格闘技別の鍛えられる能力や筋肉、高齢者でもはじめやすいものまとめ【2026年版】
2026.03.02
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「格闘技に興味はあるけど、激しそうで自分には無理かも…」
こんな風に思っていませんか?
実は、格闘技にはいろいろな種類があって、激しく打ち合うものばかりではないんです。ゆっくりとした動きで体を鍛えられるものや、力に頼らず技術を磨くものまで、幅広い選択肢があります。
本記事では、理学療法士の視点から、格闘技別に鍛えられる筋肉や能力をわかりやすく解説します。また、高齢者でも安全に始められる格闘技もご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
2024年に改訂された「身体活動・運動ガイド2023」の最新知見も踏まえてお伝えします。
格闘技で鍛えられる体の仕組み
まず、格闘技がなぜ体づくりに効果的なのか、簡単にご説明します。
格闘技は、筋力だけでなく、バランス能力、柔軟性、反応速度など、複数の体力要素を同時に鍛えることができる運動です。
厚生労働省の「身体活動・運動ガイド2023」では、高齢者に対して「筋力・バランス・柔軟性など多要素な運動を週3日以上行うこと」を推奨しています。
格闘技は、まさにこの「多要素な運動」に当てはまるんです。
多要素な運動とは
体操やダンス、ラジオ体操、ヨガのように、いろいろな動きを含む運動のことです。筋力トレーニング、バランス運動、柔軟運動などが組み合わさっているのが特徴です。
格闘技も、パンチやキックの動作には筋力が必要ですし、相手の動きに対応するにはバランス能力が求められます。型の稽古では柔軟性も養われます。
つまり、格闘技は一つの運動で複数の体力要素を鍛えられる、効率的な運動なんです。
格闘技別に鍛えられる筋肉と能力
それでは、具体的に格闘技別の効果を見ていきましょう。
大きく分けて、打撃系、組技系、伝統系の3つに分類してご紹介します。
打撃系格闘技(キックボクシング、ボクシング、空手)
鍛えられる主な筋肉
下半身の筋肉
- 大腿四頭筋(太ももの前側)
- ハムストリング(太ももの裏側)
- 大臀筋(お尻の筋肉)
- 下腿三頭筋(ふくらはぎ)
パンチやキックは、実は下半身から力が生まれます。踏み込む動作、体重移動、蹴り上げる動作など、すべて下半身の筋肉が重要な役割を果たしています。
上半身の筋肉
- 三角筋(肩の筋肉)
- 上腕三頭筋(二の腕の裏側)
- 大胸筋(胸の筋肉)
- 広背筋(背中の筋肉)
パンチを打つ動作では、肩から腕にかけての筋肉が使われます。また、ガードを上げ続けることで、肩周りの持久力も養われます。
体幹の筋肉
- 腹直筋(お腹の前側)
- 腹斜筋(わき腹)
- 脊柱起立筋(背骨沿いの筋肉)
打撃を打つ際の体の回転、バランスを保つための体幹の安定性など、体幹の筋肉は常に働いています。
鍛えられる能力
心肺機能 パンチやキックを連続で繰り出す動作は、有酸素運動の効果もあります。スタミナがつき、息が上がりにくくなります。
瞬発力 素早くパンチやキックを繰り出すことで、瞬発力が養われます。
バランス能力 片足立ちでキックを打つ、体重移動しながらパンチを打つなど、常にバランスを取る必要があるため、自然とバランス能力が向上します。
反応速度 相手の動きに反応する練習を繰り返すことで、反応速度が速くなります。
どんな人におすすめ?
体を動かすことが好きで、心肺機能を高めたい方や、ダイエット目的の方にもおすすめです。
ただし、打撃系は体への負担がやや大きいため、体力に自信がない方や高齢の方は、まずは軽い運動から始めることをおすすめします。
組技系格闘技(柔道、柔術、合気道)
鍛えられる主な筋肉
体幹の筋肉
- 腹直筋
- 腹斜筋
- 腹横筋(インナーマッスル)
- 脊柱起立筋
相手を投げる、引っ張る、押さえ込むといった動作では、体幹の筋肉が非常に重要です。体幹がしっかりしていないと、技がかかりません。
上半身の筋肉
- 広背筋
- 僧帽筋(首から肩にかけての筋肉)
- 上腕二頭筋(力こぶの筋肉)
- 前腕の筋肉(握力に関わる筋肉)
相手の道着を掴む、引っ張る、押さえ込むといった動作で、上半身の筋肉が鍛えられます。特に握力は自然と強くなります。
下半身の筋肉
- 大腿四頭筋
- 内転筋群(内ももの筋肉)
- ハムストリング
低い姿勢を保つ、踏ん張る、相手を崩すといった動作で、下半身の筋肉も使います。
鍛えられる能力
全身の協調性 相手の動きに合わせて自分の体をコントロールする必要があるため、全身の協調性が養われます。
バランス能力 投げられないようにバランスを保つ、相手のバランスを崩すといった動作で、バランス能力が向上します。
柔軟性 技をかける、受け身を取るといった動作では、柔軟性が求められます。練習を続けることで、自然と体が柔らかくなります。
体の使い方の技術 力任せではなく、体の使い方の技術を学ぶことで、効率的な動作が身につきます。
どんな人におすすめ?
打撃系のような激しい動きが苦手な方、体幹を鍛えたい方、柔軟性を高めたい方におすすめです。
特に合気道は、力に頼らない技術を重視するため、高齢者でも長く続けられる「生涯武道」として知られています。
伝統系格闘技(太極拳、剣道)
太極拳
鍛えられる主な筋肉
- 大腿四頭筋
- ハムストリング
- 大臀筋
- 下腿三頭筋
ゆっくりとした動きながら、低い姿勢を保つことで、下半身の筋肉がしっかり鍛えられます。
鍛えられる能力
バランス能力 片足立ちの姿勢や、体重移動をゆっくり行うことで、バランス能力が大きく向上します。
厚生労働省の資料でも、太極拳は高齢者の転倒予防に効果的とされています。
柔軟性 ゆったりとした動作を繰り返すことで、関節の可動域が広がり、柔軟性が高まります。
集中力 呼吸と動作を合わせることで、集中力が養われます。心を落ち着ける効果もあります。
心肺機能 ゆっくりとした動きですが、継続することで心肺機能の維持・向上にもつながります。
どんな人におすすめ?
高齢者、体力に自信がない方、ゆったりとした運動が好きな方に特におすすめです。
2026年には「ねんりんピック彩の国さいたま2026」で太極拳交流大会が開催されるなど、高齢者スポーツとして定着しています。
剣道
鍛えられる主な筋肉
- 下半身の筋肉全般
- 体幹の筋肉
- 肩周りの筋肉
鍛えられる能力
瞬発力と持久力 打突の瞬間の瞬発力と、防具をつけて稽古を続ける持久力の両方が養われます。
集中力 相手との間合いを読む、一瞬の隙を狙うといった動作で、高い集中力が求められます。
反応速度 相手の動きに素早く反応する練習を繰り返すことで、反応速度が向上します。
どんな人におすすめ?
精神面も鍛えたい方、礼儀作法を学びたい方におすすめです。竹刀があるため、高齢者でも若い人と対等に稽古ができるという特徴があります。
高齢者でも始めやすい格闘技
「格闘技に興味はあるけど、年齢的に今から始めるのは…」
そう思っている方もいらっしゃるかもしれません。
でも大丈夫です。高齢者でも安全に始められる格闘技があります。
身体活動・運動ガイド2023では、高齢者に対して「筋力・バランス・柔軟性など多要素な運動を週3日以上行うこと」「筋力トレーニングを週2〜3日」を推奨しています。
以下でご紹介する格闘技は、これらの推奨事項を満たす運動として適しています。
太極拳:最も始めやすい格闘技
なぜ高齢者におすすめ?
ゆっくりとした動き 激しい動作がなく、自分のペースで取り組めます。
転倒予防効果 バランス能力が向上し、転倒リスクが減少することが研究で示されています。
特別な道具が不要 動きやすい服装があれば、どこでも始められます。
地域の教室が豊富 各自治体の健康推進事業や公民館で、週1〜2回のペースで教室が開かれていることが多くあります。参加費も無料または低料金です。
どんな効果がある?
福島県喜多方市では「太極拳のまち」宣言を行い、地域全体で取り組んでいます。その結果、「バランス機能の向上」「下半身の筋力強化」などの成果が上がっています。
また、仲間との交流も生まれるため、孤立予防や心の安定にもつながります。
どこで始められる?
- 地域の公民館や健康推進事業の教室
- 地域包括支援センターで情報を確認
- 太極拳サークルや教室(日本武術太極拳連盟のウェブサイトで検索可能)
合気道:力に頼らない生涯武道
なぜ高齢者におすすめ?
力に頼らない技術 自分の筋力ではなく、相手の力を利用する技術を学ぶため、年齢に関係なく続けられます。
試合がない 競技としての試合がないため、怪我のリスクが低く、マイペースで稽古できます。
生涯武道 引退という概念がなく、高齢になっても続けられる武道として知られています。
どんな効果がある?
バランス能力、柔軟性、全身の協調性が養われます。また、受け身の練習は、万が一転倒した際のダメージを減らす効果も期待できます。
始める際の注意点
無理に技をかけ合わないことが大切です。指導者の指示に従い、自分の体に合ったペースで取り組みましょう。
空手(型稽古):マイペースで続けられる
なぜ高齢者におすすめ?
型(かた)の稽古 相手と組み合う組手ではなく、型(決まった動作の連続)の稽古であれば、怪我のリスクが少なく、マイペースで取り組めます。
マスターズ大会もある 高齢者向けの大会も開催されているため、目標を持って続けることができます。
亡くなる直前まで続けられる 型の稽古であれば、高齢になっても続けられる生涯武道です。
どんな効果がある?
下半身の筋力、バランス能力、柔軟性が養われます。突きや蹴りの動作で、全身の協調性も向上します。
始める際の注意点
組手(相手と打ち合う練習)は避け、型の稽古を中心に行うことをおすすめします。道場によっては高齢者向けのクラスもあるので、事前に確認しましょう。
格闘技を始める前に知っておきたいこと
身体活動・運動ガイド2023の視点から
厚生労働省が2024年1月に公表した「身体活動・運動ガイド2023」では、高齢者に対して以下を推奨しています。
推奨事項
- 歩行またはそれと同等以上の身体活動を1日40分以上(約6,000歩)
- 筋力・バランス・柔軟性など多要素な運動を週3日以上
- 筋力トレーニングを週2〜3日
- 座位行動(座りっぱなし)を避ける
格闘技は、これらの推奨事項を満たす運動として非常に適しています。
特に太極拳や合気道は、筋力、バランス、柔軟性を同時に鍛えられる「多要素な運動」そのものです。
個人差を考慮することが大切
ガイドラインでは「個人差を踏まえ、強度や量を調整し、可能なものから取り組む」ことも明記されています。
無理に激しい運動をする必要はありません。自分の体力や体調に合わせて、できることから始めましょう。
始める前に専門家に相談を
持病のある方、運動制限のある方は、必ず医師に相談してから始めてください。
また、格闘技を始める際は、経験豊富な指導者のもとで、安全に配慮しながら取り組むことが大切です。
よくあるご質問
Q1. 高齢者でも格闘技は始められますか?
A. はい、始められます。
太極拳、合気道、空手の型稽古など、高齢者でも安全に取り組める格闘技があります。ゆっくりとした動きで、自分のペースで続けられるものを選びましょう。
年齢を問わず、新しいことに挑戦することは、心身ともに良い刺激になります。
Q2. 格闘技は週何回やればいいですか?
A. 週2〜3回が目安です。
身体活動・運動ガイド2023では、高齢者に対して「多要素な運動を週3日以上」を推奨しています。
ただし、最初は週1回から始めて、体が慣れてきたら徐々に増やすことをおすすめします。
Q3. 太極拳は本当に効果がありますか?
A. はい、科学的にも効果が認められています。
太極拳は、バランス能力の向上、下半身の筋力強化、転倒予防などの効果が研究で示されています。
厚生労働省の「介護予防に役立つ運動プログラム」でも、高齢者に適した運動として紹介されています。
Q4. 体力に自信がなくても大丈夫?
A. 大丈夫です。
格闘技には、体力に自信がない方でも始められるものがあります。
太極拳はゆっくりとした動きですし、合気道は力に頼らない技術を学びます。空手も型の稽古であれば、マイペースで取り組めます。
最初は軽めの運動から始めて、少しずつ負荷を上げていきましょう。
Q5. どこで始められますか?
A. 地域の公民館、健康推進事業の教室、道場などで始められます。
太極拳は、各自治体の健康推進事業や公民館で教室が開かれていることが多くあります。地域包括支援センターや市区町村の広報誌で情報を確認してみましょう。
合気道や空手は、各道場で体験レッスンを行っているところも多いので、まずは見学や体験から始めるのがおすすめです。
まとめ
格闘技別に鍛えられる筋肉や能力、高齢者でも始めやすい格闘技についてご紹介しました。
この記事のポイント
✓ 格闘技は筋力・バランス・柔軟性を同時に鍛えられる「多要素な運動」 ✓ 打撃系は全身の筋肉と心肺機能を鍛えられる ✓ 組技系は体幹と全身の協調性を養える ✓ 伝統系(太極拳など)は高齢者でも安全に取り組める ✓ 太極拳は転倒予防効果があり、地域の教室も豊富 ✓ 合気道は力に頼らず、生涯続けられる ✓ 空手の型稽古はマイペースで取り組める
今日からできること
まずは、自分に合った格闘技を探してみましょう。
地域の公民館や健康推進事業で太極拳教室があるか、近くに道場があるか、調べてみてください。
多くの道場や教室では、見学や体験レッスンを受け付けています。実際に雰囲気を確かめてから始めることができます。
専門家に相談するタイミング
もし持病がある方、運動制限のある方は、始める前に医師に相談しましょう。
また、格闘技を始めた後も、不安なことや体の変化があれば、理学療法士などの専門家に相談することをおすすめします。
一人ひとりの体の状態に合わせた適切なアドバイスを受けることができます。
「年だから」とあきらめず、できることから体を動かしてみませんか?格闘技は、あなたの健康で活動的な生活を支えてくれる習慣になるはずです。
📚 参考文献
- 厚生労働省. 健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023. 2024年1月.
- 厚生労働省. 健康日本21(第三次). 2024.
- 公益社団法人 日本武術太極拳連盟. 公式サイト. 2025-2026年版.
- 厚生労働省. 国民健康・栄養調査(2017-2019年統合データ).
- 中島康晴. 身体活動・運動ガイド2023改訂に関する解説. ケアネット, 2024年3月.
- 日本整形外科学会. ロコモティブシンドローム予防啓発公式サイト. 2024年版.
執筆者情報
理学療法士
本記事は、最新の文献・ガイドラインに基づいて作成しています。
免責事項
本記事の情報は一般的な内容です。個人の状態により適切な方法は異なります。
持病のある方、運動制限のある方は、医師にご相談ください。
症状が改善しない場合や悪化する場合は、速やかに医療機関を受診してください。