リハビリの最適なタイミングと運動負荷【2026年版】理学療法士が解説
2026.01.12
リハビリ
「リハビリはいつから始めればいいんだろう?」 「この運動、私には合っているのかな?」
このような疑問、ありませんか?
リハビリテーションの効果を最大限に引き出すには、「適切なタイミング」と「その人に合った運動負荷」の2つが重要です。
でも、心配しないでください。科学的な根拠に基づいた考え方を理解すれば、あなたにとって最適なリハビリ計画を立てることができます。
本記事では、2023年から2025年にかけて発表された最新のガイドラインをもとに、リハビリの「いつ」と「どのように」について、理学療法士の視点からわかりやすく解説します。
リハビリ開始の「ベストタイミング」とは
リハビリの開始時期は、疾患や損傷の種類によって異なります。ただし、多くの場合に共通するのが「早期開始の重要性」です。
脳卒中|脳の「ゴールデンタイム」を逃さない
脳卒中後のリハビリでは、「時間」が本当に大切です。
脳は損傷を受けた直後から数ヶ月間、最も「可塑性が高い」状態になります。可塑性とは、脳が新しい神経回路を作りやすい状態のこと。この時期に適切なリハビリを行うことで、失われた機能の回復を促すことができるんです。
2023年に発表された重症患者リハビリテーション診療ガイドラインでは、早期からのリハビリ開始が推奨されています。実際、発症から1週間以内にリハビリを始めた方と、1ヶ月後に始めた方では、明らかに回復のスピードに差が見られることが報告されています。
時間が経つにつれて、この柔軟性は徐々に失われていきます。だからこそ、できるだけ早い段階でのリハビリ開始が推奨されているのです。
術後リハビリ|「早期離床」が回復の鍵
手術後のリハビリも、早期開始が基本です。特に整形外科手術では、術後数日以内のリハビリ開始が標準的になっています。
前十字靭帯再建術の場合、トップアスリートは術後数日以内に集中的なリハビリを開始し、90日以内に公式戦復帰を果たした例もあります。これは、早期リハビリによって筋力低下や関節の硬さを最小限に抑えられた結果です。
もちろん、一般の方がアスリートと同じ強度で行う必要はありません。しかし、「早期から適切な刺激を与える」という基本原則は同じです。
心臓リハビリ|段階的なアプローチで安全に
心臓リハビリテーションは、急性期、回復期、維持期という段階を経て進めます。
2025年に改定された心不全診療ガイドラインでは、退院後の最初の90日間を「ハイリスク期間」と位置づけ、この時期の適切なリハビリが再入院予防の鍵となることが明記されました。
心臓リハビリでは、運動トレーニングだけでなく、生活習慣の改善指導や心理的サポートも重要です。適度な運動が善玉コレステロールの増加につながることも分かっており、体力回復以上の効果が期待できます。
慢性疾患|「遅すぎる」ことはない
COVID-19後の呼吸器リハビリテーションや慢性閉塞性肺疾患(COPD)などでは、急性期を過ぎて病状が安定してから開始することが一般的です。
慢性疾患の場合、「完治」は難しくても、機能の改善や進行の抑制は十分に期待できます。COVID-19後の患者さんでも、適切なリハビリにより運動能力や生活の質が改善したという報告があります。
疾患別リハビリ開始時期の目安
| 疾患 | 開始時期 | ポイント |
|---|---|---|
| 脳卒中 | 発症後1週間以内推奨 | 脳の可塑性が高い時期を活用 |
| 前十字靭帯術後 | 術後数日以内 | 筋力低下・関節拘縮の予防 |
| 心臓手術後 | 急性期から段階的に | バイタルサインを確認しながら |
| COVID-19後 | 病状安定後 | 呼吸機能・運動能力の回復 |
参考: 日本集中治療医学会 重症患者リハビリテーション診療ガイドライン2023
あなたに最適な「運動負荷」の見つけ方
運動負荷の決定は、まさに「オーダーメイド」です。同じ疾患でも、年齢、体力、生活環境、目標によって最適な負荷は大きく異なります。
科学的評価に基づいた負荷設定
心肺機能の評価
心血管疾患の患者さんの場合、心肺運動負荷試験(CPX)という検査で、心臓や肺がどの程度の運動に耐えられるかを客観的に測定します。
もしCPXが困難な場合は、「6分間でどのくらい歩けるか」を測る6分間歩行テストという、シンプルで有用な評価方法もあります。
バランス機能の評価
転倒リスクのある高齢者の方には、以下のような日常生活に直結する評価を行います。
- 片足立ち時間: 片足でどれくらい立っていられるか
- ファンクショナルリーチテスト: 立った状態でどれくらい前に手を伸ばせるか
- Timed Up and Go テスト: 椅子から立ち上がり、3メートル先まで歩いて戻る時間
これらのテストは決して難しいものではありません。しかし、転倒リスクの評価に非常に有効なのです。
段階的負荷設定の重要性
アキレス腱のリハビリを例に
アキレス腱の損傷に対するリハビリでは、以下のように段階的に負荷を増やしていきます。
ステップ1(低負荷): 座った状態でのかかと上げ・下げ ステップ2(中負荷): 立った状態での両足でのかかと上げ ステップ3(高負荷): 片足でのかかと上げ
この段階的なアプローチにより、組織の治癒を促進しながら、安全に機能回復を図ることができます。
運動強度の目安を知っておこう
2023年に発表された厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド」では、以下のような推奨がされています。
| 運動の種類 | 推奨頻度 | 強度の目安 |
|---|---|---|
| 有酸素運動 | 週3〜5回 | ややきつい程度 |
| 筋力トレーニング | 週2〜3回 | 8〜12回で限界となる負荷 |
| バランス運動 | 週2回以上 | 無理なく継続できる程度 |
「ややきつい」とは、会話ができるくらいの強度です。息が上がりすぎず、でも少し負荷を感じる程度が理想的です。
参考: 厚生労働省 健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023
個別化されたプログラムが大切な理由
運動の種類を組み合わせる
効果的なリハビリには、有酸素運動、レジスタンス運動(筋トレ)、バランス運動など、様々な種類の運動を組み合わせることが重要です。
疾患や目標に応じて、最適な組み合わせを選択します。
トレーニング要素の調整
慢性疾患の患者さんでは、以下の要素を総合的に考慮してトレーニング計画を設計します。
- 負荷: どのくらいの強度で行うか
- 頻度: 週に何回行うか
- 順序: どの運動から始めるか
- 間隔: 休息をどのくらい取るか
これらの要素一つ一つが、最終的な効果に大きく影響します。
継続的なモニタリングと調整
運動中に体調の悪化や過度な負荷を示す兆候が見られた場合は、直ちに運動処方を見直します。
患者さんの自覚症状や心拍数なども重要な指標です。リハビリは画一的なものではなく、回復状況や体調の変化に応じて、常にプログラムを調整していく必要があります。
専門家との協力が成功の鍵
リハビリの成功は、患者さんと専門家のチームワークにかかっています。
多職種連携
医師、理学療法士、作業療法士、栄養士など、様々な専門家が連携してサポートします。それぞれの専門性を活かし、総合的なアプローチを提供することで、より良い結果につながります。
継続的なコミュニケーション
患者さんの状態や目標の変化に応じて、定期的にプログラムを見直します。
「こんな感じではどうでしょう?」 「もう少し強度を上げてみませんか?」
このような継続的な対話が、リハビリの効果を高める上で非常に重要なのです。
よくあるご質問
Q1. リハビリは毎日やらないとダメですか?
A. 毎日でなくても大丈夫です。週2〜3回でも、継続することで効果は現れます。大切なのは「続けること」です。疾患や状態によって適切な頻度は異なるため、担当の理学療法士に相談してみましょう。
Q2. 運動の強度はどれくらいが適切ですか?
A. 「ややきつい」と感じる程度が目安です。会話ができるくらいの強度が理想的です。息が上がりすぎず、でも少し負荷を感じる程度を心がけましょう。
Q3. 高齢でもリハビリの効果は期待できますか?
A. はい、年齢に関係なく効果は期待できます。実際、80歳以上の方でも適切なリハビリにより機能改善が見られることは珍しくありません。年齢に応じた適切なプログラムで進めることが大切です。
Q4. リハビリで痛みを感じたらどうすればいいですか?
A. 軽い筋肉痛は問題ありませんが、鋭い痛みや違和感がある場合は、すぐに担当者に相談してください。痛みを我慢して続けると、かえって状態を悪化させる可能性があります。
Q5. 自宅でできるリハビリはありますか?
A. あります。ただし、自己判断で行うのではなく、まず専門家の指導を受けることをおすすめします。正しい方法を学んだ上で、自宅でも継続することで、より効果的なリハビリが可能になります。
まとめ
リハビリテーションの効果を最大化するためには、適切なタイミングでの開始と、個々に合わせた運動負荷の設定が不可欠です。
この記事のポイント
✓ 早期開始が重要:脳卒中は1週間以内、術後は数日以内が推奨 ✓ 運動負荷は個別化:年齢・体力・目標に応じてオーダーメイド ✓ 段階的な進行:無理なく、徐々に負荷を上げていく ✓ 多職種連携:医師・理学療法士などの専門家チームでサポート ✓ 継続的な調整:回復状況に応じて柔軟にプログラムを見直す
今日から意識してみましょう
まずは、日常生活の中で少し意識してみることから始めてみませんか。
エレベーターの代わりに階段を使う、いつもより少し速く歩いてみる。小さなことから始めて、無理なく続けることが大切です。
専門家に相談するタイミング
もし「自分に合ったリハビリが分からない」「今の運動が適切か不安」といった疑問があれば、理学療法士などの専門家に相談してみましょう。
一人ひとりの状態、目標、ライフスタイルに合わせた、あなただけのリハビリプランを一緒に作り上げていくことができます。
健康な毎日のために、適切なリハビリを始めてみませんか。
📚 参考文献
- 日本集中治療医学会. 日本版重症患者リハビリテーション診療ガイドライン2023 (J-ReCIP2023). 日集中医誌. 2023;30(Suppl 2).
- 日本理学療法学会連合. 理学療法ガイドライン第2版(WEB版). 2021.
- 厚生労働省. 健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023. 令和5年.
- 日本循環器学会. 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン(2021年改訂版). 2021.
- 日本めまい平衡医学会. 前庭リハビリテーションガイドライン2024年版. 金原出版, 2024.
- Coleman ER, Moudgal R, Lang K, et al. Early Rehabilitation After Stroke: a Narrative Review. Curr Atheroscler Rep. 2017;19(12):59.
- Bernhardt J, Hayward KS, Kwakkel G, et al. Agreed definitions and a shared vision for new standards in stroke recovery research: The Stroke Recovery and Rehabilitation Roundtable taskforce. Int J Stroke. 2017;12(5):444-450.
執筆者情報
理学療法士 専門分野:リハビリテーション医療
本記事は、2023年から2025年にかけて発表された最新の文献・ガイドラインに基づいて作成しています。
免責事項
本記事の情報は一般的な内容です。個人の状態により適切な方法は異なります。
持病のある方、運動制限のある方は、医師にご相談ください。
症状が改善しない場合や悪化する場合は、速やかに医療機関を受診してください。