再生医療を受ける前に知っておきたいリハビリの話|治療効果を引き出す準備【2026年版】
2026.06.22
リハビリ
PRP療法や幹細胞治療といった「再生医療」を検討する方が年々増えています。手術に踏み切る前の選択肢として、また保存療法では十分な改善が得られない方の希望として、その注目度は非常に高まっています。
しかし、「再生医療を受ければそれだけで治る」と考えるのは早計です。実は治療効果を最大限に引き出すためには、治療を受ける”前”のリハビリ(プレハビリテーション)が極めて重要な役割を果たします。整形外科手術の領域では、術前リハビリが術前後の機能・QOL・筋力を有意に改善することが、48試験・3,570例を統合した系統的レビューで示されています。再生医療においても、この「準備」の考え方が成果を大きく左右します。
本コラムでは、再生医療を検討している方に向けて、治療前に知っておきたいリハビリの考え方と、具体的な準備のポイントを、リハビリ専門スタッフの視点から解説します。
1. なぜ「治療前」のリハビリが重要なのか
再生医療は”身体の治癒力”を引き出す医療
PRP療法は、自分の血液から多血小板血漿(PRP)を抽出し、痛みのある関節・腱・靭帯などへ注入することで、炎症の抑制と組織修復を促す治療です。幹細胞治療では、自身の脂肪組織などから採取した幹細胞を培養し、損傷部位の修復を促します。
いずれも共通しているのは、身体本来の治癒力を引き出すという点です。だからこそ、その治癒力が十分に発揮できる「土台」が整っているかどうかが、治療結果を大きく左右します。
「土台」が整っていないとどうなるか
次のような状態のまま治療を受けても、せっかくの治療効果が十分に発揮されないことがあります。
- 関節周囲の筋力が著しく低下している
- 関節可動域が狭く、動きに大きな制限がある
- 慢性的な炎症が強く残っている
- 姿勢や動作のクセにより患部に過剰な負担がかかっている
- 体重過多により関節への負荷が大きい
つまり、再生医療とリハビリは「車の両輪」。両者がうまくかみ合うことで、本来の治療効果が引き出されるのです。
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2. 治療前リハビリ(プレハビリテーション)の3つの目的
① 患部の環境を整える
慢性的な痛みを抱える方は、痛みをかばう動きが習慣化していることが少なくありません。その結果、患部周辺の筋肉が硬くなり、可動域が制限されている方が多く見られます。治療前から関節可動域訓練やストレッチで状態を改善しておくことで、修復が起こりやすい組織環境を整えることができます。
② 周辺筋力を維持・向上させる
膝や股関節などの関節にかかる負担は、周囲の筋肉が支えています。治療前から大腿四頭筋(太ももの前)や殿筋群(お尻)などを鍛えておくことで、治療後に関節へ加わるストレスが軽減され、再発予防にもつながります。
実際、変形性膝関節症に対するPRP単独治療と「PRP+運動療法」を1年間追跡した臨床研究では、運動療法を組み合わせた群でKOOS(膝関節評価スコア)の改善が良好であったことが報告されています。「治ってから鍛える」のでは遅く、治療前から準備しておくことが、治療効果を長く保つ鍵となります。
③ 動作パターンを見直す
再生医療によって組織が修復されても、痛みを引き起こしていた「動き方」そのものが変わらなければ、再び患部に負担がかかってしまいます。立ち方、歩き方、しゃがみ方、階段の昇り降りなど、日常動作の見直しは長期的な改善に欠かせません。
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3. 治療前に取り組みたい具体的な準備
運動面の準備
| 種目 | 目的 | ポイント |
|---|---|---|
| ストレッチ | 可動域の改善・筋肉の柔軟性向上 | 患部だけでなく、関連する関節(膝なら股関節・足首)も対象に |
| 筋力トレーニング | 関節を支える筋力の確保 | 痛みのない範囲で、軽い負荷から段階的に |
| 有酸素運動 | 全身の血流促進・体重管理 | ウォーキングや水中運動など低負荷のものから |
| バランス練習 | 姿勢・動作の安定 | 片脚立ちなど日常に取り入れやすいものを |
生活習慣の見直し
- 体重管理:体重1kgの減少は、歩行時の膝への負担を約3kg軽減すると言われています
- 栄養管理:たんぱく質・ビタミンD・ミネラルをバランスよく摂取
- 質の良い睡眠:組織修復には十分な休息が不可欠
- 禁煙・節酒:血流や組織修復に悪影響を及ぼす習慣の見直し
- ストレス管理:慢性炎症や疼痛感受性に関わる要素
これらは一見地味な取り組みに思えるかもしれませんが、再生医療の効果を引き出すための「土台づくり」として、決して軽視できないものです。
4. 自己流リハビリには要注意
「リハビリが大切」と聞いて、ご自身の判断だけで運動を始めようとする方もいますが、これは注意が必要です。痛みのある状態で誤った動きを繰り返すと、かえって症状を悪化させるおそれがあります。
特に再生医療の対象となるような症状(変形性膝関節症、半月板損傷、腱板損傷、靭帯損傷など)は、自己判断での運動が逆効果になりやすい疾患です。
理想的なのは、再生医療を提供する医療機関と連携しているリハビリ施設や、整形外科のリハビリ部門で、ご自身の身体の状態を評価してもらった上で、個別に最適化されたプログラムを組んでもらうことです。
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5. 治療段階別:リハビリのロードマップ
再生医療を受ける前後でリハビリの目的・内容は段階的に変化します。全体像を把握しておくと、準備の意義が見えやすくなります。
| 時期 | 主な目的 | 主なリハビリ内容 |
|---|---|---|
| 治療前(数週間〜数か月) | 患部環境の整備・筋力の底上げ | 可動域訓練/軽負荷の筋トレ/生活習慣改善 |
| 治療直後(〜1週間) | 注入部位の安静・炎症コントロール | 軽度の関節可動域訓練/日常生活動作の調整 |
| 治療後(1〜8週) | 修復組織の機能化・筋力強化 | 段階的な筋力強化/歩行・動作訓練 |
| 長期(2か月以降) | 機能維持・再発予防 | 動作パターン定着/生活への応用/継続的トレーニング |
特に治療後2〜8週間は組織修復が活発になる時期で、この期間に適切な強度のリハビリを行うことが回復の質を大きく左右します。だからこそ、その時期にスムーズにリハビリへ移行できるよう、治療前から身体を整えておくことが重要なのです。
治療後のリハビリの詳細については、以下の関連コラムも併せてご覧ください。
- 幹細胞治療とリハビリの相乗効果|脳卒中・脊髄損傷の回復を促進する理由▼
https://repair-repos.com/column/1415/
6. 保険リハビリと自費リハビリの違い
再生医療前後のリハビリは、保険適用のリハビリでは対応が難しい場合があります。保険リハビリには時間や回数の制限があり、また再生医療と直接連携した個別プログラムを組むことは制度上困難です。
大阪市福島区にあるRepair Repos(リペアルポ)は、隣接するリペアセルクリニックの監修のもと、再生医療を見据えたリハビリに特化した個別プログラムをご提供しています。
| 比較項目 | 保険リハビリ | 自費リハビリ(リペアルポ) |
|---|---|---|
| 施術時間 | 1回20〜40分(制限あり) | 制限なし・マンツーマン対応 |
| 通院回数 | 週2〜3回が目安(保険制限) | 患者のペースで柔軟に設定 |
| 専門性 | 担当者により差がある | 整形・神経疾患専門スタッフが担当 |
| 再生医療連携 | なし | リペアセルクリニックと連携 |
| プログラム設計 | 標準プロトコル | 治療段階に合わせた個別設計 |
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7. 注意点と現状の課題
再生医療と組み合わせるリハビリは非常に有望なアプローチですが、以下の点を理解しておく必要があります。
- 効果には個人差がある
損傷の程度・年齢・全身状態によって回復の程度は異なります - すべての方に再生医療が適応されるわけではない
妊娠中の方、活動性のがん・感染症のある方などは対象外となる場合があります - リハビリには「痛みのない範囲」という大前提がある
無理な運動はかえって逆効果になります - 必ず医師・理学療法士の評価のもとで進める
自己判断はリスクを伴います
治療を検討される際は、必ず専門医による診察・カウンセリングを受け、リスクと期待される効果について十分にご理解いただいたうえでご判断ください。
まとめ:治療効果は「準備」で大きく変わる
再生医療は、決して魔法のような治療ではなく、身体本来の自然治癒力を後押しする医療です。だからこそ、治癒力が最大限に発揮される身体の状態をつくる「準備」が、治療結果を大きく左右します。
- 再生医療とリハビリは「車の両輪」。両者の組み合わせが治療効果を最適化する
- 治療前リハビリ(プレハビリテーション)には、患部環境の整備・筋力強化・動作改善という3つの目的がある
- 自己流ではなく、専門家の評価・指導のもとで進めることが安全かつ効果的
- 治療段階に合わせたリハビリプランを早期から準備することで、結果に大きな差が生まれる
リペアルポは、再生医療専門クリニック・リペアセルクリニックと連携し、治療前から治療後まで一貫したリハビリサポートをご提供できる施設です。再生医療を検討している方、治療を予定している方は、ぜひ早めにご相談ください。
無料相談・ご予約はこちら▶︎ https://repair-repos.com/reservation/
参考文献
本記事は以下の査読済み論文・公的資料に基づいて作成しました。
【学術論文】
1. Punnoose A, Claydon-Mueller LS, Weiss O, et al. (2023). Prehabilitation for Patients Undergoing Orthopedic Surgery: A Systematic Review and Meta-analysis. JAMA Network Open, 6(4), e238050.
▶ 整形外科手術を受ける患者を対象とした48試験・3,570例を統合した系統的レビュー・メタアナリシス。プレハビリテーション(術前リハビリ)が術前後の機能・健康関連QOL・筋力・腰痛の改善に有意に寄与することを示した。 DOI: 10.1001/jamanetworkopen.2023.8050
2. Tomonari M, Mishima H, Yoshioka T, et al. (2024). Effects of platelet-rich plasma combined with exercise therapy for one year on knee osteoarthritis: retrospective cohort study. Journal of Experimental Orthopaedics, 11(4), e70052.
▶ 変形性膝関節症患者を対象に、PRP単独・運動療法単独・両者併用の3群を1年間追跡した後ろ向きコホート研究。PRPと運動療法を組み合わせた群で、KOOS(膝関節評価スコア)の良好な改善が示された。 PMC: PMC11514950
3. Mizuno N, Sakata R, Ishikawa K, et al. (2025). Effectiveness of combined regenerative medicine and exercise therapy for patients with knee osteoarthritis: a scoping review. Frontiers in Rehabilitation Sciences, 6, 1612615.
▶ PRPや幹細胞治療といった再生医療と運動療法の併用効果について、変形性膝関節症患者を対象にスコーピングレビューを実施。両者の組み合わせが症状緩和と機能改善に貢献する可能性を整理。 DOI: 10.3389/fresc.2025.1612615
4. Berton A, Longo UG, Candela V, et al. (2021). Rehabilitation After Platelet-Rich Growth Factors’ Intra-Articular Injections for Knee Osteoarthritis: Two Case Reports of a Home-Based Protocol. Frontiers in Bioengineering and Biotechnology, 9, 718157.
▶ PRP関節内注射後のリハビリプロトコル(炎症抑制・固有受容器の再教育・大腿四頭筋および股関節周囲筋の強化)の安全性と有用性を症例報告として検証。注射前後を通したリハビリ統合の重要性を示唆。 PMC: PMC8419220
5. Sun Y, Zhang Y, Wu Q, et al. (2023). The efficacy of the leg swing and quadriceps strengthening exercises versus platelet-rich plasma and hyaluronic acid combination therapy for knee osteoarthritis: A retrospective comparative study. Medicine, 102(38), e35147.
▶ Kellgren–LawrenceグレードⅠ–Ⅲの膝OA患者106例を対象に、運動療法群とPRP+ヒアルロン酸併用群を比較。長期(6・12か月)では運動療法群がVAS・WOMACスコアで有意に優れた成績を示し、運動療法の重要性を裏付け。 PMC: PMC10508439
6. Cabilan CJ, Hines S, Munday J. (2015). The effectiveness of prehabilitation or preoperative exercise for surgical patients: a systematic review. JBI Database of Systematic Reviews and Implementation Reports, 13(1), 146-187.
▶ 手術を受ける患者に対するプレハビリテーション(術前運動療法)の効果を検証した系統的レビュー。プレハビリが急性期リハビリ施設への入院リスクを低下させることを示した先駆的研究。
【公的機関資料】
7. 厚生労働省 (2024). 再生医療等の安全性の確保等に関する法律について. 厚生労働省ウェブサイト.
▶ 再生医療安全性確保法(平成25年法律第85号)に基づく届出制度の概要。本記事で言及している幹細胞治療・PRP治療は、同法に基づく審査・届出を経た医療機関でのみ提供可能。
8. 日本整形外科学会 (2023). 変形性膝関節症診療ガイドライン2023. 南江堂.
▶ 変形性膝関節症に対する保存療法(運動療法・体重管理を含む)と再生医療を含む治療選択の最新の推奨を示したガイドライン。運動療法はあらゆる病期で推奨されている。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の治療効果を保証するものではありません。再生医療やリハビリテーションの実施にあたっては、必ず医師・理学療法士などの専門家にご相談ください。