
定期的に体を動かしている人は骨密度が維持されやすく、骨粗鬆症のリスクを下げられます。また関節周囲の筋肉がしっかりしていることで、膝や股関節への負担が分散されます。変形性関節症の進行を抑えやすいという特徴もあります。
運動習慣がない人
運動不足が続くと、骨への刺激が減り、骨密度が低下しやすくなります。女性は閉経後に骨密度が急激に下がりやすい時期があります。運動習慣のない人では、そのリスクがさらに高まります。
また、筋肉量が減ると関節を守るクッション機能が弱くなります。膝・腰・股関節に負担が集中する状態になります。「転んだだけなのに骨折した」「膝が痛い」といった状態は、このプロセスの延長線上にあります。
転倒リスクについては関連記事(転倒リスクを下げる3つの機能)もご覧ください。
比較③:心肺機能と代謝の違い
運動習慣がある人
有酸素運動を継続することで、心臓と肺の能力が高まります。心臓が1回に送り出せる血液量(1回拍出量)が増え、安静時の心拍数が下がります。これは心臓が「省エネ」で動けている状態です。
筋肉が多い人ほど基礎代謝が高くなります。太りにくい体の仕組みが維持されるため、体脂肪のコントロールもしやすくなります。血糖値や血圧の安定にも効果があり、生活習慣病のリスクが下がることもわかっています4。
運動習慣がない人
使わない筋肉は基礎代謝を下げます。筋肉は安静時でもエネルギーを消費する組織です。筋肉量が減ると、じっとしているだけで消費するカロリーも減ります。食事量が変わらなければ、体脂肪が増えやすくなります。
心肺機能の低下も進みます。「少し走っただけで息が上がる」「一駅歩くだけで疲れる」という変化は、心肺予備能の低下を示しています。
WHOは身体活動不足を、世界における死亡リスク要因の第4位に位置づけています4。慢性疾患との関連は多くのエビデンスで示されています。
比較④:脳とメンタルへの影響
運動習慣がある人
運動は体だけでなく、脳にも大きな恩恵をもたらします。有酸素運動によって脳由来神経栄養因子(BDNF)が増加します。神経細胞の成長や、記憶・学習に関わる海馬の機能が高まることが報告されています5。
セロトニンやドーパミンといった神経伝達物質の分泌も促されます。そのため気分が安定しやすく、ストレス耐性が高まります。認知症リスクの低減効果についても、多くの研究で示唆されています。
運動習慣がない人
体を動かさない生活が続くと、脳への血流が減少しやすくなります。「物忘れが増えた」「集中力が続かない」といった変化の背景に、運動不足が関わることも少なくありません。
メンタル面でも影響が出やすいとされています。うつ症状との関連については、運動不足がリスクを高める可能性を示す研究が複数あります5。「体が動かないと気持ちも動かなくなる」という感覚は、体の仕組みとしても理にかなった話です。

比較⑤:10年後の日常生活の質
ここまでの比較を踏まえて、「10年後の日常」を具体的なシーンで想像してみましょう。
運動習慣がある人の10年後
60代になっても、週末に友人と山歩きを楽しめる。孫が生まれたとき、抱っこして立ち上がることができる。旅行先で荷物を持ちながら長い距離を歩いても、翌日に響かない。
こうした「当たり前にできること」が積み重なって、充実した生活の土台になります。
運動習慣がない人の10年後
50代で「階段よりエレベーター」が当然になり、60代には「少し歩くと膝が痛い」状態に。整形外科やリハビリに通う機会が増え、外出が億劫になる。気力も体力も下がり、家にこもる時間が増えていく——。
こうした変化が積み重なると、フレイル(虚弱)や要介護状態につながるリスクが高まります3。フレイルは「加齢による予備能力の低下」であり、早期に気づいて対応することが大切です。
フレイルのサインについては、フレイル・プレフレイルとは?気づいていない人が多い虚弱の前兆サインをご覧ください。
健康寿命と平均寿命の差は、男性で約9年、女性で約12年とされています6。この差が「介護が必要な期間」です。運動習慣はその差を縮める、もっとも確実な手段のひとつと考えられています。
「今からでも遅くない」理学療法士からのメッセージ
ここまで読んで、「もう手遅れかも」と感じた方もいるかもしれません。でも安心してください。体は何歳からでも変わります。
高齢者でも適切な運動を続ければ、筋力・骨密度・心肺機能の改善が見込めることが研究で示されています4。「遅すぎる」ことはありません。ただし「早いほど効果は大きい」のも事実です。
理学療法士として多くの方を見てきた中で感じるのは、「体の変化は静かにやってくる」ということです。ある日突然動けなくなるのではなく、気づかないうちに少しずつ蓄積されていきます。だからこそ、何も不調がない今が、最もよいスタートのタイミングです。
「どこから始めればいいかわからない」という方は、専門家に相談してみることも一つの選択肢です。体の状態や目標に合わせた運動プログラムを、一緒に考えることができます。
何歳からでも体は応えてくれます。まずは今の自分の体の状態を知ることから始めてみませんか。
運動能力を高める方法は、関連記事(運動能力は何歳からでも上げられる)もあわせてご覧ください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 運動していない期間が長いのですが、今から始めても効果はありますか?
はい、効果は期待できます。筋肉は何歳からでも刺激に反応します。適切な運動と栄養があれば改善が見込まれることが研究で示されています。ただし長期間運動していなかった場合は、いきなり激しい運動はケガにつながる可能性があります。まずは軽い散歩や体操から始め、徐々に強度を上げていくことをおすすめします。
Q2. 1日にどのくらい運動すればよいですか?
「身体活動・運動ガイド2023」では、歩行などの活動を1日60分以上行うことが推奨されています4。また週2〜3回の筋力トレーニングも新たに推奨事項に加わりました。一度にまとめてできない場合は、10〜15分ずつ分けても効果があるとされています。
Q3. 運動が苦手で続きません。どうすれば継続できますか?
「運動=スポーツ」ではありません。日常生活の中で体を動かす機会を増やすことも立派な身体活動です。エレベーターより階段を使う、一駅分歩く、家事をテキパキこなすなど、日々の積み重ねが大切です。目標を小さく設定し、「できた」を積み上げることが継続のコツです。
Q4. 関節が痛いのですが、それでも運動してよいですか?
痛みの程度や原因によって異なります。軽い違和感程度であれば、適切な運動で改善が期待できることもあります。ただし強い痛みや腫れがある場合は、まず医療機関を受診してください。無理な運動は症状を悪化させる可能性があります。理学療法士への相談も有効な選択肢です。
Q5. 年齢が上がると運動効果が下がると聞きましたが、本当ですか?
若い頃と比べると筋肉の合成速度は緩やかになります。ただし高齢になっても運動の効果がなくなるわけではありません。むしろ高齢になるほど筋力の維持が生活の質を左右します。運動の重要性は年齢とともに増すと考えられています。
まとめ
運動する人としない人の違いを、5つの観点から比較してきました。
筋肉・骨・心肺・脳・日常生活のすべてにおいて、運動習慣の有無は大きな差を生みます。そしてその差は、年齢を重ねるほど広がっていきます。
日本人の6〜7割が十分な運動習慣を持っていないのが現状です。それでも体はいつからでも変われます。大切なのは「いつか始めよう」ではなく、「今日から少しだけ」という一歩です。
体の状態や痛み・不調が気になる方は、理学療法士への相談も一つの選択肢として考えてみてください。
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記事の目的と性質
本記事は、運動習慣と身体の変化に関する一般的な健康情報を提供することを目的としています。理学療法士の専門的視点から、科学的根拠に基づいた情報をわかりやすく解説していますが、以下の点にご注意ください。
本記事の限界
・個別診断の代替不可:本記事の情報は、あなた個人の症状や状態に対する診断・治療を提供するものではありません。
・医療行為ではない:記事内容は医療行為や医学的助言ではなく、一般的な情報提供です。
・自己判断のリスク:本記事の情報のみに基づく自己判断や自己治療は、症状の悪化や健康被害につながる可能性があります。
医療機関受診の推奨
以下の場合は、必ず医療機関を受診してください。
・痛みや不調が続いている場合/・症状が悪化している場合/・日常生活に支障が出ている場合/・持病や既往歴がある場合
情報の正確性について
本記事は2026年5月時点の最新情報に基づいて作成されており、信頼できる医学的根拠や公的ガイドラインを参照しています。医学・医療情報は常に更新されるため、将来的に内容が変更される可能性があります。
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参考文献
1. 公益財団法人 生命保険文化センター. 運動習慣のある人の割合はどれくらい?. 2025.
2. 健康長寿ネット(公益財団法人長寿科学振興財団). サルコペニアとは. 2023.
3. 健康長寿ネット(公益財団法人長寿科学振興財団). サルコペニアとは(有病率). 2023.
4. 厚生労働省. 健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023(概要). 2024.
5. 国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター. ロコモティブシンドローム(運動器症候群).
6. 厚生労働省. 健康づくりのための身体活動・運動について. 2024.
執筆者情報
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