夏バテの正体は”動かない悪循環”|理学療法士が解説する夏の活動量低下
2026.06.25
健康について
「夏になると、なんだか体がだるい」。多くの方が経験する夏バテです。
原因は、暑さや食欲の低下だけではありません。実は「動く量が減ること」も、大きく関わっています。理学療法士として体の使われ方を見てきた立場から、夏バテの意外なメカニズムを解説します。放っておくと、秋以降の不調にもつながります。
💡 この記事について:本記事は2026年6月時点の一般的な健康情報です。個別の診断や治療を目的としたものではありません。体調が続けて優れない場合は、医療機関にご相談ください。
目次
- 夏バテとは?よくある症状
- 夏バテと「活動量の低下」のつながり
- 夏に動く量が減ると体で起きること
- 身体活動ガイド2023が示す「座りすぎ」のリスク
- 動かない夏が、秋の痛みを招く理由
- 暑くても室内でできる夏バテ対策
- よくある質問(FAQ)
- まとめ
夏バテとは?よくある症状
夏バテは、正式な病名ではありません。夏の暑さによる、さまざまな不調の総称です。代表的なのが、全身のだるさです。ほかにも食欲の低下があります。寝つきの悪さや、やる気の出なさも含まれます。
背景には、自律神経の乱れがあると考えられています。屋外の暑さと、冷房の効いた室内。この温度差を、体は何度も調整します。その負担が積み重なり、疲れがたまります。さらに、暑さで眠りが浅くなることも重なります。
こうした不調は、誰にでも起こりえます。多くの方が、毎年のように感じる症状です。ただ、その先にある「ある変化」は見落とされがちです。それが、活動量の低下なんです。

夏バテと「活動量の低下」のつながり
暑いと、外に出るのがおっくうになります。だるさがあれば、なおさら動きません。すると一日の活動量が、ぐっと減ります。座っている時間や、横になる時間が増えます。これ自体は、自然な反応です。
問題は、これが「悪循環」になることです。動かないと、体力が落ちます。体力が落ちると、さらに動くのがつらくなります。つらいから、また動かなくなります。この繰り返しが、夏バテを長引かせます。
現場で多くの方を見てきた経験から言うと、夏に活動量が落ちた方ほど、回復に時間がかかる印象があります。だるさの正体は、暑さだけではありません。動かないことで進む体力低下も、見逃せない要素なんです。
夏に動く量が減ると体で起きること
筋肉が落ちやすくなる
筋肉は、使わないと落ちていきます。これは年齢を問わず起こります。動かない期間が続くと、筋力は確実に低下します。とくに脚の筋肉は、衰えが目立ちやすい部位です。立つ・歩くといった動作の土台が弱まります。
血流やめぐりが滞りやすくなる
脚の筋肉は「第二の心臓」と呼ばれます。歩くたびに血液を心臓へ戻すポンプの役割をします。動かないと、このポンプが働きません。すると、足のむくみやだるさが出やすくなります。筋肉の働きについてはふくらはぎの筋ポンプとむくみを解説した記事もご覧ください。
自律神経のリズムが乱れやすくなる
適度な活動は、生活リズムを整えます。日中に体を動かすと、夜の眠りが深まります。逆に動かない日が続くと、リズムが崩れます。眠りが浅くなり、だるさが増します。これも、夏バテを助長する流れです。
身体活動ガイド2023が示す「座りすぎ」のリスク

厚生労働省は、身体活動の指針を示しています。2023年版のガイドで、新しい考え方が加わりました。それが「座位行動」という概念です1。座ったり寝ころんだりする時間のことを指します。
このガイドでは、座りっぱなしを避けるよう勧めています1。立つのが難しい方にも、こう呼びかけています。じっとしている時間が長くなりすぎないように。少しでも体を動かすように1。「今より少し多く動く」が基本の考え方です。
夏は、この「座りすぎ」に陥りやすい季節です。暑さで外出が減り、座位行動が増えます。だからこそ、意識して立ち上がる時間が大切です。短い活動でも、積み重ねれば意味があります2。
動かない夏が、秋の痛みを招く理由
夏に動かないツケは、秋に出やすくなります。落ちた筋力は、すぐには戻りません。涼しくなって動き出すと、体がついてきません。すると、膝や腰に負担が集中します。これが、秋以降の痛みにつながることがあります。
使わない期間に筋力が落ちる状態は、廃用とも関わります。動かない時間が長いほど、回復には手間がかかります。詳しくは廃用症候群と筋力低下を数値で解説した記事もあわせてご覧ください。夏の過ごし方は、秋の体を左右するのです。
暑くても室内でできる夏バテ対策
「座りすぎ」を断ち切る小さな工夫
- 30分〜1時間に一度、立ち上がる習慣をつくる
- 家事や片づけを、こまめに体を動かす機会にする
- テレビを見ながら、足首を動かす
- 涼しい時間帯に、短い散歩を取り入れる
無理のない範囲で体を動かす
- 椅子に座ったまま、足踏みをする
- 立ち座りの動作を、ゆっくり数回くり返す
- こまめに水分を摂りながら行う
- だるさが強い日は、休むことを優先する
歩く量を保つことも、夏バテ対策になります。猛暑日の注意点もふまえて、無理なく続けましょう。1日の理想的な歩数を解説した記事も参考になります。
夏バテと自律神経・睡眠のつながり
夏バテの背景には、自律神経の乱れがあります。自律神経は、体温や内臓の働きを調整します。暑さと冷房の差で、その負担が増えます。負担が積み重なると、調節のバランスが崩れます。だるさや食欲の低下につながります。
ここで重要なのが、生活リズムです。自律神経は、昼と夜のリズムで整います。日中に活動し、夜に休む。この流れが、体のリズムを支えます。だからこそ、日中の活動が大切なのです。
暑い夜の睡眠を整える工夫
夏は、寝苦しさで眠りが浅くなりがちです。眠りが足りないと、日中のだるさが増します。すると、ますます動けなくなります。睡眠と活動量は、深くつながっています。まず、寝室の環境を整えましょう。
就寝中も、冷房で適切な室温を保ちます。暑さで何度も目が覚めるのを防げます。また、日中に体を動かすことも有効です。適度な疲れが、夜の眠りを深めます。良い睡眠が、翌日の活動を支えてくれます。
水分と栄養も「動ける体」の土台
動くためには、エネルギーが必要です。夏バテで食欲が落ちると、栄養が不足します。すると、活動の土台が弱くなります。食べられないから動けない。動かないから食欲も戻らない。これも一つの悪循環です。
無理にたくさん食べる必要はありません。少量でも、こまめに摂ることが大切です。消化のよいものから始めましょう。水分補給も、忘れずに行ってください。少しずつ食べ、少しずつ動く。この積み重ねが回復を助けます。
食べる・水を飲む・トイレに行く。これらも立派な生活動作です。一つひとつをきちんと行うことが、体を動かす機会になります。暑い時期こそ、こうした基本の動作を大切にしたいですね。

秋に後悔しないための夏の過ごし方
夏の過ごし方は、秋以降の体に影響します。動かない夏を過ごすと、筋力が落ちます。涼しくなって動き出すと、体がついてきません。
その結果、膝や腰に負担が集中します。秋の痛みやだるさにつながることがあります。だから、夏のうちからの対策が大切です。
といっても、特別な運動は要りません。大切なのは、活動量を保つことです。立つ、歩く、家事をする。日常の動作を続けましょう。
一日の中で、座りっぱなしの時間を減らします。1時間に一度は立ち上がりましょう。短い活動でも、積み重ねれば意味があります。
暑い日は、涼しい室内で体を動かします。冷房を活用すれば、熱中症のリスクも下げられます。安全に、無理なく続けることが基本です。
夏に体を動かし続けた人ほど、秋に元気でいられます。今日の小さな一歩が、数か月後の体をつくります。先を見すえて、過ごしていきたいですね。
体を動かす習慣は、一人ではくじけがちです。専門家と一緒なら、無理のないペースを保てます。生活動作を見直すことから、始めてみましょう。
よくある質問(FAQ)
夏バテのときは安静にしたほうがいい?
強い不調があるときは、休むことが優先です。ただし、動かなすぎも体力低下を招きます。だるさが軽い日は、短く体を動かしましょう。無理のない範囲で続けることが大切です。
夏の活動量低下は、どれくらいで影響が出る?
個人差はありますが、数日でも筋力は落ち始めます。とくに高齢の方は、変化が早く出やすい傾向です。だからこそ、毎日の小さな活動が役立ちます。少しずつでも動く習慣を保ちましょう。
食欲がない夏バテのときの活動はどうする?
激しい運動は必要ありません。立ち座りや足踏みで十分です。水分を摂りながら、こまめに体を動かします。食欲が戻らない日が続く場合は、受診を検討してください。
冷房の効いた室内での運動は安全?
室内は熱中症のリスクを下げやすい環境です。ただし、冷えすぎには注意しましょう。水分補給も忘れずに行ってください。体調を見ながら、無理なく続けるのが基本です。
夏バテが長引くときは何科に相談すべき?
まずは、かかりつけ医に相談するとよいでしょう。倦怠感が続く背景に、別の原因が隠れることもあります。自己判断で放置せず、専門家の確認を受けてください。
夏バテ予防に効果的な運動は?
激しい運動である必要はありません。涼しい時間の散歩が手軽でおすすめです。室内なら、立ち座りや足踏みでも十分です。大切なのは、毎日続けることです。短い時間でも積み重ねましょう。
夏に落ちた体力は、いつ戻る?
落ちた筋力は、すぐには戻りません。回復には、ある程度の時間がかかります。だからこそ、落とさない工夫が大切です。夏のうちから活動量を保ちましょう。涼しくなってからの再開も、無理なく進めます。
高齢の家族の夏バテで気をつけることは?
高齢の方は、活動量の低下が早く影響します。食事や水分が不足しやすい点にも注意します。座りっぱなしを避け、こまめに体を動かしましょう。気になる変化があれば、受診を検討してください。
まとめ|夏バテは「動かない悪循環」を断つことから
夏バテのだるさは、暑さだけが原因ではありません。動く量が減る「悪循環」も、大きく関わります。動かないと体力が落ち、さらに動けなくなります1。この流れを、早めに断ち切ることが大切です。
といっても、激しい運動は要りません。立つ、歩く、家事をする。そんな生活動作を、暑い季節も手放さないことです。無理のないペースで、専門家と一対一で。日常の動作をじっくり確認し直す。地味でも、その積み重ねが夏と秋の体を支えます。気になる症状が続く場合は、医療機関に相談してください。
免責事項
本記事は、夏バテに関する一般的な健康情報を提供することを目的としています。理学療法士の視点から科学的根拠に基づいて解説していますが、以下の点にご注意ください。
・個別診断の代替不可:本記事は、あなた個人の症状や状態に対する診断・治療を提供するものではありません。
・医療行為ではない:記事内容は医療行為や医学的助言ではなく、一般的な情報提供です。
・自己判断のリスク:本記事の情報のみに基づく自己判断は、症状の悪化につながる可能性があります。
以下の場合は、必ず医療機関を受診してください。倦怠感が長く続く場合。食欲不振が改善しない場合。日常生活に支障が出ている場合。持病や既往歴がある場合です。
本記事は2026年6月時点の最新情報に基づいて作成されています。医学・医療情報は更新されるため、将来的に内容が変更される可能性があります。本記事の情報を利用したことにより生じた損害について、運営者は一切の責任を負いかねます。
参考文献
1. 厚生労働省. 健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023(概要). 厚生労働省, 2024.
2. 厚生労働省. 健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023. 厚生労働省, 2024.
3. 厚生労働省. 熱中症予防のための情報・資料サイト. 厚生労働省.
4. 環境省. 熱中症予防情報サイト. 環境省.
5. 日本気象協会推進. 熱中症のメカニズム. 熱中症ゼロへ.
6. 日本気象協会推進. こんな人は特に注意!高齢者. 熱中症ゼロへ.
執筆者情報
本記事は、理学療法士をはじめとする国家資格者が監修するリペアルポ編集部が作成しました。活動量とリハビリの視点から、暮らしに役立つ健康情報をお届けしています。