肝臓の健康を守るために知っておきたいこと|理学療法士が解説する生活習慣改善法
2026.07.22
健康について
この記事について
この記事は一般的な健康情報を提供するものです。個別の医学的診断や治療の代わりとなるものではありません。症状や不安がある場合は、必ず医療機関を受診してください。
健康診断で肝機能の数値を指摘されたことはありませんか。
肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、異常があっても症状が出にくい特徴があります。気づいたときには、病気が進行していることも少なくありません。
この記事では、理学療法士の視点から、肝臓の働きと健康を守るための生活習慣改善法をわかりやすく解説します。特にアルコールの抜き方(休肝日の実践法)や運動習慣についても詳しくお伝えします。
目次
- 肝臓とは?その役割と重要性
- 肝臓の病気の現状・統計データ
- 肝臓に負担をかける原因とメカニズム
- 肝臓の病気がもたらす影響
- 肝臓を守る生活習慣改善法
- アルコールの抜き方(休肝日の実践法)
- 運動と肝臓の健康
- よくある質問(FAQ)
- まとめ
- 免責事項
- 参考文献
- 執筆者情報
肝臓とは?その役割と重要性
肝臓の基本情報
肝臓は、腹部の右上、肋骨の下にある臓器です。
成人で約1~1.5kgもあり、体の中で最も大きな臓器の一つです。体重の約2.5%を占めています。
肝臓は500以上の仕事をこなす「生体の化学工場」と呼ばれ、生命活動に欠かせない働きをしています。
肝臓の主な3つの働き
1. 代謝(栄養素の加工・貯蔵)
食べ物から摂った栄養素を、体で使える形に変える働きです。
たとえば、炭水化物をブドウ糖に変えてエネルギー源として貯蔵したり、タンパク質をアミノ酸に分解して体の組織を作る材料にしたりします。
2. 解毒(有害物質の分解)
アルコールや薬、体内で発生したアンモニアなど、体に有害な物質を分解する働きです。
お酒を飲むと肝臓に負担がかかるのは、このアルコール分解の仕事が増えるためです。
3. 胆汁の生成・分泌
脂肪の消化吸収を助ける胆汁を作り、分泌する働きです。
胆汁は、脂肪を細かく分解して、消化酵素が働きやすくします。
なぜ肝臓は「沈黙の臓器」なのか
肝臓には痛みを感じる神経がほとんどありません。
そのため、ダメージを受けていても自覚症状が出にくく、気づいたときには病気が進行していることがあります。
だからこそ、症状がなくても定期的な健康診断が重要なのです。
肝臓の病気の現状・統計データ(2026年2月時点)
日本における肝疾患の患者数
厚生労働省の令和5年(2023年)患者調査によると、肝疾患で治療を受けている総患者数は約51万人です。
年齢別では、40歳代から患者数が増え始め、70歳代でピークを迎えます。
代謝異常関連脂肪性肝疾患(MASLD)の増加
近年、特に注目されているのが、MASLD(マッスルディー)です。
MASLDは、以前はNAFLD(ナフルディー)と呼ばれていた病気で、2024年8月に名称が変更されました。
アルコールを飲まない、あるいはさほど飲まない人でも、肥満や糖尿病、脂質異常症などの代謝異常が原因で発症する脂肪肝です。
MASLDの推定患者数:
- 健診受診者の約25%がMASLDに該当
- 推定で2,000万人以上の潜在患者がいると考えられています
日本人の特徴:
- 非肥満(BMI25未満)のMASLD患者が約20%
- 遺伝的な要因(PNPLA3遺伝子)の影響が大きい
MASLDを放置すると、MASH(マッシュ:代謝異常関連脂肪肝炎)に進行し、さらに肝硬変や肝がんに至る可能性があります。
肝疾患の入院期間
肝疾患で入院した場合、平均入院日数は約22.3日です。
約3週間の入院が必要になることを考えると、日頃からの予防が重要です。
肝臓に負担をかける原因とメカニズム
アルコールの影響
アルコールの約90%は肝臓で処理されます。
お酒を飲むと、肝臓はアルコールを分解するために働き続けます。このとき、アセトアルデヒドという有害物質が発生し、肝細胞にダメージを与えます。
アルコール性肝障害の進行:
- 脂肪肝:肝臓に中性脂肪が蓄積
- アルコール性肝炎:肝細胞が炎症を起こす
- 肝線維症:肝臓が硬くなり始める
- 肝硬変:肝臓の機能が著しく低下
- 肝がん:肝硬変から肝がんに進行するリスク
アルコールの適量:
厚生労働省によると、1日の純アルコール摂取量の適量は20~25g程度とされています。
これは以下の量に相当します:
- ビール中瓶1本(500ml)
- 日本酒1合(180ml)
- ワイングラス2杯程度(200ml)
食べ過ぎ・運動不足の影響
摂取エネルギーが消費エネルギーを上回ると、余分なエネルギーが脂肪として肝臓に蓄積されます。
これが脂肪肝の原因です。
特に、内臓脂肪が増えると、肝臓への脂肪蓄積も進みやすくなります。
肥満でなくても脂肪肝になる理由
日本人の約20%は、肥満でなくてもMASLDになります。
これは、PNPLA3という遺伝子の働きが弱い人が日本人に多いためです。この遺伝子は肝臓の脂肪を処理する機能に関わっており、働きが弱いと脂肪が蓄積しやすくなります。
そのため、「痩せているから大丈夫」とは限りません。
肝臓の病気がもたらす影響
初期症状
肝臓の病気は初期段階では症状が出にくいですが、以下のような症状が現れることがあります:
- 倦怠感(だるさ)
- 食欲不振
- 吐き気
- 腹部の不快感
これらは風邪に似た症状なので、見過ごされがちです。
進行した場合の症状
病気が進行すると、以下のような症状が現れます:
- 黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)
- 腹水(お腹に水が溜まる)
- 浮腫(足などがむくむ)
- 皮膚のかゆみ
- 意識障害(肝性脳症)
こんな症状がある場合は医療機関へ
以下のような症状がある場合は、早めに医療機関を受診してください:
- 健診で肝機能異常(AST、ALT、γ-GTPの上昇)を指摘された
- 倦怠感や食欲不振が1週間以上続いている
- 皮膚や白目が黄色くなってきた
- 腹部の膨満感が続いている
- 体重が急に減少した
自己判断せず、専門医の診察を受けることが重要です。
肝臓を守る生活習慣改善法
肝臓の健康を守るには、日々の生活習慣の見直しが欠かせません。
ここでは、今日からできる具体的な方法をご紹介します。
1. バランスの良い食事
良質なタンパク質を摂る
肝臓の修復にはタンパク質が必要です。
魚、大豆製品、卵、鶏肉など、良質なタンパク質を毎食取り入れましょう。
食物繊維を豊富に摂る
野菜、果物、全粒穀物、海藻類など、食物繊維が豊富な食品は腸内環境を整え、間接的に肝臓の健康をサポートします。
脂質は質を重視
動物性脂肪は控えめにし、魚の油(DHA・EPA)やオリーブオイルなど、良質な脂質を選びましょう。
糖質の摂りすぎに注意
甘いものや清涼飲料水の飲み過ぎは、肝臓に脂肪を蓄積させる原因になります。
2. 適度な体重管理
MASLDの改善には、体重の7%程度の減量が効果的とされています。
たとえば、体重70kgの人なら、約5kgの減量です。
無理なダイエットではなく、バランスの良い食事と適度な運動で、ゆっくりと体重を減らしていきましょう。
3. 定期的な健康診断
肝臓は症状が出にくいため、定期的な健康診断が早期発見の鍵です。
血液検査で以下の項目をチェックしましょう:
- AST(GOT)
- ALT(GPT)
- γ-GTP(ガンマ・ジーティーピー)
これらの数値が基準値を超えている場合は、医師に相談してください。
4. 薬やサプリメントの適切な使用
薬やサプリメントも肝臓で代謝されます。
特にウコンは、適量なら肝臓の働きをサポートしますが、過剰摂取は逆に肝臓に負担をかけます。
持病がある方は、サプリメントを使用する前に必ず医師に相談しましょう。
アルコールの抜き方(休肝日の実践法)
お酒を楽しみながら肝臓を守るには、「休肝日」と「アルコール総摂取量の管理」が重要です。
休肝日とは
休肝日とは、肝臓を休めるために、週に1日以上お酒を飲まない日を設けることです。
厚生労働省は、週に2日以上の休肝日を推奨しています。
休肝日の効果
休肝日を設けることで、以下の効果が期待できます:
- 肝臓への負担軽減
- アルコール依存症の予防
- 1週間のアルコール総摂取量の減少
ただし、休肝日の科学的エビデンスは限定的です。重要なのは、休肝日を設けることで「アルコールの総摂取量を減らすこと」です。
アルコール総摂取量の管理が最重要
休肝日を設けても、飲む日に大量に飲んでしまっては意味がありません。
1週間の純アルコール摂取量の目安:
- 男性:150g以下
- 女性:100g以下
これは、男性なら1日平均25g以下、女性なら1日平均15g以下に相当します。
休肝日を継続するコツ
1. 曜日を決める
「毎週火曜日と木曜日は休肝日」など、あらかじめ曜日を決めておくと継続しやすくなります。
2. ノンアルコール飲料を活用
ノンアルコールビールや炭酸水など、代わりになる飲み物を用意しておきましょう。
3. 趣味や運動で気を紛らわす
お酒を飲む時間を、別の楽しいことに使いましょう。
散歩、読書、映画鑑賞など、リラックスできる活動を見つけてください。
4. 家族や友人に宣言する
周囲の人に休肝日の目標を伝えることで、続けやすくなります。
アルコール依存症のチェック
休肝日を設けてみて、以下のような症状が出る場合は、アルコール依存症の可能性があります:
- イライラする
- 寝付きが悪くなる
- 手が震える
- 発汗が増える
このような症状がある場合は、早めに専門医に相談してください。
運動と肝臓の健康
適度な運動は、肝臓の健康維持に非常に効果的です。
運動が肝臓に良い理由
1. 内臓脂肪の減少
有酸素運動は、内臓脂肪を効率的に燃焼させます。
内臓脂肪が減ると、肝臓への脂肪蓄積も減少します。
2. インスリン抵抗性の改善
運動は筋肉の糖の取り込みを促し、インスリンの働きを改善します。
これにより、肝臓への脂肪蓄積が抑えられます。
3. 肝機能の改善
継続的な運動は、肝機能を示す数値(AST、ALT)の改善につながることが研究で示されています。
おすすめの運動
有酸素運動
- ウォーキング:1日30分以上、週に5日
- ジョギング:1日20~30分、週に3~4日
- サイクリング:1日30~40分、週に3~4日
- 水泳:1日30分、週に2~3日
無理のないペースで、「ややきつい」と感じる程度の強度が理想です。
筋力トレーニング
筋肉量が増えると、基礎代謝が上がり、脂肪が燃えやすい体になります。
週に2~3回、大きな筋肉(太もも、背中、胸)を中心に鍛えましょう。
スクワット、腕立て伏せ、プランクなど、自宅でできる運動から始めるのがおすすめです。
運動を始める際の注意点
- 持病がある方は、運動を始める前に必ず医師に相談してください
- 急に激しい運動をすると、かえって体に負担がかかります
- まずは軽い運動から始めて、徐々に強度を上げていきましょう
- 痛みや違和感がある場合は、無理をせず中止してください
専門家(理学療法士や運動指導士)の指導を受けることをおすすめします。
よくある質問(FAQ)
Q1: 肝機能の数値が少し高いと言われました。どうすればいいですか?
A: まずは医師に相談し、原因を特定することが大切です。
多くの場合、生活習慣の見直し(節酒、食事改善、運動習慣)で改善が期待できます。
ただし、自己判断せず、医師の指導のもとで取り組んでください。
Q2: 毎日少量のお酒なら問題ないですか?
A: 適量であれば、毎日飲んでも大きな問題はないとされています。
ただし、1週間の総摂取量が多くなりすぎないよう注意が必要です。
また、週に2日以上の休肝日を設けることで、アルコール依存症の予防にもなります。
個人差があるため、心配な場合は医師に相談してください。
Q3: 脂肪肝は治りますか?
A: 初期の脂肪肝であれば、生活習慣の改善で十分に改善が期待できます。
体重を7%程度減らすことで、脂肪肝や炎症が改善することが報告されています。
ただし、肝硬変まで進行すると、元の状態に戻すことは困難です。
早期発見・早期対処が重要です。
Q4: 肝臓に良い食べ物はありますか?
A: 特定の食べ物だけで肝臓が良くなるわけではありませんが、以下の食品は肝臓の健康をサポートします:
- 良質なタンパク質(魚、大豆製品、卵)
- 食物繊維が豊富な食品(野菜、果物、全粒穀物)
- 抗酸化作用のある食品(緑茶、コーヒー、ナッツ類)
バランスの良い食事を心がけることが最も大切です。
Q5: 運動はどのくらいすれば効果がありますか?
A: 有酸素運動は、1日30分以上、週に5日程度が目安です。
ただし、これまで運動習慣がなかった方は、まずは1日10~15分の軽いウォーキングから始めましょう。
継続することが最も重要なので、無理のない範囲で行ってください。
効果を実感するには、少なくとも3ヶ月程度の継続が必要です。
Q6: サプリメントで肝臓を守れますか?
A: サプリメントはあくまで補助的なものです。
基本は、バランスの良い食事と適度な運動、適切な飲酒量の管理です。
特にウコンなどのサプリメントは、過剰摂取すると肝臓に負担をかける可能性があります。
持病がある方や薬を服用している方は、サプリメントを使用する前に必ず医師に相談してください。
Q7: 健康診断はどのくらいの頻度で受けるべきですか?
A: 年に1回は必ず受けましょう。
肝機能に異常がある方や、リスク要因(飲酒習慣、肥満、糖尿病など)がある方は、医師の指示に従って、より頻繁に検査を受けることをおすすめします。
早期発見が、肝臓の病気を予防する最も確実な方法です。
まとめ
肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、異常があっても症状が出にくい特徴があります。
だからこそ、日頃からの生活習慣の見直しと、定期的な健康診断が重要です。
肝臓を守るための5つのポイント:
- バランスの良い食事を心がける
- 適度な体重を維持する
- 週に2日以上の休肝日を設け、アルコール総摂取量を管理する
- 適度な運動習慣を身につける
- 定期的に健康診断を受ける
特に、MASLDは自覚症状がほとんどないため、健診で早期発見することが大切です。
もし、倦怠感や食欲不振が続いたり、健診で肝機能異常を指摘された場合は、早めに医療機関を受診してください。
適切な対処で、肝臓の健康を取り戻し、快適な日常を送りましょう。
免責事項
記事の目的と性質
本記事は、肝臓の健康に関する一般的な健康情報を提供することを目的としています。理学療法士の専門的視点から、科学的根拠に基づいた情報をわかりやすく解説していますが、以下の点にご注意ください。
本記事の限界
- 個別診断の代替不可: 本記事の情報は、あなた個人の症状や状態に対する診断・治療を提供するものではありません
- 医療行為ではない: 記事内容は医療行為や医学的助言ではなく、一般的な情報提供です
- 自己判断のリスク: 本記事の情報のみに基づく自己判断や自己治療は、症状の悪化や重大な健康被害につながる可能性があります
医療機関受診の推奨
以下の場合は、必ず医療機関を受診してください:
- 健診で肝機能異常を指摘された場合
- 倦怠感や食欲不振が1週間以上続く場合
- 皮膚や白目が黄色くなった場合
- 腹部の膨満感が続いている場合
- 体重減少が著しい場合
- 持病や既往歴がある場合
- 高齢者や妊娠中の方
医師や理学療法士などの専門家による適切な診断と治療を受けることが最も重要です。
情報の正確性について
本記事は2026年2月時点の最新情報に基づいて作成されており、信頼できる医学的根拠や公的ガイドラインを参照しています。しかし、医学・医療情報は常に更新されており、将来的に内容が変更される可能性があります。
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参考文献
- 日本肝臓学会. 肝細胞癌診療ガイドライン2025年版. 金原出版, 2025. https://www.jsh.or.jp/medical/guidelines/jsh_guidlines/medical/
- 厚生労働省. 令和5年患者調査. 2024. https://www.e-stat.go.jp/
- 厚生労働省. 脂肪肝. e-ヘルスネット. 2024年5月27日更新. https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/metabolic/ym-033.html
- 厚生労働省. 休肝日. e-ヘルスネット. https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/dictionary/alcohol/ya-063.html
- 国立国際医療研究センター肝炎情報センター. 代謝機能障害関連脂肪性肝疾患. 2025年6月3日改訂. https://www.kanen.jihs.go.jp/cont/010/shibousei.html
- 日本生活習慣病予防協会. 非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の有病率は9~30%。少なくとも1,000万人以上と推計. 2024年11月22日. https://seikatsusyukanbyo.com/statistics/2024/010795.php
- 日本生活習慣病予防協会. NAFLD/NASHはMASLD/MASHにーMASLD/MASHの日本語名称が正式に決定! 2024年8月. https://seikatsusyukanbyo.com/calendar/2024/010760.php
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