窒息の応急処置|のどを詰まらせた人への対応を理学療法士が解説
2026.10.25
豆知識
目の前で誰かがのどを詰まらせたら、あなたは動けるでしょうか。
窒息の応急処置は、最初の数分の対応が生死を分けます。実は、食べ物による窒息で亡くなる高齢者は、年間3,500人を超えるとされています5。理学療法士として、飲み込む力の衰えを見てきた立場からお伝えします。この記事では、窒息した人への応急処置と、日頃の予防をわかりやすく解説します。
💡 この記事について。本記事は2026年9月時点の一般的な健康情報です。個別の症状への診断や治療を目的としたものではありません。緊急時は迷わず119番に連絡してください。
目次
- 窒息とは?まず見分けたいサイン
- 窒息した人への応急処置|反応がある場合の手順
- 背部叩打法と腹部突き上げ法のやり方
- 乳児・妊婦・肥満の方への対応|腹部突き上げが使えない場合
- 反応がなくなったら|119番と胸骨圧迫
- 窒息でやってはいけない対応と注意点
- 窒息を防ぐために|高齢者と誤嚥・餅の注意
- よくある質問(FAQ)
- まとめ
窒息とは?まず見分けたいサイン
窒息とは、気道が塞がれ、空気が通らなくなった状態です。食べ物や異物がのどに詰まると起こります。空気が届かないため、数分で意識を失う危険があります。だからこそ、素早く見分けることが大切です。まずは落ち着いて、相手の様子を観察しましょう。
窒息が怖いのは、進行がとても速い点です。脳へ酸素が届かない時間が続くと、危険が増します。数分の遅れが、大きな差につながることもあります。だからこそ、周囲の素早い手当てが命綱になります。ためらわずに動く心構えが大切です。
窒息を疑うサイン
声が出せず、有効な咳もできないときは窒息を疑います1。両手で首をつかむ仕草は、チョークサインと呼ばれます7。これは「のどが詰まった」という代表的な合図です。さらに、顔色や唇が青紫色に変わることもあります。こうしたサインが見えたら、すぐに手当てが必要です。
判断に迷ったら、「大丈夫ですか」と声をかけてみましょう。返事ができず、うなずくだけなら要注意です。咳ができるうちは、まず咳を続けてもらいます。咳は、異物を出す最も効果的な力だからです。咳もできなくなったら、次の手当てへ移ります。

窒息した人への応急処置|反応がある場合の手順
反応があり、まだ咳ができる場合を考えます。このときは、強く咳を続けるよう促してください3。無理に背中を叩く必要はありません。一方、声が出ず有効な咳ができないときは別です。ただちに応急処置を始めましょう。
手順は、まず背部叩打法を行います1。それでも取れなければ、腹部突き上げ法に移ります。並行して、周囲の人に助けを求めましょう。「あなたは119番へ」と名指しで頼むのが有効です。一人で抱え込まず、役割を振ることが大切です。
手当ては、異物が出るか救急隊が来るまで続けます。途中であきらめず、繰り返すことが大切です。相手が咳をできるようになれば、咳を優先させます。声をかけ続け、相手を落ち着かせることも助けになります。一人で難しいときは、周囲と交代しながら行います。
背部叩打法と腹部突き上げ法のやり方
ここでは、2つの手技を具体的に見ていきます。どちらも、異物が出るまで繰り返すのが基本です。落ち着いて、力強く行うことがポイントです。
背部叩打法
相手を前かがみの姿勢にして支えます。手のひらの付け根を使います。左右の肩甲骨の間を、力強く連続して叩きます7。座っていても、立っていても行えます。異物が出るか、咳ができるまで続けます。

腹部突き上げ法
背部叩打で取れないときに行います3。後ろから相手を抱えるように腕を回します。へそとみぞおちの中間に、握りこぶしを当てます。もう一方の手で握り、手前上方へ素早く突き上げます。異物が出るまで、繰り返し行いましょう。

乳児・妊婦・肥満の方への対応|腹部突き上げが使えない場合
腹部突き上げ法は、内臓を傷つける恐れがあります7。そのため、行ってはいけない相手がいます。乳児、妊娠中の方、高度に肥満の方です。これらの場合は、別の方法で対応します。ここは特に注意したいポイントです。
1歳未満の乳児には、腹部突き上げを行いません4。背部叩打法と胸部突き上げ法を交互に行います。胸部突き上げは、指2本で胸の中央を押します。妊娠中の方や肥満の方には、背部叩打と胸部突き上げを用います。判断に迷えば、119番で指示を仰いでください。
なお、腹部突き上げ法を行った後は注意が必要です。異物が取れても、必ず医療機関を受診してください6。見えない部分を傷つけている可能性があるためです。安全のため、自己判断で終わらせないことが大切です。
腹部突き上げは、強い力が内臓に加わる手技です。だからこそ、対象を選ぶ必要があります。乳児や妊娠中の方では、その負担が大きくなります。より安全な背部叩打や胸部突き上げを選びましょう。正しく使い分けることが、二次的な被害を防ぎます。
反応がなくなったら|119番と胸骨圧迫
手当ての途中で、相手の反応がなくなることがあります。このときは、ためらわず行動を切り替えます。まだ通報していなければ、すぐ119番へ連絡します2。AEDがあれば、あわせて手配しましょう。そして、胸骨圧迫から心肺蘇生を始めます1。
心肺蘇生の途中で、口の中を確認する場面があります。異物が見えて取り出せるなら、取り除きます3。ただし、見えないのに指で探るのは避けてください。異物を奥へ押し込む危険があるためです。見える異物だけを、そっと取り除きましょう。
窒息でやってはいけない対応と注意点
良かれと思っても、避けたい対応があります。まず、見えない異物を指で探ることです3。かえって奥へ押し込む恐れがあります。また、水を飲ませて流し込むのも危険です。異物が動いて、さらに詰まることがあります。
掃除機で吸い出す方法を聞くこともあります。これは推奨される方法ではありません6。あくまで、他の手当てが行えない場合の最終手段です。強い吸引は、肺を傷つける恐れもあります。迷ったときは、119番で相談するのが安心です。
あわてると、かえって危険な行動をとりがちです。まずは深呼吸をして、順序を思い出しましょう。見分ける、咳を促す、背中を叩く、突き上げる。この流れを知っておくだけで、動きやすくなります。知識は、いざというときの落ち着きにつながります。
窒息を防ぐために|高齢者と誤嚥・餅の注意
窒息は、日頃の工夫で防ぎやすくなります。特に高齢の方は、飲み込む力が低下しがちです。むせを防ぐ咳の力も、加齢とともに弱まります。そのため、若い頃より詰まりやすくなるのです。理学療法士としても、注意したい変化です。
餅による窒息は、お正月の時期に増える傾向があります5。三が日は、餅を食べる機会が多いためと考えられます。この時期は、特に注意したいところです。家族で集まる場では、周りの見守りも助けになります。食べ方を少し工夫するだけでも、危険は減らせます。
餅による窒息は、1月に集中する傾向があります5。お正月に食べる機会が増えるためと考えられます。予防のこつは、食べ方の工夫にあります。小さく切る、先にのどを潤す、一口を少なくする。よく噛み、周りが見守ることも効果的です5。日常生活での怪我全般については、日常生活で起こる怪我と正しい対処法もあわせてご覧ください。

よくある質問(FAQ)
窒息した人には、まず何をすればいいですか?
まず、声が出せるか、咳ができるかを確認します。咳ができるなら、強く咳を続けてもらいましょう。声が出ず咳もできないなら、背部叩打法を始めます。取れなければ腹部突き上げ法に移ります。並行して、周囲に119番通報を頼むことが大切です。
チョークサインとは、どのような合図ですか?
チョークサインは、両手で首をつかむ仕草のことです。「のどが詰まった」という代表的なサインです。声が出せないため、身ぶりで苦しさを伝えています。この仕草が見えたら、すぐに手当てが必要です。あわせて、顔色や唇の色も確認しましょう。
乳児が窒息したら、大人と同じ対応でよいですか?
いいえ、乳児には腹部突き上げ法を行いません。内臓を傷つける恐れがあるためです。1歳未満には、背部叩打法と胸部突き上げ法を用います。この2つを交互に繰り返すのが基本です。判断に迷ったら、119番で指示を仰いでください。
掃除機でのどの異物を吸ってもいいですか?
掃除機は、推奨される方法ではありません。背部叩打や腹部突き上げが行えない場合の最終手段です。強い吸引は、肺を傷つける恐れもあります。まずは正しい手技を試すことが基本です。迷ったときは、119番で相談すると安心です。
高齢者の窒息を防ぐには、どうすればいいですか?
食べ方の工夫が、窒息の予防につながります。食材を小さく切り、先にのどを潤しましょう。一口の量を減らし、よく噛むことも大切です。特に餅など、粘りのある食品は注意が必要です。家族が見守ることで、早い気づきにもつながります。
まとめ
窒息の応急処置は、特別な資格を必要としません。まず見分け、咳を促し、背部叩打から手当てを始めます。腹部突き上げが使えない相手がいる点も、覚えておきたい知識です。反応がなくなれば、119番と胸骨圧迫へ切り替えます。落ち着いた初動が、大切な命を守ります。
そして、応急処置と同じくらい大切なのが予防です。飲み込む、噛む、むせて出す。これらはすべて、毎日の暮らしを支える動作です。加齢とともに衰えても、練習で保ちやすくなります。日頃から口やのどの働きに目を向けることが、備えになります。
私たちは、こうした生活の動作を専門家と一対一で見つめ直すことを大切にしています。人目を気にせず、無理のないペースで向き合える環境です。飲み込む力や姿勢の変化は、専門家と確認することでも気づけます。まずは、自分や家族の体の変化に目を向けてみませんか。受診先に迷う場面では、症状別・何科に行けばいい?受診科の選び方も参考になります。
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免責事項
記事の目的と性質
本記事は、窒息の応急処置に関する一般的な健康情報を提供することを目的としています。理学療法士の専門的視点から、科学的根拠に基づいた情報をわかりやすく解説していますが、以下の点にご注意ください。
本記事の限界
- 個別診断の代替不可:本記事の情報は、あなた個人の症状や状態に対する診断・治療を提供するものではありません。
- 医療行為ではない:記事内容は医療行為や医学的助言ではなく、一般的な情報提供です。
- 自己判断のリスク:本記事の情報のみに基づく自己判断や自己対処は、症状の悪化や健康被害につながる可能性があります。
医療機関受診の推奨
以下の場合は、必ず医療機関を受診してください。腹部突き上げ法を行った後、異物が取れて呼吸が戻った後、顔色や呼吸に不安が残る場合です。緊急性が高いと感じたときは、迷わず119番へ連絡してください。
情報の正確性について
本記事は2026年9月時点の最新情報に基づいて作成されており、信頼できる医学的根拠や公的ガイドラインを参照しています。医学・医療情報は常に更新されるため、将来的に内容が変更される可能性があります。
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参考文献
1. 日本蘇生協議会. JRC蘇生ガイドライン2020 第1章 一次救命処置. 2021.
2. 日本救急医療財団. 救急蘇生法の指針2020(市民用). 2021.
3. 総務省消防庁. 救命処置(気道異物除去). 防災危機管理eカレッジ.
4. こども家庭庁. もしもの時の応急手当方法. こども家庭庁.
5. 消費者庁. 餅による窒息事故に御注意ください. 2020.
6. 日本赤十字社. お餅を喉に詰まらせたら?正しい対処法. 2025.
7. 東京消防庁. 命を救う〜窒息の応急手当〜. 東京消防庁.
執筆者情報
本記事は、リペアルポ編集部が理学療法士監修のもとで作成しました。医療的な判断は、監修医師の確認方針に基づいています。科学的根拠に基づいた、信頼性の高い情報提供を心がけています。