脊椎と脊髄の違いをわかりやすく解説【2026年版】理学療法士が教える基礎知識
2026.07.17
健康について
「脊椎」と「脊髄」、読み方も似ていて、混同してしまいがちですよね。
実は、この2つには大きな違いがあって、それぞれ全く異なる役割を持っているんです。
リハビリの現場では、この違いをしっかり理解することが、とても大切になってきます。なぜなら、どちらに問題が起きているかによって、症状も治療法も変わってくるからです。
本記事では、理学療法士の視点から、脊椎と脊髄の違いを分かりやすく解説します。日本人特有のリスクや、2025年に発表された最新の治療情報、日常生活での注意点まで、幅広くご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
脊椎(せきつい)とは?骨の構造について
脊椎の基本構造
脊椎は、いわゆる「背骨」のことです。
首から腰まで、合計24個の骨(椎骨:ついこつ)が積み木のように連なって、私たちの体を支えています。
内訳は以下の通りです。
- 頚椎(けいつい):首の部分、7個
- 胸椎(きょうつい):胸の部分、12個
- 腰椎(ようつい):腰の部分、5個
さらに、その下には仙椎(せんつい)と尾椎(びつい)があります。
脊椎の役割
脊椎には、主に3つの大切な役割があります。
1. 体を支える
頭や上半身の重さを支え、立ったり座ったりする姿勢を保ちます。成人の頭の重さは約5kg。それを支えているのが、首の頚椎です。
2. 体を動かす
前に曲げる、後ろに反る、左右にひねる。こうした動きができるのは、脊椎が関節でつながっているからです。
3. 脊髄を守る
椎骨の中には「脊柱管(せきちゅうかん)」というトンネルがあり、そこを脊髄が通っています。脊椎は、大切な脊髄を守る「鎧(よろい)」のような役割も果たしているんです。
脊椎の加齢変化
年齢を重ねると、脊椎にも変化が現れます。
椎骨と椎骨の間にある「椎間板(ついかんばん)」というクッションが摩耗し、つぶれてきます。すると、椎骨のへりに骨の出っ張り(骨棘:こっきょく)ができたり、靭帯が厚くなったりします。
これを「脊椎症(せきついしょう)」と呼びます。
中年以降では、レントゲンでこうした変化がほとんどの人に見られます。ただし、変化があっても症状が出ない方も多いんです。
脊髄(せきずい)とは?神経の束について
脊髄の基本構造
脊髄は、脳から続く太い神経の束です。
脳から首、背中、腰へと伸びていて、脊椎の中にある脊柱管というトンネルを通っています。
脊髄は、脳とともに「中枢神経」と呼ばれる、体の司令塔のような存在です。
脊髄の役割
脊髄の役割は、大きく分けて2つあります。
1. 脳からの命令を体に伝える
「手を動かそう」「歩こう」といった脳からの指示を、脊髄が全身の筋肉に伝えます。
2. 体からの情報を脳に伝える
「痛い」「熱い」「触られた」といった感覚の情報を、脊髄が脳に届けます。
つまり、脊髄は脳と体をつなぐ「情報の高速道路」のような役割を果たしているんです。
脊髄が障害されるとどうなるか
脊髄が圧迫されたり損傷したりすると、その部位から下の体に影響が出ます。
例えば、首の部分(頚髄:けいずい)で障害が起きると、手足の両方にしびれや麻痺が現れることがあります。一方、腰の部分で障害が起きると、主に足に症状が出ます。
脊髄は一度損傷を受けると、自然には再生しにくい組織です。だからこそ、脊椎でしっかり守られているんですね。
脊椎と脊髄の決定的な違い
ここまでの説明を整理してみましょう。
| 項目 | 脊椎(せきつい) | 脊髄(せきずい) |
|---|---|---|
| 種類 | 骨(骨格) | 神経(中枢神経) |
| 役割 | 体を支える・動かす・脊髄を守る | 脳と体の情報伝達 |
| 構造 | 24個の椎骨が連結 | 脳から続く太い神経の束 |
| 位置 | 外側(骨の部分) | 内側(脊柱管の中) |
| 再生 | 骨折しても治癒可能 | 損傷すると再生困難 |
| 変化 | 加齢で変形・骨棘形成 | 自体は変化しない(圧迫されることはある) |
一言でまとめると、
脊椎は「家」、脊髄は「住人」
のような関係です。
家(脊椎)が老朽化したり変形したりすると、中に住む住人(脊髄)に迷惑がかかる。これが、脊椎の変化によって脊髄が圧迫され、症状が出るメカニズムです。
理学療法士が脊椎と脊髄の違いを重視する理由
リハビリの現場では、患者さんの症状がどこから来ているのか、正確に把握することが大切です。
症状の出方が違う
脊椎の問題(骨・関節の問題)
首や腰の痛み、一時的なしびれなどが中心です。動かすと痛い、特定の姿勢で症状が強くなる、といった特徴があります。
脊髄の問題(神経の問題)
両手両足のしびれ、筋力低下、細かい手の動きが難しくなる、歩きにくい、排尿障害など、より広範囲で深刻な症状が現れることがあります。
アプローチ方法が変わる
脊椎の問題であれば、姿勢の改善や筋力強化、関節の可動域訓練などが有効です。
一方、脊髄に問題がある場合は、より慎重なアプローチが必要です。無理な運動は避け、神経への圧迫を軽減する方法を優先します。
場合によっては、手術が必要になることもあります。
早期発見の重要性
脊髄の圧迫は、放置すると症状が進行し、回復が難しくなります。
「最近、手がしびれる」「階段が下りにくい」「ボタンがとめづらい」といった小さな変化に気づいたら、早めに専門医を受診することが大切です。
理学療法士は、こうした初期症状を見逃さないよう、日々の評価やリハビリの中で注意深く観察しています。
日本人特有のリスクとは
実は、日本人は脊髄の問題が起きやすい体質的特徴があります。
脊柱管が小さい
日本人は、欧米人に比べて脊柱管(脊髄が通るトンネル)が小さい傾向があります。
そのため、脊椎に少し変化が起きただけでも、脊髄が圧迫されやすいんです。
これは、頚椎症性脊髄症(けいついしょうせいせきずいしょう)という病気が、日本人に多い理由の一つとされています。
後縦靭帯骨化症の発症率
後縦靭帯骨化症(こうじゅうじんたいこっかしょう)は、脊椎を支える靭帯が骨のように硬くなり、脊髄を圧迫する病気です。
日本では、一般外来を受診する成人の約3%に見られ、難病に指定されています。男性に多く、発症年齢はほとんど40歳以上です。
欧米に比べて日本を含むアジア圏での発症が多いことから、遺伝的な要因も関係していると考えられています。
だからこそ予防が大切
こうした体質的な特徴があるからこそ、日常生活での姿勢や動作に気をつけることが大切です。
特に、長時間のうつむき姿勢や、首を反らす動作の繰り返しは、脊椎への負担を増やします。
スマートフォンやパソコンを使うときの姿勢、寝るときの枕の高さなど、ちょっとした工夫が予防につながります。
最新の治療とリハビリテーション情報
脊椎・脊髄の分野では、近年、目覚ましい進歩があります。
急性期脊髄損傷の治療ガイドライン
2024年に発表された「脊髄損傷AOspineガイドライン」では、早期の外科的除圧術(手術で圧迫を取り除くこと)と適切な血圧管理が、神経学的改善につながることが示されました。
できるだけ早く、適切な治療を受けることが、回復の鍵となります。
iPS細胞を使った再生医療
2025年3月、慶應義塾大学から画期的な発表がありました。
脊髄損傷の患者さん4名に対してiPS細胞由来の神経細胞を移植したところ、2名の方が運動機能を取り戻したという報告です。
さらに、「触られた感覚」や「痛みを感じる」といった感覚も戻ってきた方がいました。
これまで「一度損傷した脊髄は再生しない」と言われてきましたが、再生医療によって、その常識が変わりつつあります。
幹細胞を使った再生医療
iPS細胞とは別に、患者さん自身の脂肪から採取した「幹細胞」を使った治療も注目されています。
幹細胞には、損傷した組織を修復する力があります。自分自身の細胞を使うため、アレルギーや拒絶反応のリスクが極めて低いという特徴があります。
脂肪由来幹細胞の特徴
脂肪から採取する幹細胞は、骨髄から採取する幹細胞に比べて、増殖しやすいという利点があります。
また、神経細胞だけでなく、血管や神経を助けるさまざまな組織にも分化できるため、総合的な治療効果が期待できます。
最近の研究では、骨髄由来よりも脂肪由来の幹細胞の方が、治療成績が良いという報告もあります。
脊髄腔内ダイレクト注入という方法
一般的な幹細胞治療では、点滴で血液中に幹細胞を入れます。しかし、それでは損傷した脊髄に届く幹細胞の数が限られてしまいます。
そこで、一部の医療機関では、損傷した脊髄に直接幹細胞を注入する「脊髄腔内ダイレクト注入療法」という方法を行っています。
この方法により、より多くの幹細胞を患部に届けることができ、高い治療効果が期待されています。
実際に、手術後の後遺症で悩んでいた方が、幹細胞治療によってしびれや痛みが軽減し、「日常生活がとても過ごしやすくなった」という報告が数多く寄せられています。
リハビリテーションとの併用効果
2023年、同じく慶應義塾大学の研究で、iPS細胞移植とリハビリテーションを併用すると、移植単独よりも高い効果が得られることが分かりました。
具体的には、強度を段階的に上げていくトレッドミル歩行訓練を行うことで、移植された細胞の生存率が向上し、神経の成長が促進されたのです。
これは、リハビリテーションの重要性を改めて示す研究結果と言えます。
幹細胞治療を受けられる医療機関
脂肪由来幹細胞を使った脊髄損傷の治療は、厚生労働省に第二種・第三種再生医療提供計画を届け出た医療機関で受けることができます。
国内では、リペアセルクリニック(東京院・大阪院・札幌院)などが、脊髄腔内ダイレクト注入療法を含む幹細胞治療を提供しています。
リペアセルクリニックでは、2025年12月時点でも「頚椎症性脊髄症術後の80代女性で手術後4年の後遺症が劇的改善」「頚髄損傷60代男性で四肢のこわばりが解消」といった改善例が報告されています。
こうした治療は自由診療となりますが、手術を避けたい方や、手術後の後遺症に悩む方にとって、新たな選択肢となっています。
今後の展望
iPS細胞や幹細胞を使った再生医療は、まだ発展途上ではありますが、着実に進歩しています。
慶應義塾大学のiPS細胞治療は、2020年代後半には実用化が期待されています。
また、脂肪由来幹細胞治療は、すでに多くの医療機関で受けることができ、症例数も増えています。
将来的には、事故から時間が経った慢性期の患者さんにも、より効果的な治療が提供できる可能性があります。
脊髄損傷で苦しむ多くの方にとって、大きな希望となる研究と治療が進んでいるんです。
日常生活で気をつけるポイント
脊椎と脊髄の健康を守るために、日常生活でできることがあります。
1. 姿勢に気をつける
スマートフォン・パソコン使用時
画面を見るために首を前に突き出す姿勢は、頚椎への負担が大きくなります。
画面の高さを目線に近づける、こまめに休憩を取るなど、工夫してみましょう。
寝るときの姿勢
枕が高すぎると首に負担がかかります。自分に合った高さの枕を選びましょう。
横向きで寝る場合は、背骨がまっすぐになるような枕の高さが理想的です。
2. 適度な運動を続ける
筋力が低下すると、脊椎を支える力が弱くなります。
ウォーキングや水中運動など、無理のない範囲で体を動かすことが大切です。
特に、体幹(お腹や背中)の筋肉を鍛えることで、脊椎への負担を軽減できます。
3. 転倒に注意する
脊椎症や脊柱管が狭い方は、軽い転倒でも脊髄損傷を起こすリスクがあります。
階段の上り下り、お風呂場、夜間のトイレなど、転びやすい場所では特に注意しましょう。
手すりを設置する、足元を明るくするといった工夫も有効です。
4. 早めに相談する
以下のような症状があれば、早めに専門医に相談しましょう。
- 手足のしびれが続く
- ボタンのとめはずしが難しくなった
- 箸がうまく使えない
- 階段の上り下りに手すりが必要になった
- 歩くときに足がもつれる
- 字が書きにくくなった
こうした症状は、脊髄が圧迫されているサインかもしれません。
よくあるご質問
Q1. 脊椎症があると言われましたが、治療は必要ですか?
A. 脊椎症の変化自体は、中年以降のほとんどの方に見られます。症状がなければ、定期的な経過観察だけで十分なことが多いです。
ただし、手足のしびれや筋力低下、歩行困難など、日常生活に支障が出る症状があれば、専門医の診察を受けることをお勧めします。
Q2. 脊髄の圧迫は手術しないと治りませんか?
A. 症状が軽い場合は、薬物療法やリハビリテーションなどの保存療法で様子を見ることもあります。
しかし、症状が着実に悪化している場合や、日常生活動作が満足にできなくなった場合は、手術が検討されます。症状が進んでからでは手術の効果が得られにくいため、早めの判断が大切です。
Q3. 首を動かすと手がしびれます。危険ですか?
A. 首を上下に動かしたときに手がしびれる場合、神経が圧迫されている可能性があります。
一時的なしびれであっても、繰り返す場合や持続する場合は、早めに脊椎脊髄の専門医を受診しましょう。
Q4. 日本人は脊髄の病気になりやすいと聞きました。本当ですか?
A. 日本人は脊柱管が欧米人より小さい傾向があり、脊髄症が生じやすいと言われています。
また、後縦靭帯骨化症という難病も、アジア圏での発症が多いことが知られています。こうした体質的特徴があるため、予防や早期発見がより重要になります。
Q5. リハビリや幹細胞治療で脊髄の機能は回復しますか?
A. 脊髄自体の自然再生は困難ですが、リハビリテーションによって残された機能を最大限に活かすことができます。
また、2023年の研究では、iPS細胞移植とリハビリを併用することで、神経の成長が促進されることが分かりました。
さらに、自己脂肪由来幹細胞を使った再生医療も選択肢の一つです。特に、脊髄腔内に直接幹細胞を注入する方法では、手術後の後遺症が改善した例が数多く報告されています。
再生医療は自由診療となりますが、厚生労働省に届け出た医療機関で受けることができます。興味がある方は、専門の医療機関にご相談ください。
まとめ
脊椎と脊髄の違いについて、ご理解いただけましたでしょうか。
この記事のポイント
✓ 脊椎は骨、体を支え・動かし・脊髄を守る役割
✓ 脊髄は神経、脳と体の情報伝達を担う
✓ 脊椎の変化が脊髄を圧迫すると、深刻な症状が出ることがある
✓ 日本人は脊柱管が小さく、脊髄症が生じやすい
✓ 2024-2025年、脊髄損傷の治療とリハビリは大きく進歩している
✓ 日常生活での姿勢や転倒予防が大切
✓ 小さな症状でも、早めに専門医に相談することが重要
今日からできること
まずは、日常生活の中で姿勢を意識してみましょう。
スマートフォンを見るときの首の角度、デスクワーク時の座り方、寝るときの枕の高さ。
こうした小さな工夫の積み重ねが、脊椎と脊髄の健康を守ることにつながります。
そして、「最近、手がしびれるな」「歩きにくくなってきたかも」といった変化に気づいたら、放置せずに専門家に相談してみてください。
専門家に相談するタイミング
もし不安なことがあれば、整形外科や脊椎脊髄外科を専門とする医療機関を受診しましょう。
理学療法士も、リハビリを通じて皆さんの健康をサポートしています。
一人ひとりの状態に合わせた適切なアドバイスを受けることで、より安心して日常生活を送ることができます。
脊椎と脊髄の健康、これからも大切にしていきましょう。
📚 参考文献
- Tetreault LA, Kwon BK, Evaniew N, et al. A Clinical Practice Guideline on the Timing of Surgical Decompression and Hemodynamic Management of Acute Spinal Cord Injury and the Prevention, Diagnosis, and Management of Intraoperative Spinal Cord Injury. Global Spine J. 2024;14(3S):10S-24S.
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- 厚生労働省. 令和5年(2023年)患者調査の概況. 2024.
- 慶應義塾大学医学部. 慢性期脊髄損傷に対する細胞移植の治療効果を高めることに成功-リハビリテーションとの併用治療で運動機能回復-. STEM CELLS Translational Medicine. 2023.
- 日本整形外科学会. 頚椎症性脊髄症. 症状・病気をしらべる. https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/cervical_spondylotic_myelopathy.html(2026年1月25日閲覧)
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- 慶應義塾大学医学部. 慢性期脊髄損傷に対する細胞移植の治療効果を高めることに成功-リハビリテーションとの併用治療で運動機能回復-. STEM CELLS Translational Medicine. 2023.
- リペアセルクリニック. 脊髄損傷の再生医療(脂肪由来間葉系幹細胞治療). https://fuelcells.org/treatment/spinal_cord/(2026年1月25日閲覧)
執筆者情報
理学療法士
本記事は、2024-2025年の最新の文献・ガイドラインに基づいて作成しています。
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持病のある方、症状が続く方は、医師にご相談ください。
症状が改善しない場合や悪化する場合は、速やかに医療機関を受診してください。