心臓リハビリテーションとは?理学療法士がわかりやすく解説【2026年版】
2026.05.27
健康について
「心臓の病気になったら、安静にしていた方がいいんじゃないの?」
こう思われる方、実は多いんです。でも実は、心臓病の治療において「適切な運動」がとても大切だということが、最新の研究で明らかになっています。
本記事では、心臓病の回復と再発予防に欠かせない「心臓リハビリテーション」について、理学療法士の視点からわかりやすく解説します。2025年3月に改訂された最新のガイドライン情報も含めてご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
心臓リハビリテーションって何?
心臓リハビリテーション(心臓リハビリ)とは、心臓病の患者さんが体力を回復し、日常生活や社会生活に復帰するとともに、再発や再入院を防ぐための総合的なプログラムです。
単なる運動療法ではありません
「リハビリ=運動」というイメージがあるかもしれませんが、心臓リハビリにはもっと幅広い内容が含まれています。
心臓リハビリの主な内容は以下の通りです。
- 運動療法(有酸素運動、筋力トレーニング)
- 生活指導(食事、服薬、禁煙など)
- 患者教育(心臓病についての学習)
- カウンセリング(不安や悩みへの対応)
- 社会復帰支援
このように、心臓リハビリは「運動だけ」ではなく、患者さん一人ひとりの状態に合わせた包括的なサポートなんです。
なぜ心臓病に運動が必要なのか?
「心臓が悪いのに運動して大丈夫?」という疑問、当然ですよね。
実は、心筋梗塞や心不全などで入院すると、心臓の機能低下に加えて、安静にしていることで全身の体力も低下してしまいます。1日安静にしているだけで筋力は1〜4%低下し、1〜2週間で約20%も落ちると言われています。
そして、落ちた筋力を元に戻すには約6週間もかかるんです。
適切な運動療法を行うことで、以下のような効果が期待できます。
- 体力・持久力の回復
- 心臓の機能改善
- 再発リスクの低減
- 生活の質(QOL)の向上
- 不安感の軽減
2025年に改訂された心不全診療ガイドラインでも、急性期から早期にリハビリを開始することの重要性が明確に示されています。
心臓リハビリの対象となる方
心臓リハビリは、以下のような心臓病の方が対象となります。
| 疾患名 | 具体例 |
|---|---|
| 虚血性心疾患 | 心筋梗塞、狭心症 |
| 心不全 | 急性心不全、慢性心不全 |
| 心臓手術後 | 冠動脈バイパス術、弁膜症手術後 |
| 大血管疾患 | 大動脈解離、大動脈瘤手術後 |
| 末梢動脈疾患 | 閉塞性動脈硬化症 |
年齢制限はありません。80歳代、90歳代の方でも、医師が必要と判断すれば心臓リハビリを受けることができます。
実際、最近の統計では80歳代前半をピークに、90歳以上の方でも心臓リハビリを受ける方が年々増加しています。
心臓リハビリの流れ:3つの時期
心臓リハビリは、病状の回復段階に応じて3つの時期に分けられます。
急性期(入院中)
入院後、治療によって病状が安定したら、できるだけ早い段階でリハビリを始めます。
まずは病棟内での歩行から始めて、少しずつ活動範囲を広げていきます。医師や理学療法士が患者さんの状態を見ながら、慎重に進めていきます。
多くの場合、手術の翌日から開始することもあります。これは「早期離床」という考え方で、長期間の安静による合併症(血栓、肺炎、筋力低下など)を予防するために重要なんです。
回復期(退院後5ヶ月間)
退院後も、保険適用で150日(5ヶ月間)の心臓リハビリを継続できます。
この時期が最も重要です。なぜなら、2025年の最新ガイドラインでは、退院後90日間を「脆弱期」と定義し、この期間に多職種で積極的に支援を行う必要性が強調されているからです。
回復期の心臓リハビリでは、以下のようなことを行います。
運動負荷試験による評価 心肺運動負荷検査(CPX)を行い、一人ひとりに適した運動強度を設定します。
監視下での運動療法 心電図をモニターしながら、安全に運動を行います。週1〜3回の通院が推奨されています。
在宅運動療法の指導 自宅でも安全に運動を続けられるよう、具体的な方法を指導します。
生活習慣の改善サポート 食事、服薬、禁煙など、再発予防のための生活習慣を身につけます。
維持期(5ヶ月以降)
5ヶ月間のプログラム終了後も、学んだ運動習慣や生活習慣を継続することが大切です。
定期的に主治医の診察を受けながら、自主的に運動を続けていきます。地域のスポーツセンターや在宅で、安全に運動を継続できる仕組みも整備されつつあります。
心臓リハビリの具体的な内容
運動療法
心臓リハビリの中核となるのが運動療法です。
有酸素運動 歩行、自転車こぎ(エルゴメーター)、トレッドミルなどを中心に行います。「ややきつい」と感じる程度の強度が適切です。
この「ややきつい」という感覚、実は科学的な根拠があるんです。自覚的運動強度で「11〜13(楽である〜ややきつい)」が、心臓に負担をかけすぎず、かつ効果が得られる強度と言われています。
筋力トレーニング 長期安静で筋力が著しく低下している場合は、つま先立ちなどの軽い筋力トレーニングも併せて行います。
運動中の安全管理 医療スタッフの監視のもと、心電図モニターを装着しながら実施します。何か問題が生じても、直ちに対応できる体制が整っています。
生活指導・患者教育
運動だけではなく、日常生活全般のサポートも行います。
- 食事指導(減塩、適正カロリー、栄養バランス)
- 服薬指導(薬の効果と正しい服用方法)
- 禁煙指導
- ストレス管理
- 睡眠と休息の取り方
多職種のスタッフ(医師、理学療法士、看護師、薬剤師、管理栄養士など)が連携して、患者さんをサポートします。
心臓リハビリの効果:科学的に証明されています
「本当に効果があるの?」と思われるかもしれませんが、心臓リハビリの効果は多くの研究で証明されています。
体力・運動能力の改善
運動療法を3〜5ヶ月間継続することで、持久力の指標である最高酸素摂取量が平均で1〜2割程度改善することが示されています。
日常生活では、階段の上り下りが楽になったり、長い距離を歩けるようになったりと、実感できる変化が現れます。
再発・再入院の減少
心臓リハビリを行うことで、心不全や心筋梗塞の再発・再入院が減り、死亡率が減少することが報告されています。
動脈硬化の原因となる危険因子(高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙、肥満)のコントロールが改善し、全身の動脈硬化の進行抑制につながるんです。
心理面の改善
心臓病を発症すると、「また発作が起きるのでは」という強い不安を抱えることがあります。
心臓リハビリを通じて、安全に運動できる範囲を知り、専門家のサポートを受けることで、不安やうつ状態が改善し、気持ちが前向きになることが報告されています。
心臓リハビリを安全に行うために
専門家による評価と運動処方
心臓リハビリは、必ず医師の指示のもとで行います。
運動を始める前に、心肺運動負荷検査(CPX)などで心臓の状態を評価し、一人ひとりに合った運動強度を設定します。これを「運動処方」と言います。
自己判断で運動強度を上げることは危険です。必ず専門家の指導に従ってください。
運動中の注意点
心臓リハビリ中に、以下のような症状が現れた場合は、すぐに運動を中止して医療スタッフに伝えてください。
- 強い息切れ
- 胸痛・胸部の圧迫感
- めまい・ふらつき
- 動悸・不整脈
- 極度の疲労感
- 冷や汗
これらは心臓に負担がかかりすぎているサインかもしれません。
無理はしない
「ややきつい」と感じる程度が適切です。「きつい」「非常にきつい」と感じる運動は、心臓への負担が大きすぎます。
会話ができる程度の強度を目安にしましょう。
心臓リハビリはどこで受けられる?
心臓リハビリは、心大血管疾患リハビリテーション料の施設基準を満たした医療機関で受けることができます。
2023年の調査では、全国で約1,516施設が心臓リハビリを実施しています。
退院後の外来リハビリは、週1〜3回程度の通院が一般的です。お住まいの地域で実施している医療機関については、主治医にご相談ください。
費用について
心臓リハビリは健康保険の適用対象です。
心大血管疾患リハビリテーション料として、治療開始日から150日(5ヶ月間)を限度に算定されます。自己負担額は、加入している保険の種類や年齢によって異なりますので、詳しくは医療機関にお尋ねください。
よくあるご質問
Q1. 心臓リハビリは必ず受けないといけませんか?
心臓リハビリは任意ですが、受けることを強くお勧めします。再発予防や生活の質の向上に大きな効果があることが科学的に証明されています。医師が必要と判断した場合は、ぜひ参加をご検討ください。
Q2. 退院後、自宅やスポーツジムで運動すればリハビリに通わなくても良いのでは?
自己流の運動はリスクがあります。心臓リハビリでは、心電図モニター下での安全管理、専門家による運動処方、定期的な評価など、医療機関でしか受けられないサポートがあります。プログラム期間中は通院リハビリへの参加が推奨されています。
Q3. 高齢でも心臓リハビリを受けられますか?
年齢制限はありません。80歳代、90歳代の方でも、医師が適切と判断すれば心臓リハビリを受けることができます。実際、近年は高齢者の参加が増えています。
Q4. どれくらいの期間続ければ効果が出ますか?
個人差はありますが、3〜5ヶ月間の継続で体力の改善が実感できることが多いです。ただし、再発予防のためには、プログラム終了後も運動習慣を継続することが大切です。
Q5. 心臓リハビリ中に症状が悪化することはありますか?
医療スタッフの監視下で適切な強度で行えば、基本的に安全です。ただし、運動中に胸痛、強い息切れ、めまいなどが出現した場合は、すぐに運動を中止し、医療スタッフに伝えてください。
まとめ
心臓リハビリテーションについてご紹介しました。
この記事のポイント
- 心臓リハビリは運動療法だけでなく、生活指導や患者教育を含む包括的プログラム
- 急性期から早期に開始し、退院後5ヶ月間の継続が推奨される
- 2025年最新ガイドラインでは退院後90日間の「脆弱期」支援が強調されている
- 体力回復、再発予防、QOL向上など多くの効果が科学的に証明されている
- 専門家による運動処方と安全管理のもとで実施される
- 「ややきつい」程度の運動強度が適切
- 全国約1,516施設で実施、健康保険適用
今日から意識してみませんか?
心臓病を経験された方にとって、心臓リハビリは回復への大切な一歩です。
適切な運動と生活習慣の改善によって、多くの方が元気な日常生活を取り戻しています。不安なことがあれば、一人で悩まず、まずは主治医や医療スタッフに相談してみましょう。
専門家に相談するタイミング
もし、心臓病の治療を受けている、または退院後の生活に不安がある場合は、理学療法士などの専門家に相談してみましょう。
一人ひとりの状態に合わせた適切なアドバイスを受けることで、安心して生活を送ることができます。
📚 参考文献
- 日本循環器学会/日本心不全学会. 2025年改訂版 心不全診療ガイドライン. 日本循環器学会, 2025.
- 厚生労働省. 社会医療診療行為別統計(NDBオープンデータ). 平成26年度〜令和3年度.
- 日本循環器学会. 2023年循環器疾患診療実態調査報告書. 日本循環器学会, 2024.
- 日本心臓リハビリテーション学会. 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン. 日本心臓リハビリテーション学会.
- 国立循環器病研究センター. 心血管リハビリテーション科診療内容. 国立循環器病研究センター.
執筆者情報
理学療法士
本記事は、2025年最新の文献・ガイドラインに基づいて作成しています。
免責事項
本記事の情報は一般的な内容です。個人の状態により適切な方法は異なります。
持病のある方、運動制限のある方は、医師にご相談ください。
症状が改善しない場合や悪化する場合は、速やかに医療機関を受診してください。