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てんかん発作に遭遇したら|理学療法士が伝える居合わせ時の対応

2026.09.28

豆知識

てんかん発作に遭遇したら|理学療法士が伝える居合わせ時の対応

電車で目の前の人が突然倒れてきたら、あなたはどうしますか。

実は、私自身が通勤中にその場面に居合わせました。てんかん発作と思われる状態で、周囲に動ける人はほとんどいませんでした。理学療法士として体の反応は理解していても、その場は緊張の連続でした。この記事では、てんかん発作に遭遇したときの対応を、体験と根拠の両面からお伝えします。

💡 この記事について。本記事は2026年9月時点の一般的な健康情報です。個別の症状への診断や治療を目的としたものではありません。緊急時は迷わず119番や医療機関にご連絡ください。

目次

  • その日、電車内で起きたこと
  • てんかん発作とは?遭遇したときにまず知るべきこと
  • てんかん発作でやってはいけない対応|口・抑え込みの誤解
  • いびき様呼吸は危険サイン|てんかん発作後の回復体位と気道確保
  • 119番を呼ぶ判断基準|てんかん重積状態と「5分」の意味
  • 一人で抱え込まない|発作に遭遇したときの役割分担
  • 救急隊に伝えたい観察記録|引き渡し時のチェックリスト
  • てんかん発作の対応に関するよくある質問(FAQ)
  • まとめ

その日、電車内で起きたこと

その日は、いつもと変わらない通勤の朝でした。座席に座っていると、目の前の人が突然こちらへ倒れてきたのです。呼びかけても反応はなく、意識は失われていました。白目のような状態で、両腕は硬く曲がっていました。全身が痙攣するような動きも見られました。

その方はお薬を持っておらず、同行の友人も持病を把握していませんでした。つまり、初めての発作だった可能性があります。経過の途中で、いびきのような大きな呼吸が現れました。その後、意識は半分ほど戻り、もうろうとした状態になりました。

その場でとった対応

私がまず行ったのは、安静を保つことでした。体をそっと横向きにし、自発呼吸を確認しました。横向きにしたのは、嘔吐物で喉が詰まるのを防ぐためです。口の中に物を入れることはしませんでした。体を無理に押さえ込むこともしませんでした。

もうろう状態になった後は、車椅子へ移しました。そして、駅員と友人へ引き継ぎました。その際、見えていた発作の様子や経過も伝えました。観察した情報が、その後の対応に役立つと考えたためです。

周囲の状況と、感じた課題

同行者は4人組でしたが、動きはばらばらでした。1人はそばにいて、1人は救急要請に動いていました。ただ、残りの動きははっきりしませんでした。車両内に医療関係者はいなさそうでした。多くの人は通勤前で、スマホを操作していました。

周囲の手助けは、非常ボタンを押す程度にとどまりました。実際に対応したのは、ほぼ私一人でした。車内では床のスペースを確保しづらい制約もありました。だからこそ、駅員と友人への引き渡しを選んだのです。この体験が、記事を書こうと思ったきっかけです。

てんかん発作とは?遭遇したときにまず知るべきこと

てんかんは、脳の神経細胞の過剰な活動で起こる病気です。国内ではおよそ100人に1人が持つとされています6。決して珍しい病気ではありません。だからこそ、街中や電車で発作に遭遇することもあり得ます。まずは、落ち着いて向き合う姿勢が大切です。

発作にはさまざまな型があります。全身が硬直し、その後にガクガクと震える型もあります。多くの発作は、数分以内に自然におさまるとされています2。慌てて体を揺すったり、動きを止めたりする必要はありません。まずは安全を確保し、様子を観察することが基本です。

てんかん発作でやってはいけない対応|口・抑え込みの誤解

発作を目にすると、良かれと思ってやってしまう誤解があります。ここでは、避けたい対応を整理します。理学療法士の視点でも、これらは体を傷つけるリスクが高い行為です。正しい知識が、二次的な怪我を防ぎます。

口の中に物を入れない

「舌を噛まないように」と物を入れるのは危険です。日本てんかん協会も、口に指や物を入れないよう呼びかけています2。無理にこじ開けると、歯を折る恐れがあります。口の中を傷つけたり、嘔吐を誘発することもあります3。かえって窒息につながる危険もあるのです。

体を無理に押さえ込まない

痙攣を止めようと押さえ込むのも避けたい対応です。発作は、外から力を加えても止まりません2。むしろ、抵抗によって関節や筋を痛める恐れがあります。大声で呼ぶ、叩く、ゆするといった行為も効果はありません。静かに見守ることが、最も安全な関わり方です。

してよかった初動もある

一方で、正しい初動もあります。周囲の危険な物を、そっと遠ざけることです。襟元やベルトをゆるめ、呼吸を楽にすることも有効です。頭の下に柔らかい物を敷き、頭部を守るのもよいでしょう。もうろう状態では、後方や側方から静かに見守ります3。

いびき様呼吸は危険サイン|てんかん発作後の回復体位と気道確保

体験の中で気になったのが、いびきのような呼吸でした。これは、気道の危険を知らせるサインのことがあります。理学療法士として、呼吸と姿勢の関係は重視する点です。ここは対応の分かれ目になるため、丁寧に解説します。

いびき様の呼吸が意味すること

意識が低下すると、舌のつけ根が喉の奥へ下がります。これを舌根沈下と呼びます。空気の通り道が狭くなり、いびき様の音が出ます。てんかん情報センターは、この呼吸への対応を示しています4。大きないびき様の呼吸には、注意が必要なのです。

さらに気をつけたいのが、音の変化です。ゼーゼーという音や、逆に呼吸音が急に消える場合です。呼吸音が消えるのは、むしろ危険なサインとされています8。空気が通っていない可能性があるためです。こうした変化は、緊急度が上がった合図と考えられます。

回復体位と気道確保の手順

発作がおさまったら、体を横向きにします。これを回復体位と呼びます。膝を軽く曲げ、肩を起こすと横に向けやすくなります2。もうろう状態で仰向けのままにするのは避けたい対応です。嘔吐物による窒息を防ぐためです。

JRC蘇生ガイドラインも、非外傷の意識障害では回復体位を勧めています5。いびき様の呼吸が続くときは、あごを上へ引き上げます4。これで気道が開きやすくなります。ただし、頭や首に外傷が疑われる場合は無理に動かしません。判断に迷えば、救急に相談してください。

119番を呼ぶ判断基準|てんかん重積状態と「5分」の意味

多くの発作は数分でおさまりますが、例外もあります。その見極めに役立つのが「5分」という目安です。ここでは、救急車を呼ぶ判断基準を整理します。迷ったときは、ためらわず要請してよい場面です。

てんかん重積状態とは

発作が長く続く状態を、てんかん重積状態と呼びます。けいれんが5分以上続く場合が、その目安です1。また、意識が戻らないまま発作を繰り返す状態も含まれます1。これは救急要請が必要な状態とされています。だからこそ、発作の時間を測ることが重要です。

迷わず119番を呼びたい場面

日本てんかん協会は、救急搬送が必要な場面を示しています2。意識が戻らないまま発作を繰り返す場合です。発作が5分以上止まらない場合も含まれます。加えて、初めての発作や外傷を伴う場合も要注意です。呼吸が不安定なときも、迷わず要請してください。

救急車を呼ぶか迷うときは、♯7119も選択肢です。医師や看護師などが、緊急度の判断を助けてくれます7。受診先に迷う場面については、症状別・何科に行けばいい?受診科の選び方もあわせてご覧ください。ただし、緊急性が高いと感じたら119番が優先です。

一人で抱え込まない|発作に遭遇したときの役割分担

私の体験で最もつらかったのは、対応がほぼ一人だった点です。人は多くいても、指示がなければ動きにくいものです。これは心理的な仕組みとしても知られています。人が多いほど、かえって手を出しにくくなる傾向があります。だからこそ、役割の振り方が鍵になります。

「あなた」と名指しで頼む

助けを求めるときは、特定の人を名指しするのが有効です。「あなたは119番へ通報してください」と伝えます。「あなたは駅員さんを呼んでください」と頼みます。役割が明確だと、人は動きやすくなります。消防の啓発でも、この呼びかけ方が勧められています7。

協力者が少なくても回せる順番

協力者が少ない場面もあります。そのときは、優先順位を持っておくと落ち着けます。まず安全の確保と、呼吸の確認です。次に、時間の記録と119番の通報です。そして、回復体位の保持へと移ります。一人でも、この順番を意識すれば動けます。

救急隊に伝えたい観察記録|引き渡し時のチェックリスト

救急隊や医療者への引き渡しでは、観察の情報が役立ちます。発作の様子は、診療の大切な手がかりになるためです3。難しく考えず、見えたことを伝えれば十分です。以下は、伝えられると役立つ項目です2。

  • 発作が始まった時刻
  • 発作が続いた時間の長さ
  • 体の動き方と、左右で差があったか
  • 目や顔が、どちらを向いていたか
  • 尿や便の失禁があったか
  • 転倒などによる外傷があったか
  • 意識が戻るまでにかかった時間

すべてを覚えるのは大変です。スマホのメモや時計を活用しましょう。可能なら、発作の様子を動画で記録する方法もあります。時間の記録だけでも、大きな助けになります。完璧を目指さず、できる範囲でかまいません。

てんかん発作の対応に関するよくある質問(FAQ)

てんかん発作に遭遇したら、まず何をすればいいですか?

まずは落ち着いて、周囲の安全を確保します。危険な物を遠ざけ、頭を守ってあげましょう。体を押さえ込んだり、口に物を入れるのは避けてください。多くの発作は数分でおさまるとされています。ただし、5分以上続く場合は救急要請の目安です。時間を測りながら見守ることが大切です。

発作中に口へ物を入れてはいけないのはなぜですか?

口に物を入れると、かえって危険が増すためです。歯を折ったり、口の中を傷つける恐れがあります。嘔吐を誘発し、窒息につながることもあります。舌を大きく噛み切る例はまれとされています。無理に開けず、そのまま見守るのが安全な対応です。

救急車(119番)を呼ぶ判断基準を教えてください。

けいれんが5分以上続く場合は、要請の目安です。意識が戻らないまま発作を繰り返す場合も同様です。初めての発作や、外傷を伴う場合も迷わず呼びましょう。呼吸が不安定なときも要請の対象です。迷ったときは♯7119で相談する方法もあります。

発作が終わった後、飲み物を飲ませてもいいですか?

意識がもうろうとしている間は、飲食を控えてください。うまく飲み込めず、誤嚥する恐れがあるためです。窒息や嘔吐の原因にもなり得ます。人や場所が分かるまで、しっかり付き添いましょう。完全に回復してから、少しずつ確認するのが安全です。

回復体位はどのように取ればいいですか?

発作がおさまったら、体をゆっくり横向きにします。膝を軽く曲げ、肩を起こすと向けやすくなります。この姿勢は、嘔吐物による窒息を防ぎやすくなります。いびき様の呼吸が続くときは、あごを上へ引き上げます。頭や首の外傷が疑われる場合は無理に動かさないでください。

まとめ

てんかん発作への対応は、特別な技術を必要としません。押さえ込まない、口に物を入れない、この2点がまず大切です。発作後は横向きにし、呼吸を見守ります。5分以上続くなら、迷わず119番を要請します。そして、時間と様子を記録して引き継ぎます。

体験を通して感じたのは、落ち着いて体を観察する力の大切さです。呼吸や姿勢のわずかな変化に気づくことが、次の一手につながります。これは、日々の暮らしの動作にも通じる感覚です。立つ、歩く、体を横に向ける、そうした動きの一つひとつに意味があります。

私たちは、そうした生活の動作を専門家と一対一で見つめ直すことを大切にしています。人目を気にせず、無理のないペースで、じっくり向き合える環境です。いざというときに動ける体と気持ちは、日頃の積み重ねから育ちます。まずは、自分の体の反応に目を向けることから始めてみませんか。転倒や怪我への備えは、日常生活で起こる怪我と正しい対処法も参考になります。

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免責事項

記事の目的と性質

本記事は、てんかん発作への対応に関する一般的な健康情報を提供することを目的としています。理学療法士の専門的視点から、科学的根拠に基づいた情報をわかりやすく解説していますが、以下の点にご注意ください。

本記事の限界

  • 個別診断の代替不可:本記事の情報は、あなた個人の症状や状態に対する診断・治療を提供するものではありません。
  • 医療行為ではない:記事内容は医療行為や医学的助言ではなく、一般的な情報提供です。
  • 自己判断のリスク:本記事の情報のみに基づく自己判断や自己対処は、症状の悪化や健康被害につながる可能性があります。

医療機関受診の推奨

以下の場合は、必ず医療機関を受診してください。発作が5分以上続く場合、意識の回復が遅い場合、外傷を伴う場合、呼吸が不安定な場合、そして初めての発作の場合です。緊急性が高いと感じたときは、迷わず119番へ連絡してください。

情報の正確性について

本記事は2026年9月時点の最新情報に基づいて作成されており、信頼できる医学的根拠や公的ガイドラインを参照しています。医学・医療情報は常に更新されるため、将来的に内容が変更される可能性があります。

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当施設は本記事の情報をできる限り正確かつ有用なものとするよう努めていますが、情報の完全性・正確性・有用性・適時性について保証するものではありません。本記事の情報を利用したことにより生じた損害について、当施設は一切の責任を負いかねます。


参考文献

1. 日本神経学会. てんかん診療ガイドライン2018 第8章 てんかん重積状態. 医学書院, 2018.

2. 日本てんかん協会. 発作の介助と観察. 公益社団法人日本てんかん協会.

3. 原稔枝. てんかん発作の対応. 国立精神・神経医療研究センター, 2021.

4. てんかん情報センター. 発作の観察と処置. 静岡てんかん・神経医療センター.

5. 日本蘇生協議会. JRC蘇生ガイドライン2020 第8章 ファーストエイド. 2021.

6. 厚生労働省 e-ヘルスネット. てんかん. 厚生労働省.

7. 総務省消防庁. 救急安心センター事業(♯7119). 総務省消防庁.

8. 日本救急医学会. 医学用語解説集「気道異物」. 日本救急医学会.


執筆者情報

本記事は、リペアルポ編集部が理学療法士監修のもとで作成しました。医療的な判断は、監修医師の確認方針に基づいています。科学的根拠に基づいた、信頼性の高い情報提供を心がけています。

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