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ゲームで腱鞘炎になるって本当?理学療法士が全年代のゲーマーに警鐘【2026年版】

2026.07.18

豆知識

ゲームで腱鞘炎になるって本当?理学療法士が全年代のゲーマーに警鐘【2026年版】

スマホでパズルゲームを楽しむお父さん、お母さん。
毎晩RPGに熱中する高校生。
eスポーツの大会を目指してトレーニングするプロ志望の若者。

ゲームをする人なら、年齢関係なく「腱鞘炎(けんしょうえん)」のリスクがあることを、ご存知でしょうか。

この記事では、理学療法士の視点から、ゲームと腱鞘炎の深い関係を解説します。「自分は大丈夫」と思っている方にこそ、読んでいただきたい内容です。


💡 この記事について

本記事はゲームによる腱鞘炎リスクに関する一般的な健康情報を提供するものです。個別の診断・治療の代わりとなるものではありません。症状がある場合は医療機関を受診してください。


目次

  1. 腱鞘炎とは?
  2. ゲームで腱鞘炎になる人が増えている
  3. なぜゲームは腱鞘炎を起こしやすいのか
  4. 年代別・プレイスタイル別のリスク
  5. こんな症状が出たら要注意
  6. 今日からできるセルフケア
  7. よくある質問(FAQ)
  8. まとめ

腱鞘炎とは?

腱(けん)は、筋肉と骨をつなぐ「ひも」のような組織です。その腱を包んでいるトンネル状の組織が、腱鞘(けんしょう)です。

この腱鞘の中で腱が何度も何度も擦れることで、炎症が起こります。それが腱鞘炎です。

症状は「手首や指の痛み・腫れ」が主なものです。ひどくなると、指を曲げ伸ばしするだけで強い痛みが出ることもあります。

腱鞘炎は以前、「ピアニスト」「料理人」「工場の作業員」など、手をよく使う職業の方に多い疾患でした。しかし近年では、スマートフォンやゲームコントローラーを長時間使用する人にも多くみられるようになっています。


ゲームで腱鞘炎になる人が増えている

世界中で研究が進んでいる

「ゲームで腱鞘炎になるのは、プロ選手だけでしょ?」と思っていませんか。

実は、スポーツ医学の分野でeスポーツや一般ゲーマーの健康問題が注目されており、研究が急速に進んでいます。

2022年に発表された大学生eスポーツ選手153名を対象とした調査では、26.8%が何らかの障害を経験していました。そして最も多かったのが、手首の痛みでした(DiFrancisco-Donoghue et al., 2022)。

さらに複数の研究によると、eスポーツ選手の36〜60%以上に手首・手の痛みがあると報告されています(Sowerbutts et al., 2021)。

日本でも急速に広まっているゲーム文化

2026年2月時点の最新情報によると、国内eスポーツ市場は2023年に146.85億円(前年比117%)まで拡大しています。eスポーツファン人口も856万人に達し、2025年には1,000万人を超えると予測されています(日本eスポーツ白書2024)。

もちろん、これはeスポーツを「観戦する」ファンの数です。スマホゲームも含めると、日本全国で何千万人もの方が日常的にゲームを楽しんでいます。

これほど多くの人が指や手首を使うとなると、腱鞘炎は「プロ選手だけの問題」ではないのです。


なぜゲームは腱鞘炎を起こしやすいのか

「量」と「質」の両方が問題

腱鞘炎が起こる原因は、一言でいえば「腱への過負荷の蓄積」です。その点で、ゲームには2つの大きな問題があります。

①とにかく動作回数が多い

プロのeスポーツ選手がどれだけの操作をしているか、ご存知でしょうか。

研究によると、競技eスポーツ選手は1分間に最大500〜600回のキーボード・マウス操作(APM)を行うとされています。一般的なオフィスワーカーが行う操作の約130〜180回/分と比べると、約3〜4倍の負荷になります(DiFrancisco-Donoghue et al., 2022)。

「私はプロじゃないから関係ない」と思った方、スマホゲームも同じです。パズルゲームやRPGでも、一晩のプレイで指が何千回、何万回と動いています。

②同じ動作の繰り返し(反復動作)

腱へのダメージは、大きな力よりも「小さな力の繰り返し」で蓄積します。

例えば、重いものを一度持ち上げても腱鞘炎にはなりません。しかし、軽い荷物を何千回も持ち続ければ、炎症が起こりえます。

ゲームの操作は、まさにこの「小さな力の反復」の連続です。マウスクリック、スマホのタップ、コントローラーのボタン操作……どれも小さな力ですが、何時間も繰り返せば腱への負担が積み重なります。

腱鞘炎は「3段階」で進む

腱の障害は、突然起こるわけではありません。研究によると、以下の3段階で進行するとされています(McGee & Ho, 2021)。

第1段階:反応性腱障害
運動後などに一時的に痛みが出るが、休めば回復する状態。「最近、ゲーム後に手首が少し痛いな」という段階です。

第2段階:腱修復不全
腱がうまく修復できなくなり、繰り返し痛みが出る状態。放置するとこの段階に移行しやすくなります。

第3段階:変性腱障害
腱の組織が変性(劣化)してしまった状態。この段階では、完全回復が難しくなる場合があります。

重要なのは、第1段階で気づいて対処すれば、多くの場合で回復が期待できるという点です。「少し痛いけど大丈夫だろう」と放置することが、最大のリスクです。

姿勢も腱鞘炎を悪化させる

ゲーム中の姿勢も、見逃せない要因です。

前傾みになった猫背姿勢でゲームをしていると、首・肩・肘がこわばります。その状態で手首や指を動かすと、本来なら上腕や前腕の筋肉が分担するはずの負荷が、手首や指の腱に集中してしまいます。

2025年に発表された研究では、90〜120分のゲームセッション後に手首伸筋(手首を伸ばす筋肉)の明確な疲労が確認されました。しかも、10分の休憩だけでは疲労が回復しきれないことも示されています(Tholl et al., BMC Sports Sci Med Rehabil, 2025)。

⚠️ こんな姿勢でゲームをしていませんか?

  • 猫背でうつむいてスマホを操作している
  • 机に肘をついてマウスを操作している
  • コントローラーを長時間強く握りしめている
  • 手首を折り曲げた状態でタイピングしている

これらの姿勢は、腱への負担を大きく増やす可能性があります。


年代別・プレイスタイル別のリスク

腱鞘炎のリスクは、どんな年代でも、どんなゲームをする方にも存在します。

10〜20代(eスポーツ・FPS・格闘ゲームなど)
操作量が多く、勝ちへの執念からつい長時間プレイしがちです。「若いから大丈夫」という過信が危険で、この年代こそ早期の対処が将来のキャリアを守ります。

30〜40代(スマホゲーム・RPG・スマホでの動画視聴ながらプレイ)
仕事でもパソコンを使い、帰宅後もスマホゲームをするという「二重の酷使」が問題になりやすい年代です。職業性の疲労に、ゲームの疲労が加算されます。

60〜70代以上(スマホの脳トレ・パズルゲームなど)
加齢とともに腱や腱鞘の水分が減り、弾力性が低下します。そのため、若い頃に比べて少ない操作量でも炎症が起こりやすくなります。また、回復にも時間がかかる点に注意が必要です。


こんな症状が出たら要注意

以下のような症状は、腱鞘炎が疑われるサインかもしれません。

  • ゲーム後に手首や指がじんじんする
  • 朝起きたときに指がこわばっている
  • 手首を動かすとギシギシ・ズキズキする
  • 物をつかむときに手首が痛む
  • 指を曲げ伸ばしするときに引っかかる感じがある

⚠️ 以下の症状がある場合は、早めに医療機関を受診してください

  • 痛みが1週間以上続いている
  • 手首や指に腫れや熱感がある
  • しびれや感覚の異常がある
  • 痛みが日に日に悪化している
  • 日常生活(箸を持つ、ドアノブを回すなど)に支障が出ている

今日からできるセルフケア

⚠️ 以下のセルフケアは、あくまで予防や軽度の不調への対処として紹介するものです。すでに痛みが強い場合や症状が続く場合は、必ず医師や理学療法士に相談してから行ってください。

1. 休憩のルールを決める

最も効果的な予防法は、連続プレイ時間を制限することです。

目安として、30〜45分に1回、5〜10分の休憩を取ることをおすすめします。休憩中は手をぶらぶらさせたり、グーパーを繰り返したりして、血行を促しましょう。

2. 手首・指のストレッチ

ゲームの前後に行うと効果が期待できます。痛みを感じる場合は、無理に行わないでください。

【前腕の伸筋ストレッチ】

  1. 腕を前に伸ばします
  2. 反対の手で、伸ばした方の手首を軽く下に曲げます(手の甲が上を向く方向)
  3. 前腕の外側(手の甲側)がじんわり伸びるのを感じながら、15〜20秒キープします
  4. 左右それぞれ行います

【前腕の屈筋ストレッチ】

  1. 腕を前に伸ばし、手のひらを上に向けます
  2. 反対の手で、指先をそっと下に引きます
  3. 前腕の内側(手のひら側)が伸びるのを感じながら、15〜20秒キープします
  4. 左右それぞれ行います

3. 指のグーパー運動

長時間ゲームをしたあとに、以下の運動をおすすめします。

  1. 手をゆっくり「グー」に握ります(5秒かけて)
  2. 今度はゆっくり「パー」に開きます(5秒かけて)
  3. これを10回繰り返します

血行が促進され、筋肉や腱の疲労回復を助けることが期待できます。

4. 姿勢を整える

  • スマホは目の高さに近いところで持つ(首を曲げない)
  • 肘は体に近い位置で自然に曲げておく
  • 手首は中間位(真っすぐ)で操作するよう意識する
  • 長時間の場合は、肘置きのある椅子を使う

5. アイシング(冷却)

ゲーム後に手首や指に熱感がある場合、15〜20分程度の冷却が症状の緩和に役立つことがあります。ただし、凍傷に注意してタオルで包んだ保冷剤を使いましょう。


よくある質問(FAQ)

Q. 腱鞘炎になったら、ゲームは完全に辞めないといけませんか?

A. 必ずしも完全な禁止が必要なわけではありませんが、症状が出ている間は専門家の指示に従うことが重要です。適切な負荷管理と休息、場合によってはリハビリを行いながら、段階的に復帰するのが一般的なアプローチです。自己判断でのプレイ継続は症状を悪化させる可能性があるため、まずは医師や理学療法士に相談してください。

Q. スマホゲームより、コントローラーやキーボードの方が危ないですか?

A. 一概にはいえません。どのデバイスでも、長時間・高頻度の操作は腱への負担になります。スマホは「親指の酷使」、キーボード・マウスは「手首と指全体の酷使」という傾向があります。いずれも、長時間の連続使用が最大のリスク要因です。

Q. 湿布を貼れば治りますか?

A. 湿布は一時的な痛みの緩和に役立つことがありますが、根本的な治療にはなりません。湿布で痛みが引いたとしても、腱鞘炎の原因(過負荷の蓄積)が改善されなければ、症状が繰り返す可能性があります。痛みが続く場合は医療機関を受診することをおすすめします。

Q. 若いからすぐ治ると思っていいですか?

A. 若さは回復力の点では有利ですが、「若いから治る」という油断が重症化につながるケースも多くあります。腱障害は進行するほど回復に時間がかかります。軽いうちに適切に対処することが、最善策です。

Q. 親指だけが痛いのですが、腱鞘炎ですか?

A. 親指の付け根の痛みは、「ドケルバン腱鞘炎」と呼ばれる腱鞘炎の一種の可能性があります。スマホの親指操作と関連が深い疾患です。しかし、同じような症状でも別の原因のこともあります。自己判断は難しいため、整形外科などの医療機関で診断を受けることをおすすめします。

Q. 高齢の家族がスマホゲームをしていて心配です。どう声をかければいいですか?

A. 「ゲームをやめなさい」と言うより、「1時間したら一度休憩しようね」「手首のストレッチをしてみよう」と具体的な提案をする方が受け入れられやすいでしょう。楽しみを奪うのではなく、安全に続けられるサポートをしてあげることが大切です。

Q. ゲームをしていないのに手首が痛い場合は?

A. ゲームをしていなくても手首や指の痛みが起こることはあります。関節リウマチ、手根管症候群、変形性関節症など、腱鞘炎以外の疾患の可能性もあります。痛みが続く場合は、早めに整形外科を受診してください。


まとめ

ゲームによる腱鞘炎リスクは、プロ選手だけの話ではありません。スマホゲームを楽しむシニア層も、毎日RPGに熱中する学生も、競技eスポーツを目指す若者も、同じリスクを抱えています。

特に大切なのは、「痛みが出始めた第1段階で気づいて対処する」ことです。腱障害は早期であれば回復が期待できますが、放置して進行すると回復に長い時間が必要になります。

ゲームを長く、健康的に楽しむために、今日から休憩とストレッチを習慣にしてみてください。

痛みが1週間以上続く場合や、日常生活に支障が出ている場合は、ぜひ医療機関や理学療法士にご相談ください。


免責事項

記事の目的と性質

本記事は、ゲームによる腱鞘炎リスクに関する一般的な健康情報を提供することを目的としています。理学療法士の専門的視点から、科学的根拠に基づいた情報をわかりやすく解説していますが、以下の点にご注意ください。

本記事の限界

  • 個別診断の代替不可:本記事の情報は、あなた個人の症状や状態に対する診断・治療を提供するものではありません
  • 医療行為ではない:記事内容は医療行為や医学的助言ではなく、一般的な情報提供です
  • 自己判断のリスク:本記事の情報のみに基づく自己判断や自己治療は、症状の悪化や重大な健康被害につながる可能性があります

医療機関受診の推奨

以下の場合は、必ず医療機関を受診してください:

  • 痛みや不調が1週間以上続いている場合
  • 症状が悪化している場合
  • 日常生活(食事、書字など)に支障が出ている場合
  • しびれや感覚異常がある場合
  • 持病や既往歴がある場合
  • 高齢者の方(加齢に伴う腱の変化があります)

情報の正確性について

本記事は2026年2月時点の最新情報に基づいて作成されており、信頼できる医学的根拠や学術研究を参照しています。しかし、医学・医療情報は常に更新されており、将来的に内容が変更される可能性があります。

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参考文献

  1. DiFrancisco-Donoghue J, et al. Analysis of Musculoskeletal Injuries Among Collegiate Varsity Electronic Sports Athletes. PMC, 2022. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9749791/
  2. McGee D, Ho C. Tendinopathies in Video Gaming and Esports. Frontiers in Sports and Active Living, 2021. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8195326/
  3. Tholl C, Hansen L, Frobose I. Wrist extensor fatigue and game-genre-specific kinematic changes in esports athletes: a quasi-experimental study. BMC Sports Science, Medicine and Rehabilitation. 2025;17:261.
  4. Sowerbutts A, et al. Upper Limb Injuries secondary to Overuse in the Esports community. International Journal of Esports, 2021. https://www.ijesports.org/article/39/html
  5. Swinton P, et al. On the necessity for biomechanics research in esports. Sports Biomechanics, Vol. 23, No. 12, 2024.
  6. DalCortivo R, et al. Incidence of Video Game-Related Upper Extremity Injuries in the United States. SurgiColl. 2025;3(1).
  7. 日本eスポーツ連合. 日本eスポーツ白書2024. 角川アスキー総合研究所, 2025.

執筆者情報

本記事は、理学療法士の専門的視点から作成しました。科学的根拠に基づいた信頼性の高い情報提供を心がけています。

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