「ただ座ってるだけ」は嘘だった。F1ドライバーの首に5Gがかかると、体重は5倍になる【理学療法士が解説】
2026.07.21
豆知識
💡 この記事について
本記事はF1ドライバーのフィジカルトレーニングを題材に、一般的な健康情報をお伝えするものです。紹介するセルフケアや体幹トレーニングは、個人の体力や状態によって適切な方法が異なります。持病・既往歴がある方や、痛み・不調がある方は、必ず医療機関を受診してから実践してください。
目次
- 「F1はスポーツじゃない」は本当か?
- 5Gとは何か?首にかかる衝撃を数字で知る
- 理学療法士が解説:首はなぜ「人体最弱の部位」なのか
- 2026年新マシンはさらにヤバい?ドライバーたちの証言
- F1ドライバーが実践する首・体幹トレーニングの秘密
- あなたにも活かせる!理学療法士が教える体幹強化の基本3選
- こんな症状がある方は要注意
- よくある質問(FAQ)
- まとめ
- 免責事項
- 参考文献
「F1はスポーツじゃない」は本当か?
「F1って、車に乗ってるだけでしょ?」
こう思っている方は少なくないかもしれません。でも実は、これは大きな誤解です。
2026年2月、日本でもF1人気がますます盛り上がっています。角田裕毅のレッドブル移籍、ホンダの正式復帰、2026年シーズン開幕と話題が続き、2025年の日本GP観客動員数は前年比16%増の26万6,000人を記録しました。
そんなF1の世界では、ドライバーたちは「ただ座っているだけ」どころか、想像を絶する身体的負荷にさらされています。
その負荷の中心にあるのが、首と体幹です。
今回は理学療法士の視点から、F1ドライバーの首と体幹に何が起きているのかを解説します。そして、そこから私たちが学べる「日常で使えるトレーニングのヒント」もご紹介します。
5Gとは何か?首にかかる衝撃を数字で知る
まず「G(ジー)」という単位について説明します。
Gとは「重力加速度」のこと。普段の私たちが経験しているのは1Gです。飛行機が離陸するときの加速感が約0.3G。ジェットコースターでも最大3G程度です。
F1のGフォースは文字通り「別次元」
F1マシンが高速コーナーを曲がるとき、ドライバーにかかるGは4〜6Gに達します。ブレーキングでは5Gを超えることも珍しくありません。
これを「首への負担」として考えてみましょう。
人間の頭の重さは約4〜5kg。これにヘルメットの約1.5〜2kgを加えると、約6〜7kgになります。5Gがかかると、首が支えなければならない重さは30〜35kg。
米袋(10kg)を3袋以上、首に乗せて高速コーナーを曲がり続けるイメージです。
しかも、これが90分以上のレースで繰り返されます。
「300km/hで90度の直角コーナーを曲がることもできます。そのぶん身体に対する負荷、Gが大きくなります。けっこう辛いですね」 (角田裕毅選手/motorsport.com日本版、2025年)
| 状況 | Gフォース | 首にかかる負荷(頭+ヘルメット6kg換算) |
|---|---|---|
| 日常生活 | 1G | 6kg |
| ジェットコースター | 最大3G | 18kg |
| F1コーナリング | 4〜6G | 24〜36kg |
| F1ブレーキング | 最大5G | 最大30kg |
さらに、ドライバー全体の体重で考えると衝撃的です。体重70kgのドライバーが5Gにさらされると、体全体では実質350kgの負荷がかかる計算になります(公益財団法人 運動器の健康・日本協会, 2023)。
理学療法士が解説:首はなぜ「人体最弱の部位」なのか
「それなら、首さえ鍛えれば問題ないの?」
実はそれだけでは不十分です。理由を解説します。
首の骨(頸椎)の特徴
首の骨は7つの骨(頸椎:けいつい)が縦に重なった構造をしています。この頸椎には、脳と体をつなぐ重要な神経が通っています。
頸椎の特徴は、可動域が非常に広いこと。前後左右に大きく動けるぶん、安定性を筋肉に頼る割合が高くなります。
腰の骨(腰椎)は骨盤という土台がありますが、頸椎を支えているのは主に筋肉と靭帯(じんたい)です。
「首だけ強くても意味がない」理由
理学療法の観点から見ると、首の安定性には体幹(コア)の安定性が不可欠です。
体幹とは、お腹・背中・骨盤まわりの筋群のこと。これらが土台として機能することで、はじめて首への負荷が適切に分散されます。
体幹が弱いと、首や腰が余分な負荷を代わりに受け持つことになります。これが慢性的な首こり・腰痛の原因の一つと考えられています(日本理学療法士協会, 理学療法ガイドライン第2版, 2021)。

[画像:頸椎と体幹の連動イメージ図]
F1ドライバーが「首だけ」ではなく「全身」を鍛える理由
メルセデスとマクラーレン・ホンダのチームドクターを務めた経験を持つルーク・ベネット氏は、次のように述べています。
「オープンコックピットのモータースポーツでは腹部内筋、背中、骨盤筋の強化が有効であり、強烈なブレーキング時に体をしっかり支えるためには脚力も重要」(formula1-data.com)
首を守るために、お腹・背中・脚まで鍛える。これがF1ドライバーのフィジカル哲学です。
2026年新マシンはさらにヤバい?ドライバーたちの証言
2026年、F1は大幅なレギュレーション(規則)変更を迎えました。新マシンに初めて乗ったドライバーたちが口を揃えて語ったのは、予想外の言葉でした。
「首にくるのはコーナリングじゃない。加速だ」(ランド・ノリス選手)
「こんなに短時間で時速350kmに到達するとは思っていなかった。これはF1でも、他のどんなクルマでも感じたことのない感覚だ」(エステバン・オコン選手)
新マシンはバッテリー技術の向上により、直線での加速力が大幅に増大。これまでコーナリングへの対策が中心だった首・体幹トレーニングに、加速方向(前後)への対応という新たな課題が加わりました。
2026年シーズンは3月8日(日)オーストラリアGPで開幕予定です。世界中のドライバーがこの「新しいG」に対応するため、トレーニングを変革しているのが現在進行形の話です。
F1ドライバーが実践する首・体幹トレーニングの秘密
では、F1ドライバーは具体的にどんなトレーニングをしているのでしょうか?
首のトレーニング:2つのアプローチ
カルロス・サインツ選手が明かした方法によると、首のトレーニングには大きく2つのアプローチがあるとされています(formula1-data.com)。
①ジムでのウェイトトレーニング 専用のヘッドバンドにゴムバンドやケーブルを接続し、首の筋肉に抵抗をかけながら鍛えます。前後・左右・回旋方向を含む多方向のトレーニングを行います。
②重いヘルメットを使ったカート走行 通常のヘルメットより1.5〜2kg重いヘルメットをかぶり、実際にカートでコースを走ります。「実戦に近い負荷」をかけることで、首の筋肉をレースに特化した形で鍛えます。
トレーニングの量
1セッションは1レース分、約90〜120分。これを1日に複数回繰り返します。「セッション中は休みを取ることなく」プログラムをこなし続けるとされています。
体幹トレーニング
体幹については、腹部深層の筋肉(インナーユニット)と背筋群を重点的に鍛えます。専属のフィジオセラピスト(理学療法士)と契約し、個別にプログラムを設計するのが一般的です。
あなたにも活かせる!理学療法士が教える体幹強化の基本3選
F1ドライバーのトレーニングは、そのまま私たちに適用できるものではありません。しかし、その考え方と基本動作は日常に応用できます。
ここでは理学療法士の視点から、誰でも取り組みやすい体幹強化の基本3つをご紹介します。
⚠️ 注意事項 以下のトレーニングは一般的な健康増進を目的とした情報です。首・腰・関節に痛みや既往歴がある方、持病がある方は、必ず医療機関や理学療法士に相談してから取り組んでください。痛みを感じた場合は、すぐに中止してください。
① ドローイン(お腹の深層筋を意識する基本)
目的:体幹の「インナーユニット」(深層の腹筋群)を活性化させる
方法
- 仰向けに寝て、膝を立てる
- 鼻から息を吸い、口からゆっくり吐きながらお腹をへこませる
- お腹の奥に力が入っている感覚を確認しながら10〜15秒キープ
- これを5〜10回繰り返す
ポイント:腰が床から浮かないように注意。呼吸は止めない。
② バードドッグ(体幹の安定性を高める)
目的:体幹の安定性と背筋・臀部(おしり)の筋力を同時に鍛える
方法
- 四つ這いになる(手は肩の真下、膝は腰の真下)
- お腹に力を入れた状態で、右腕と左脚をゆっくり水平に伸ばす
- 3〜5秒キープし、ゆっくり戻す
- 反対側(左腕・右脚)も同様に行う
- 左右5回ずつを目安に
ポイント:腰が落ちたり反ったりしないように注意。体が安定してから動く。
③ プランク(体幹全体を鍛える)
目的:体幹全体の筋持久力を高める
方法
- うつ伏せから、肘とつま先で体を支える姿勢をとる
- 頭から踵(かかと)まで一直線になるよう意識する
- お腹を軽くへこませ、呼吸しながらキープ
- 最初は20〜30秒から始め、慣れてきたら時間を延ばす
ポイント:お尻が上がったり、腰が落ちたりしないよう注意。限界まで頑張らなくてよい。
3つのトレーニングに共通するポイント
- 呼吸を止めない:息を止めると血圧が急上昇することがある
- 痛みが出たら即中止:無理は禁物
- 毎日少しずつ継続することが大切:週2〜3回から始めることをおすすめする
こんな症状がある方は要注意
⚠️ 以下の症状がある場合は、セルフケアではなく医療機関を受診してください
- 首・肩・背中の痛みが1週間以上続いている
- 腕や手にしびれ・麻痺がある
- 頭痛・めまいが続いている
- 首を動かすと強い痛みがある
- 転倒・事故後に痛みが出た
- 日常生活に支障が出るほどの痛みがある
これらの症状は、頸椎椎間板ヘルニアや頸椎症など、専門的な診断と治療が必要な疾患のサインである可能性があります。自己判断での対処は症状の悪化につながる場合があります。
よくある質問(FAQ)
Q1. 首を鍛えるトレーニングは、一般人にも必要ですか?
デスクワークやスマートフォンの使用が多い現代人は、首への負荷が慢性的にかかりやすい状況にあります。首そのものを鍛えるというよりも、姿勢を支える体幹の強化と、首まわりの柔軟性を保つことが一般的には重要とされています。ただし、現在の症状や体力によって適切なアプローチが異なるため、気になる方は理学療法士や医師に相談することをおすすめします。
Q2. F1ドライバーのような首を一般人が作ることはできますか?
F1ドライバーの首は長年にわたる専門的なトレーニングと、実際のレースによる適応の積み重ねによるものです。一般的なトレーニングで同じ状態を目指すことは難しく、また日常生活でそこまでの首の筋力が必要になる場面はほとんどありません。体幹と首まわりの基本的な筋力・柔軟性を維持することが、日常生活では十分な目標といえるでしょう。
Q3. プランクが腰に痛みを感じる場合はどうすればいいですか?
腰に痛みを感じる場合は、すぐに中止してください。フォームが崩れていたり、腰の筋力や柔軟性が不足していたりする場合に痛みが出やすいです。痛みが続く場合は、医療機関や理学療法士にご相談ください。痛みがない場合でも、最初は膝をついた「膝つきプランク」から始めることが安全です。
Q4. 体幹トレーニングで首こりは改善しますか?
体幹の安定性が高まることで、首への余分な負担が軽減され、首こりの改善につながる可能性があるとされています。ただし、首こりの原因は姿勢・筋力・血行・ストレスなど多岐にわたります。体幹トレーニングだけで必ず改善するとは言えず、症状が続く場合は医療機関を受診してください。
Q5. 子どもや高齢者でも体幹トレーニングは安全ですか?
子どもや高齢者の場合、体力や骨格の状態によって適切なトレーニングが異なります。特に高齢者の方は、転倒や骨折のリスクも考慮する必要があります。医療機関や理学療法士に相談の上、個人の状態に合ったプログラムで取り組むことを強くおすすめします。
Q6. F1マシンのGフォースに近い体験をできる場所はありますか?
レンタルカート(カートコース)でも1.5G程度のGを体験できるとされています(公益財団法人 運動器の健康・日本協会)。30分も走ると体幹・腕・首への負荷を実感できますが、体力に自信がない方や体に不調がある方は無理をしないようにしてください。
まとめ
F1ドライバーが「ただ座っているだけ」ではないことが、おわかりいただけたでしょうか。
ポイントを整理すると次のとおりです。
- F1のコーナリング・ブレーキングでは、首に最大5Gの負荷がかかる
- 体重70kgのドライバーに5Gがかかると、体全体では350kgの負荷に相当する
- 首の安定性は「体幹の安定性」と一体。首だけを鍛えても不十分
- 2026年新マシンは加速方向のGがさらに増大し、ドライバーのトレーニングも進化している
- ドローイン・バードドッグ・プランクは、体幹強化の基本として日常でも実践できる
F1ドライバーの世界から、私たちの日常健康に応用できるヒントがあります。ただし、体に痛みや不調がある場合は、まず医療機関や理学療法士に相談することが最も大切です。
セルフケアで改善しない症状や、長引く痛み・しびれがある方は、早めに専門家に相談してください。
免責事項
記事の目的と性質
本記事は、F1ドライバーのフィジカルトレーニングを題材に、首・体幹に関する一般的な健康情報を提供することを目的としています。理学療法士の専門的視点から、科学的根拠に基づいた情報をわかりやすく解説していますが、以下の点にご注意ください。
本記事の限界
- 個別診断の代替不可:本記事の情報は、あなた個人の症状や状態に対する診断・治療を提供するものではありません
- 医療行為ではない:記事内容は医療行為や医学的助言ではなく、一般的な情報提供です
- 自己判断のリスク:本記事の情報のみに基づく自己判断や自己治療は、症状の悪化や重大な健康被害につながる可能性があります
医療機関受診の推奨
以下の場合は、必ず医療機関を受診してください:
- 首・腰・関節などに痛みや不調が続いている場合
- 腕・脚にしびれや麻痺がある場合
- 症状が悪化している場合
- 日常生活に支障が出ている場合
- 持病・既往歴がある場合
- 高齢の方・妊娠中の方
医師や理学療法士などの専門家による適切な診断と治療を受けることが最も重要です。
情報の正確性について
本記事は2026年2月時点の最新情報に基づいて作成されており、信頼できる医学的根拠や公的機関・専門家の情報を参照しています。しかし、医学・医療情報は常に更新されており、将来的に内容が変更される可能性があります。
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参考文献
- 公益財団法人 運動器の健康・日本協会. 運動器のリレーエッセイ「モータースポーツはスポーツか?」(松下隆). 2023. https://www.bjd-jp.org/archives/column/1135
- 日本理学療法士協会 / 日本理学療法学会連合. 理学療法ガイドライン第2版. 医学書院, 2021. https://minds.jcqhc.or.jp/summary/c00687/
- RTRスポーツマーケティング. F1のGフォース. 2025. https://rtrsports.com/ja/blog/f1niokerughuosu/
- RTRスポーツマーケティング. なぜF1ドライバーは首が大きいのか. 2025. https://rtrsports.com/ja/blogs/なぜフォーミュラ1ドライバーは首が大きいのか/
- motorsport.com日本版(Yahoo!ニュース). 角田裕毅、F1ドライバーにとって最も重要なのは”首”. 2025年4月. https://news.yahoo.co.jp/articles/cca8db8d97eceff9b2a6488252abb9ccee79d836
- f1-gate.com. F1ドライバーが最初に悲鳴を上げた2026年F1マシンの「加速と前方向G」. 2026年2月10日. https://f1-gate.com/f1car/f1_92493.html
- formula1-data.com. F1ドライバー衝撃の”首”トレーニング. https://formula1-data.com/article/f1-drivers-training-for-neck
- 岡山市立市民病院. 第275回 筋力トレーニングについて理学療法士が解説します. https://okayama-gmc.or.jp/oth/magazine/940/
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