漫画の主人公になれるか?瞬間移動・屋根まで飛ぶ跳躍力・コンクリート破壊…理学療法士がガチ検証【2026年版】
2026.04.05
豆知識
誰もが一度は夢見たことがあるはずです。
「俺、覚醒したんだけど」と言いながら、屋根まで飛び上がる。鉄砲の弾をグッと止める。コンクリートの壁を素手でぶち破る……。
漫画の主人公、カッコよすぎますよね。
以前の記事では「水の上を走る・壁を駆け上がる・空を飛ぶ」を理学療法士の視点で検証しました。大変ご好評いただいたので、今回は第2弾として「もっとヤバい能力」を徹底検証します。
結論から言います。ほぼ無理です。
でも、「どのくらい無理なのか」を筋肉・骨・物理の観点から、ガチで解説していきます。「もし目指すならどこまで迫れるか」も添えて。2026年3月時点の最新データをもとに、笑いながら学べる内容にまとめました。
目次
- 瞬間移動──「そこに、いた」は可能か?
- 家の屋根まで飛ぶ跳躍力──脚力だけで5mは越えられるか?
- コンクリートを素手で破壊──「壁ドン」どころじゃない話
- 銃弾を止める──「受け止めた…」の物理的コスト
- まとめ:人間の限界と、その先の話
- よくある質問(FAQ)
- 免責事項
- 参考文献
瞬間移動──「そこに、いた」は可能か?

漫画の設定:一瞬で数十メートルを移動する
バトル漫画の定番といえば、これです。「気づいたら主人公が後ろに立っていた」という演出。読者はゾクゾクします。
理学療法士が考える「人間の速度限界」
まず、現実の人間がどれだけ速く動けるかを整理しましょう。
人間の神経伝達速度は、運動神経で最大約70m/sとされています。「脳が命令を出してから筋肉が動くまで」に、それだけの速度で信号が走ります。
しかし残念なことに、体そのものは別の話です。
ウサイン・ボルト選手の最高速度は約12.4m/s(時速約44km)。これが人類史上最速とされています。それでも、100m走った場合には約8秒かかります。「瞬間」とは程遠いですよね。
なぜ速く動くのに限界があるのか
速く動くためには、筋肉が収縮し、腱がエネルギーを伝え、骨が力に耐える必要があります。この一連の流れに、どうしても時間がかかります。
理学療法士の視点からいえば、高速運動にはSSC(伸張短縮サイクル)という仕組みが重要です。筋肉を一度伸ばしてから縮める、いわば「バネ動作」です。この準備なしに急激な力発揮をしても、十分なパワーは出ません。
つまり、「瞬間移動」のように「いきなり超高速」は、筋骨格系の構造上、根本的に難しいんです。
結論:瞬間移動
無理です。
ただし「超高速移動」という観点では、短距離スプリントのトレーニングで確実に近づけます。100m走の記録向上には、下肢の爆発的な筋力と、腱の弾性エネルギー活用能力が鍵です。「瞬間移動」は無理でも「すごく速い人」にはなれます。
家の屋根まで飛ぶ跳躍力──脚力だけで5mは越えられるか?

漫画の設定:ひとっ跳びで屋根の上へ
主人公が「チッ……」と舌打ちしながら、助走なしで2階建ての屋根に飛び乗る。アレです。
一般的な2階建て住宅の屋根まで、地面から約5〜6メートルあります。
人類最高の跳躍力はどのくらい?
垂直跳びの記録で整理してみましょう。
- 一般成人男性の平均:55cm程度
- NBAトップ選手の平均:71cm程度
- マイケル・ジョーダン(伝説):約122cm
- ギネス記録(非公式含む):約142cm
最高記録でも約1.4メートルです。屋根の5〜6メートルには4倍近く届かない計算になります。
なぜ人間はそれ以上飛べないのか
跳躍力を決めるのは、下肢の筋群の爆発的な力発揮量です。主に大臀筋・大腿四頭筋・ハムストリングス・腓腹筋などが関与します。
垂直跳びにおける地面反力のピーク値は、体重の約2.7倍と報告されています。これを超えるには、筋肉の断面積と腱の弾性エネルギー効率を、現人類の限界をはるかに超えて高める必要があります。
もっと単純にいうと、今の人間の骨格・筋肉・腱の構造である限り、物理的な跳躍の上限があるということです。
「じゃあ助走すれば?」という話
走り高跳びの世界記録は2m45cm(ハビエル・ソトマヨル、1993年)です。助走あり・バーを越える形でも、これが限界です。屋根には全然届きません。
ちなみにバスケットボールのゴールの高さは305cmです。ダンクシュートには最低でも約1m以上のジャンプ力が必要とされます。屋根はその5〜6倍。どう考えても無理です。
結論:屋根まで飛ぶ跳躍力
無理です。
ただし、垂直跳びを50cmから70cmに伸ばすことは、トレーニング次第で現実的に目指せます。大臀筋を中心とした下肢の爆発的筋力強化と、アキレス腱の弾性エネルギー活用が重要です。「屋根」は無理でも「NBA選手並みの跳躍」は夢ではありません。
コンクリートを素手で破壊──「壁ドン」どころじゃない話

漫画の設定:拳でコンクリートをぶち破る
壁に向かって「オラァ!」と一発。コンクリートがバキッと砕ける。あのシーン、一度はやってみたいと思いませんでしたか。
コンクリートの強度、実際どのくらい?
建築に使われる普通コンクリートの圧縮強度は18〜45N/mm²が標準です(JIS規格)。1cm²あたりに換算すると、約180〜450kgの圧縮力に耐えられる計算になります。
コンクリートには弱点があります。引張強度は圧縮強度の約1/10〜1/13しかありません。つまり「引っ張ったり曲げたりする力」には比較的弱いのです。
人間の拳をコンクリートに「叩き割る方向」に当てれば、理論上は破壊できる可能性があります。(引張・曲げ方向の力が弱点です)
では人間の拳の力はどのくらい?
ボクシングのプロ選手の拳の打撃力は、最大で約800N(ニュートン)程度と推定されています。研究により幅があります。
一方で、コンクリートブロック(空手演武でよく使われる薄い板)は、適切な角度と速度で衝撃を加えれば壊せることが知られています。
ただし、これには重要な条件があります。
- 薄くて劣化したコンクリートである
- 適切な衝撃の方向(割れやすい引張方向)に力を加える
- 手(骨・腱・皮膚)がその衝撃に耐えられる
最後の条件が最大の問題です。
人間の骨は思ったより脆い
第5中手骨(小指側の手の骨)は、「ボクサー骨折」と呼ばれる骨折が起きやすい部位として知られています。壁などを強く殴った際に折れやすいのです。
漫画の主人公がコンクリートをぶち破っている間、現実の人間は骨折しています。
結論:コンクリート破壊
(厚い壁は)無理です。ただし薄い劣化コンクリートなら条件次第。
「コンクリートを破壊する」よりも、「自分の手を破壊しない」ことを優先しましょう。骨の強度を保つためには、カルシウム・ビタミンD・適度な負荷運動が大切です。漫画の主人公より、骨密度の高い健康な手を目指してください。
銃弾を止める──「受け止めた…」の物理的コスト

漫画の設定:超人的な反射神経と肉体で銃弾をキャッチ
これが今回のラスボスです。「指で銃弾を挟んだ」「筋肉で止めた」……どう考えてもおかしいのに、漫画の中では普通に起きています。
銃弾のエネルギーはどのくらい?
一般的な9mm弾の運動エネルギーは約500〜700ジュール(J)とされています。
比較のために言うと、野球のボールを時速150kmで投げたときのエネルギーが約100J程度です。銃弾はその5〜7倍のエネルギーを持っています。
人間の肉体で受け止めるとどうなるか
まず反射神経の問題があります。銃弾の速度は一般的に秒速300〜400m程度です。視覚情報を処理してから体が反応するまでの「反応時間」は、最速でも約0.1〜0.2秒程度とされています。
0.1秒あれば、銃弾は30〜40メートルを飛んでいます。つまり、「見てから動く」は原理的に不可能です。
次にエネルギーの問題があります。人体の骨・筋肉・腱がこれだけのエネルギーを局所で吸収しようとすれば、組織は瞬時に損傷します。防弾チョッキがなぜ必要かというと、エネルギーを広い面積に分散させるためです。指2本でピンポイントに受け止めることは、物理的に不可能です。
結論:銃弾を止める
絶対に無理です。
銃弾を受け止めようとするのではなく、そもそも銃弾の飛んでくる状況に近づかないことが最も重要です。理学療法士としては、「危険を回避する判断力と、逃げるための脚力を鍛えてください」とお伝えします。
まとめ:人間の限界と、その先の話
今回の検証結果をまとめます。
| 能力 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 瞬間移動 | ❌ 不可能 | 神経・筋肉・物理法則の壁 |
| 屋根まで飛ぶ | ❌ 不可能 | 人類最高記録でも1.4m止まり |
| コンクリート破壊 | △ 条件次第 | 薄く劣化した素材なら可能性あり(手が先に折れる) |
| 銃弾を止める | ❌ 絶対に不可能 | 物理的・生理学的に完全に不可能 |
全滅に近い結果ですね。
ただ、少し見方を変えてみましょう。漫画の主人公たちの「圧倒的な身体能力」には、トレーニングの積み重ねで少しだけ近づける部分があります。筋肉・骨・腱のコンディションを丁寧に管理することが鍵です。
跳躍力を高める、反応速度を上げる、打撃の衝撃に耐えられる骨・筋肉をつくる。これらはすべて、リハビリやトレーニングで語られる「身体機能の向上」と本質的に同じです。
主人公になれなくても、「自分史上最強の体」を目指すことは誰にでもできます。
もし身体の痛みや機能低下が気になる方は、専門家に相談してみることをおすすめします。リペアルポでは、理学療法士による個別評価と自費リハビリをご提供しています。
よくある質問(FAQ)
Q1. 空手の達人がコンクリートブロックを割るのは本当ですか?
A. 本当です。ただし演武で使われるブロックは建築用と異なり薄くて破壊しやすいことが多いです。また「引張方向に衝撃を集中させる技術」が必要です。建物の壁(厚さ15cm以上の鉄筋コンクリート)は、まったく別次元の話になります。
Q2. トレーニングで垂直跳びを大幅に伸ばすことは可能ですか?
A. 可能性はあります。スクワットジャンプ・デプスジャンプなどのプライオメトリクストレーニングは、下肢の爆発的筋力と腱の弾性エネルギー活用を高める効果があるとされています。正しいフォームと段階的な負荷設定が重要です。
膝や足首に痛みがある場合は、事前に専門家に相談してください。
Q3. 反射神経は鍛えれば速くなりますか?
A. 一定の改善は期待できます。反応時間は「単純反応時間」と「選択反応時間」に分けられます。繰り返しの練習や特定のトレーニングで短縮できるとされています。ただし銃弾を視認してから反応するには速すぎて、原理的に不可能です。
Q4. 人間が持ち上げられる重さに上限はありますか?
A. あります。医学的な観点から、人間の骨の強度から考えた上限は約500kg程度とされています。ベンチプレスの世界記録もおよそ500kg前後です。それ以上の重量を腕で支えようとすると、筋肉より先に骨が耐えられなくなると考えられています。
Q5. 漫画の主人公がケガをしないのはなぜですか?
A. フィクションだからです(笑)。現実では、コンクリートを殴れば骨折、銃弾を素手で受ければ致命傷になります。漫画を楽しみながらも、「現実の自分の体は大切に」というのが、理学療法士としての正直な気持ちです。
Q6. 身体能力を高めるためにリハビリは使えますか?
A. 使えます。リハビリは「失われた機能を取り戻す」だけでなく、「潜在的な身体能力を引き出す」ためにも活用できます。特に筋力・バランス・協調性・柔軟性を整えることは、日常生活のパフォーマンス向上に直結します。気になる方は、ぜひ一度ご相談ください。
まとめに代えて
「漫画の主人公になれるか」という夢のある問いに、現実を突きつける形になってしまいました。でも、人間の体が「この程度しかできない」のではないと思っています。「この程度の構造でこれだけのことができる」というのは、理学療法士として正直すごいことだと思うのです。
毎日使っている筋肉・骨・腱は、丁寧にケアすれば応えてくれます。痛みや動きにくさを感じている方は、その信号を無視せず、専門家に相談することをおすすめします。
免責事項
記事の目的と性質
本記事は、人間の身体能力に関する一般的な科学・医学情報をバラエティ的な切り口でお届けするものです。理学療法士の専門的視点から、科学的根拠に基づいた情報をわかりやすく解説しています。以下の点にご注意ください。
本記事の限界
- 個別診断の代替不可:本記事の情報は、あなた個人の症状・状態に対する診断・治療を提供するものではありません
- 医療行為ではない:記事内容は医療行為や医学的助言ではなく、一般的な情報提供です
- 危険行為の推奨ではない:記事内で紹介した「コンクリート破壊」「銃弾を止める」等の行為を現実で試みることは、重篤な外傷・死亡につながる危険があります。絶対に真似しないでください
医療機関受診の推奨
以下の場合は、必ず医療機関を受診してください:
- 激しい運動や衝撃の後に痛みや腫れがある場合
- 骨折や脱臼が疑われる場合
- 日常生活に支障をきたす痛みや機能低下がある場合
医師・理学療法士などの専門家による適切な診断と治療を受けることが最も重要です。
情報の正確性について
本記事は2026年3月時点の情報に基づいて作成されています。信頼できる科学的根拠・公的データを参照しています。医学・医療情報は常に更新されており、将来的に内容が変更される可能性があります。
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参考文献
- Wikipedia. 垂直跳び. (跳躍バイオメカニクス・記録データ)
- WIRED.jp. 検証:その男は、なぜ1.6m超の「ボックスジャンプ」ができるのか?. 2018年.
- 慶應義塾大学SFC研究所. 跳のバイオメカニクス(第9回). 2008年.
- 株式会社東恩納組. コンクリートあれこれ~その3~【強度・普通コンクリートと高強度コンクリートの違い】.
- CMC株式会社. コンクリート強度の単位一覧.
- Wikipedia. 怪力. (人体の骨強度・筋力上限データ)
執筆者情報
本記事は、理学療法士の専門的視点から作成しました。科学的根拠に基づいた信頼性の高い情報提供を心がけています。