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人工股関節の術後、やってはいけない動作は?理学療法士が解説

2026.10.02

リハビリ

人工股関節の術後、やってはいけない動作は?理学療法士が解説

人工股関節の術後、生活がどう変わるのか気になりますよね。

実は日本では、年間8万件を超える人工股関節の手術が行われています1。理学療法士として術後の方と接する中で、共通する不安に気づきます。

それは「どこまで動いていいのか分からない」という声です。

この記事では、人工股関節の術後に気をつけたい生活動作を解説します。

💡 この記事について

本記事は2026年7月時点の一般的な健康情報です。個別の診断や治療の代わりになるものではありません。術後に許される動作は、手術方法によって大きく異なります。必ず主治医や担当の理学療法士の指示を優先してください。

目次

  • 人工股関節の術後、なぜ生活動作に注意が必要なのか
  • 人工股関節の手術はどんな人が受けている?
  • 脱臼を防ぐために避けたい動作(禁忌肢位)とは?
  • 「靴下がはけない」術後によくある生活の困りごと
  • 人工股関節の術後リハビリで大切にしたいこと
  • 保険リハビリが終わったあとの選択肢
  • よくある質問(FAQ)
  • まとめ

人工股関節の術後、なぜ生活動作に注意が必要なのか

人工股関節とは、傷んだ股関節を金属やセラミックの部品に置き換える手術です。正式には人工股関節全置換術(THA)と呼ばれます。痛みが大きく減り、満足度の高い手術として知られています3。

ただし、人工の関節は本来の股関節と少し違う点があります。

それは、骨と骨のかみ合わせが浅くなりやすいことです4。そのため、ある角度以上に曲げたり捻ったりすると外れることがあります4。

これを「脱臼(だっきゅう)」といいます。

脱臼は、特に手術から数週間の時期に起きやすいとされています6。だからこそ、術後の生活動作を知っておくことが安心につながります。正しく知れば、過度に怖がる必要はありません。

むしろ、動かし方を工夫することで生活の幅は広がります。

人工股関節の手術はどんな人が受けている?

人工股関節の手術は、決して珍しいものではありません。登録制度のデータでは、2022年度に全国で約8万2千件が記録されています1。この数字は、全国の手術を集めた登録制度に基づくものです2。手術を受けた方の約8割は女性というデータもあります1。年代では60代・70代が中心です1。

手術のきっかけで最も多いのが「変形性股関節症」です3。

ほかに、大腿骨頸部骨折や大腿骨頭壊死症なども原因になります4。骨折をきっかけに、緊急で手術になる方もいます。日本人は生まれつき骨盤の受け皿が浅い方が多いといわれています3。

そのため、長年痛みに耐えてから手術を受ける方も少なくありません3。痛みを我慢する期間が長いほど、周りの筋肉は落ちていきます。この筋力の低下が、術後の回復に影響することも多いのです。

脱臼を防ぐために避けたい動作(禁忌肢位)とは?

脱臼しやすい姿勢を、専門的には「禁忌肢位(きんきしい)」と呼びます。

後方から手術した場合、次のような動作が注意対象になりやすいです4。

  • 深くしゃがみ込む(和式トイレ・低い椅子)
  • 横座りや体育座りをする
  • 脚を組む、内股にひねる
  • 床に座って前かがみで靴下をはく

共通するのは「深く曲げる」「内側に捻る」動きです4。この2つが重なると、脱臼のリスクが高まると考えられています4。ただし、これはすべての方に当てはまるわけではありません。

近年は筋肉を切らずに行う手術方法が広がっています5。この方法では脱臼が起こりにくく、動作制限を設けない施設も増えています5。正座や和式トイレを許可する施設もあります5。つまり、注意点は手術方法や施設によって変わるということです。

自己判断は禁物です。自分の術式に合った指導を受けることが大切です。

「靴下がはけない」術後によくある生活の困りごと

術後の相談で多いのが、意外にも小さな生活動作です。「靴下がはけない」という悩みは、その代表例です。足先に手が届くには、股関節を深く曲げる必要があるためです。

床の動作を椅子の動作に置き換える

対策の基本は、床での動作を椅子での動作に変えることです4。靴下は、椅子に座り、足を組みすぎずにはくと負担が減ります4。ソックスエイドという自助具を使う方法もあります4。

トイレ・入浴・寝起きの工夫

トイレは、和式より洋式のほうが股関節への負担が少なめです4。入浴では、浴槽のまたぎ動作でふらつくことがあります。手すりやバスボードを使うと、動作が安定しやすくなります。

寝起きでは、布団よりベッドのほうが立ち座りが楽になります4。こうした工夫は、環境を少し整えるだけで実現できます。

退院前に自宅を整えておくと安心

退院してから慌てないために、事前の準備が役立ちます。

段差の大きい場所には、手すりの設置を検討しましょう。

夜間のトイレの動線に、足元灯をつける方法もあります。

よく使うものは、腰から胸の高さに置くと拾いやすくなります。

深くかがまずに済むよう、収納の位置を見直すのも有効です。

こうした準備は、家族と一緒に考えると進めやすくなります。

家事や買い物での注意点

家事の中にも、股関節を深く曲げる動作が隠れています。

床の物を拾うときは、片脚を後ろに引くと負担が減ります。

重い荷物は、一度に持たず小分けにするのがおすすめです。

買い物ではカートを使うと、体への負担が軽くなります。

掃除は、柄の長い道具を選ぶとかがむ回数を減らせます。

大切なのは、自分の家の間取りに合わせて考えることです。

人工股関節の術後リハビリで大切にしたいこと

手術で痛みが取れても、それだけで元の生活に戻るわけではありません。長年の痛みで落ちた筋力は、時間をかけて取り戻す必要があります3。10年かけて落ちた筋肉を、1か月で戻すことはできません3。

だからこそ、退院後も続けられるリハビリが重要になります3。

動作の練習は「本番の場所」で行うと定着しやすい

筋力トレーニングだけがリハビリではありません。実際の生活動作を、繰り返し練習することも同じくらい大切です。トイレや浴室での動作は、頭で分かっても体が戸惑うものです。

リハビリの現場では、退院前に動作を練習する取り組みがあります6。脱臼しやすい場面を想定し、安全な動き方を体で覚えていきます6。こうした動作の反復は、自宅の環境に合わせるほど効果的です。

歩き方のクセを見直すことも回復の一歩

長く痛みをかばうと、歩き方にクセが残ることがあります。術後も、無意識に脚をかばって歩く方は少なくありません。このクセは、腰や反対の脚に負担をかけることがあります。

鏡や動画で自分の歩きを見ると、気づきが生まれます。専門家が横で見ながら、少しずつ整えると効果的です。整った歩き方は、人工関節を長持ちさせる助けにもなります。

「楽しく続けられるか」も回復を左右する

自宅での自主トレは、単調で飽きやすいのが正直なところです3。仕方なく続ける運動は、効果が上がりにくいともいわれます3。趣味や生活と結びつけると、続けやすくなると考えられています3。

一人ひとりで足りない筋肉も、必要な練習も違います3。だからこそ、その人に合わせた個別の関わりが力を発揮します。

保険リハビリが終わったあとの選択肢

術後のリハビリには、保険で受けられる期間の目安があります。

「まだ不安なのに、リハビリが終わってしまった」と感じる方もいます。

回復のペースには、大きな個人差があるためです。そんなとき、続ける手段のひとつが自費リハビリです。

自費リハビリは、期間や回数の制限を受けにくい仕組みです。時間をかけて、生活動作をじっくり練習し直すこともできます。トイレや入浴の動作も、落ち着いて練習し直せます。人目を気にせず、一対一で取り組める環境も選べます。

詳しくは自費リハビリと保険リハビリの違いもご覧ください。

大切なのは、無理のないペースで納得いくまで取り組むことです。特別な機器よりも、隣で動作を見てくれる存在が支えになります。立つ、歩く、トイレ、入浴といった動作こそ、生活の土台だからです。

よくある質問(FAQ)

Q. 人工股関節の術後、脱臼はどのくらいの期間注意すべき?

A. 手術から数週間は、特に注意が必要とされる時期です6。組織が落ち着くにつれ、リスクは下がっていくと考えられています。ただし期間は術式や個人差で変わります。担当の医師や理学療法士の指示に従いましょう。

Q. 人工股関節の術後、正座や和式トイレはしてもいい?

A. これは手術方法によって答えが変わります。従来は避けるよう指導されてきました4。一方で、近年は制限を設けない施設も増えています5。必ず自分の主治医に確認してください。

Q. 人工股関節の術後リハビリはいつまで続ければいい?

A. 明確な終わりがあるわけではありません。長年で落ちた筋力の回復には時間がかかります3。退院後も自分のペースで続けることが望ましいとされています。生活動作が安定するまでを一つの目安に考えるとよいでしょう。

Q. 人工股関節の術後、運動やスポーツはできる?

A. ウォーキングや水泳など、負担の少ない運動は勧められることが多いです4。一方で、接触や強い衝撃のある運動は慎重な判断が必要です。再開の時期や種目は、主治医と相談して決めましょう。

Q. 人工股関節はどのくらい長持ちする?

A. 部品の耐久性は年々向上しているといわれています3。一方で、ゆるみや摩耗が進むこともあります。自覚がなくても変化することがあるため、定期検診が大切です。気になる症状があれば早めに受診しましょう。

まとめ

人工股関節の術後は、生活動作の工夫で安心感が大きく変わります。

脱臼を防ぐ動作は、手術方法によって異なります5。

まずは自分の術式に合った指導を受けることが出発点です。

そのうえで、靴下・トイレ・入浴などの動作を練習し直しましょう。

筋力の回復には時間がかかるため、続けられる形が大切です3。

地味に見える生活動作こそ、毎日の暮らしを支える土台です。

専門家と一対一で、無理のないペースで練習する意味はここにあります。

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免責事項

本記事は、人工股関節の術後に関する一般的な健康情報を提供することを目的としています。理学療法士の専門的視点から、科学的根拠に基づいた情報をわかりやすく解説していますが、以下の点にご注意ください。

・個別診断の代替不可:本記事の情報は、あなた個人の症状や状態に対する診断・治療を提供するものではありません。

・医療行為ではない:記事内容は医療行為や医学的助言ではなく、一般的な情報提供です。術後の動作の可否は手術方法で異なるため、必ず主治医の指示を優先してください。

・自己判断のリスク:本記事の情報のみに基づく自己判断や自己治療は、症状の悪化や健康被害につながる可能性があります。

以下の場合は、必ず医療機関を受診してください。痛みや不調が続いている場合、症状が悪化している場合、日常生活に支障が出ている場合、持病や既往歴がある場合です。

本記事は2026年7月時点の最新情報に基づいて作成されており、信頼できる医学的根拠や公的ガイドラインを参照しています。医学・医療情報は常に更新されるため、将来的に内容が変更される可能性があります。

当施設は本記事の情報をできる限り正確かつ有用なものとするよう努めていますが、情報の完全性・正確性・有用性・適時性について保証するものではありません。本記事の情報を利用したことにより生じた損害について、当施設は一切の責任を負いかねます。

参考文献

1. 日本人工関節学会 日本人工関節登録制度事務局. THA 2022年度症例統計. 日本整形外科学会, 2023.

2. 日本整形外科学会. 日本整形外科学会症例レジストリー(JOANR)年次報告. 2024.

3. 日本整形外科学会・日本股関節学会. 変形性股関節症診療ガイドライン. 南江堂.

4. 千葉市立青葉病院 整形外科. 人工股関節置換術. 2025.

5. 康心会汐見台病院. 人工関節置換術後に日常生活で気を付けること. 2023.

6. 船橋整形外科クリニック. 人工股関節全置換術後のリハビリテーション.

執筆者情報

リペアルポ編集部(理学療法士監修)。repair-repos.com|大阪の自費リハビリ専門センター。理学療法士の専門知識と最新のエビデンスに基づき、読者の健康に役立つ情報を発信しています。

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