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伊能忠敬の驚くべき体力|55歳から17年間・地球1周分を歩いた運動機能【2026年版・理学療法士解説】

2026.03.13

豆知識

伊能忠敬の驚くべき体力|55歳から17年間・地球1周分を歩いた運動機能【2026年版・理学療法士解説】

「55歳から運動を始めても、もう遅いんじゃないか?」

こんな疑問、ありませんか?

実は、江戸時代の測量家・伊能忠敬は、55歳から測量の旅を始め、73歳まで17年間にわたって日本全国を歩き続けました。その距離、約4万km。なんと地球1周分に相当します。

しかも、伊能忠敬は決して「健脚」ではなく、喘息やマラリア、痔などの持病を抱えた「体力普通」の人だったのです。

本記事では、理学療法士の視点から、伊能忠敬がどれだけの運動機能を持っていたのか、そして現代の私たちが学べることは何かを、2025年最新の研究データとともに解説します。


伊能忠敬の基本スペック|「体力普通」の55歳が成し遂げた偉業

測量開始時の年齢と身体状況

伊能忠敬が第一次測量に出発したのは、1800年(寛政12年)、55歳のときでした。

当時の江戸時代の平均寿命は30〜40歳程度とされていますが、これは乳幼児死亡率が高かったためで、成人後(21歳以上)の平均死亡年齢は男性で61.4歳、女性で60.3歳という研究データがあります。

つまり、55歳の忠敬は、現代で言えば70歳前後の感覚に近かったと考えられます。

「体力普通」だった伊能忠敬

伊能忠敬記念館の学芸員によると、忠敬は「取り立てて健脚ではなく、当時としては平均的な日本人」だったそうです。

実際、忠敬は以下のような持病を抱えていました:

  • 喘息(咳痰の持病)
  • (長時間の歩行に支障)
  • マラリア(測量中に山陰地方で罹患)

伊能忠敬の研究者である渡辺一郎氏も、「忠敬は偉人とか天才ではなく普通の人だった」と述べています。

測量での歩行データ

それでは、伊能忠敬は実際にどれだけ歩いたのでしょうか?

項目データ
測量期間17年間(1800〜1816年)
総歩行距離約4万km(地球1周分)
歩幅69cm(第一次測量)
1日の平均歩行距離推定20〜30km
推定1日平均歩数約29,000〜43,000歩

第一次測量では、忠敬は歩幅69cmで歩測を行っていました。これは現代の成人男性の平均歩幅(約70〜75cm)とほぼ同等です。


現代の運動ガイドラインと比較|伊能忠敬の歩数は適正か?

厚生労働省の最新推奨値(2024年1月公表)

厚生労働省が2024年1月に公表した「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」では、高齢者の推奨歩数は以下のとおりです:

【高齢者の推奨値】

  • 1日40分以上の歩行
  • 1日約6,000歩
  • 週15メッツ・時以上の身体活動

これは、2013年版から改訂された最新の推奨値です。

2025年最新研究が示す「最適歩数」

さらに、2025年8月にLancet Public Health誌に発表された最新のメタ解析では、驚くべき結果が報告されました。

【2025年最新研究の結果】

  • 1日7,000歩で死亡リスクが53%低下
  • 認知症発症リスクが62%低下
  • 心血管疾患発症リスクが75%低下
  • 効果は5,000〜8,000歩で頭打ち

また、早稲田大学の2024年研究では、高齢者の場合、1日5,000〜7,000歩で死亡リスク減少効果が頭打ちになることが明らかになっています。

伊能忠敬の歩数は「やりすぎ」?

伊能忠敬の推定1日平均歩数は約29,000〜43,000歩

現代の推奨値(6,000歩)と比べると、なんと約5〜7倍です。

最新研究によれば、歩数と健康効果の関係は1日7,000〜8,000歩程度で頭打ちになるため、伊能忠敬の歩数は健康効果の観点からは「やりすぎ」とも言えます。

しかし、忠敬の目的は「健康増進」ではなく「日本地図の作成」という使命でした。


理学療法士が分析|17年間の継続がもたらした身体への影響

持病を抱えながらも継続できた理由

伊能忠敬は喘息や痔などの持病を抱えていましたが、なぜ17年間も歩き続けることができたのでしょうか?

理学療法士の視点から考えると、以下の要因が考えられます。

1. 段階的な負荷増加(漸進性の原則)

忠敬は第一次測量で北海道・東北を歩き、徐々に測量範囲を広げていきました。これは、運動生理学でいう「漸進性の原則」(段階的に負荷を高める)に合致しています。

2. 継続による身体機能の維持(可逆性の原則)

17年間という長期間の継続により、筋力や心肺機能が維持されました。運動を中断すると機能が低下する「可逆性の原則」の逆で、継続することで加齢による機能低下を最小限に抑えたと考えられます。

3. 適度な休息とペース配分

測量は毎日連続で行われたわけではなく、測量から戻ると江戸の自宅で地図作成に励む期間がありました。この「活動と休息のバランス」が、持病を抱えながらも継続できた要因の一つです。

歩行が身体に与えた効果

17年間にわたる歩行は、忠敬の身体に以下のような効果をもたらしたと推測されます。

【期待される効果】

  • 下肢筋力の維持・向上(大腿四頭筋、ハムストリングス、下腿三頭筋)
  • 心肺機能の維持(有酸素運動効果)
  • 骨密度の維持(荷重運動による骨への刺激)
  • バランス能力の維持(不整地での歩行)
  • 認知機能の維持(測量という知的作業と運動の組み合わせ)

これらの効果により、忠敬は73歳まで測量を続けることができたと考えられます。


現代人への示唆|「普通の体力」でも継続すれば達成できる

「55歳からでも遅くない」というメッセージ

伊能忠敬が私たちに教えてくれるのは、「55歳から始めても決して遅くない」ということです。

現代の日本人の平均歩数は、令和5年(2023)国民健康・栄養調査によると:

  • 男性:6,628歩
  • 女性:5,659歩

実は、現代人の平均歩数は、厚生労働省の推奨値(高齢者6,000歩)に近い水準です。

「体力普通」でも大丈夫

伊能忠敬記念館の学芸員が指摘するように、忠敬は「体力普通」の人でした。

つまり、特別な運動能力や体力がなくても、「強い意志」と「継続」があれば、大きな成果を達成できるということです。

現代人が目指すべき歩数

2025年の最新研究に基づくと、現代人が健康維持のために目指すべき歩数は:

【年代別の推奨歩数】

  • 成人(18〜64歳):1日8,000歩
  • 高齢者(65歳以上):1日6,000歩
  • 健康効果は7,000歩程度で頭打ち

つまり、伊能忠敬のように1日3万歩以上歩く必要はなく、1日6,000〜8,000歩を目安に継続することが大切です。


よくあるご質問(FAQ)

Q1. 伊能忠敬は本当に「体力普通」だったのですか?

A. はい。伊能忠敬記念館の学芸員や研究者の証言によると、忠敬は「取り立てて健脚ではなく、当時としては平均的な日本人」でした。喘息、マラリア、痔などの持病も抱えていました。

Q2. 55歳から運動を始めても効果はありますか?

A. はい、効果があります。伊能忠敬は55歳から測量を始め、73歳まで継続しました。現代の研究でも、高齢になってから運動を始めても、健康効果が得られることが証明されています。

Q3. 1日何歩を目標にすればいいですか?

A. 厚生労働省のガイド2023では、高齢者は1日6,000歩、成人は1日8,000歩を推奨しています。2025年の最新研究では、1日7,000歩で死亡リスクが大きく低下し、7,000〜8,000歩程度で効果が頭打ちになることが示されています。

Q4. 持病があっても歩いて大丈夫ですか?

A. 持病の種類や程度によります。伊能忠敬も持病を抱えながら歩き続けましたが、現代では医学が進歩しています。持病がある方、運動制限がある方は、必ず医師に相談してから運動を始めてください。

Q5. 継続するコツはありますか?

A. 伊能忠敬の場合、「日本地図の作成」という明確な目標がありました。現代人も、「健康のため」だけでなく、「旅行を楽しむため」「孫と遊ぶため」など、具体的な目標を持つと継続しやすくなります。また、無理な目標を立てず、「今より少し多く歩く」という小さな目標から始めることが大切です。


まとめ|伊能忠敬が教えてくれること

伊能忠敬の測量事業から学べることをまとめます。

この記事のポイント

✓ 伊能忠敬は55歳から測量を開始し、73歳まで17年間継続 ✓ 「体力普通」で持病も抱えていたが、強い意志と継続で偉業を達成 ✓ 推定1日平均歩数は約29,000〜43,000歩(現代推奨値の約5〜7倍) ✓ 2025年最新研究では、1日7,000歩で死亡リスクが53%低下 ✓ 高齢者の推奨歩数は1日6,000歩(厚生労働省ガイド2023) ✓ 健康効果は7,000〜8,000歩程度で頭打ち ✓ 段階的な負荷増加と継続が、身体機能維持の鍵

今日からできること

まずは、日常生活の中で意識してみましょう。

エレベーターの代わりに階段を使う、いつもより少し遠いスーパーに歩いて行く。1日1,000歩(約10分)増やすだけでも、将来の健康に大きな差が生まれます。

伊能忠敬は「普通の体力」の55歳から始めて、17年間で地球1周分を歩きました。

私たちも、「今日から、今より少し多く歩く」ことから始めてみませんか?

専門家に相談するタイミング

もし不安なことがあれば、理学療法士や医師などの専門家に相談してみましょう。

特に、以下のような場合は相談をおすすめします:

  • 持病がある方
  • 運動を長期間していなかった方
  • 膝や腰に痛みがある方
  • 65歳以上で運動習慣がない方

一人ひとりの状態に合わせた適切なアドバイスを受けることができます。


📚 参考文献

  1. 厚生労働省. 健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023. 2024年1月.
  2. Ding D, et al. Daily steps and health outcomes: a systematic review and meta-analysis. Lancet Public Health. 2025;8月号.
  3. 早稲田大学スポーツ科学学術院(渡邉大輝、宮地元彦). 高齢者における歩数と死亡リスクの量反応関係. 2024.
  4. 厚生労働省. 令和5年(2023)国民健康・栄養調査. 2024.
  5. 渡辺一郎. 伊能忠敬の歩いた日本. 筑摩書房, 2013.
  6. 伊能忠敬記念館(千葉県香取市). 伊能忠敬の測量資料および関連展示.
  7. 神奈川県予防医学協会. 長寿の夢:江戸時代後期の平均寿命に関する研究.
  8. 東京都健康長寿医療センター研究所. 運動・身体活動の”ちょい足し”のポイント:最近のガイドラインを踏まえて. 2024.

執筆者情報

理学療法士

本記事は、2026年1月時点の最新の文献・ガイドライン・研究データに基づいて作成しています。


免責事項

本記事の情報は一般的な内容です。個人の状態により適切な方法は異なります。

持病のある方、運動制限のある方は、医師にご相談ください。

症状が改善しない場合や悪化する場合は、速やかに医療機関を受診してください。

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