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足の指が転ぶのを防いでいる?足趾把持力と転倒予防の関係を理学療法士が解説【2026年版】

2026.04.28

リハビリ

足の指が転ぶのを防いでいる?足趾把持力と転倒予防の関係を理学療法士が解説【2026年版】

「最近、段差でつまずくことが増えた」「何もないところで転びそうになった」。 そんな経験はありませんか?

実は、その原因のひとつが「足の指の力」にあるかもしれません。

足の指は、私たちが意識することなく地面をしっかりと捉え、バランスを支えています。しかし加齢とともにその力は低下し、転倒リスクを高めることが研究で明らかになっています1

本記事では、理学療法士の視点から「足趾把持力(そくしはじりょく)」と転倒予防の関係を解説します。ご自身やご家族の健康のために、ぜひ最後までお読みください。

💡 この記事について

本記事で紹介するセルフチェックや体操は一般的な健康情報です。痛みや持病のある方は、必ず医療機関にご相談のうえ実施してください。


目次

足の指が「転倒予防」に関係するとは?
転倒が高齢者にとって深刻な理由
足趾把持力とは何か?
足の指の力が低下するメカニズム
足趾把持力を自分でチェックする方法
今日からできる足指トレーニング3選
よくある質問(FAQ)
まとめ


足の指が「転倒予防」に関係するとは?

歩いたり立ったりするとき、私たちの体重は足の裏全体で支えられています。

そのなかで足の指(足趾)は、地面を「グッ」とつかむことで重心のブレを瞬時に修正しています。

理学療法士の立場から見ると、足の指は「最後の砦(とりで)」とも言えます。

つまずきかけたとき、体がふらついたとき。 そのわずかな瞬間に足の指が地面を捉えることで、転倒を未然に防いでいるのです。

この力を「足趾把持力(そくしはじりょく)」と言います。

地域在住高齢者51名を対象とした研究では、足趾把持力と転倒リスクに有意な相関関係が認められています2。 相関係数はr>0.47(p<0.01)と強い関連でした。

つまり、足の指の力が弱いほど、転倒しやすい傾向があると考えられています。


転倒が高齢者にとって深刻な理由

「転ぶくらい、誰でもあること」と思っていませんか?

実はそう軽く見ることができない現実があります。

令和4年国民生活基礎調査によると、骨折・転倒は要介護原因の第3位(13.0%)です3

地域高齢者の少なくとも3人に1人が毎年転倒しているとされています4。 さらに転倒した5人に1人は重症を負うと報告されています。

転倒が怖いのは、転んだその瞬間だけではありません。

転倒による骨折——特に大腿骨(太ももの骨)の骨折——は長期入院の原因となります。

入院中に体を動かせない期間が続くと、筋肉や体力がみるみる落ちていきます。

その結果、「骨折が治っても歩けなくなってしまった」というケースは決して珍しくありません。

転倒は「老化現象だから仕方ない」ではなく、「適切な対策で防げるリスク」なのです。


足趾把持力とは何か?

「足趾把持力」とは、足の5本の指で地面や物をつかむ力のことです。

専門的には、足の指を曲げる筋肉が関わっています。 主に短趾屈筋(たんしくっきん)や長趾屈筋(ちょうしくっきん)です。

この力は、立ち上がり動作・歩行・方向転換など、日常生活のあらゆる動きの「土台」となっています。

足の指が働くシーン

足趾把持力が特に重要になる場面は以下のとおりです。

  • 歩き始め・歩行中の地面の蹴り出し
  • 段差を踏み越えるとき
  • 急な方向転換をするとき
  • 不整地(砂利道・芝生など)を歩くとき
  • ふらついたときに体勢を立て直すとき

日本フットケア学会の研究では、足趾屈曲力とバランス能力に有意な関連があると報告されています5

足の指は「小さいけれど重要」な器官なのです。


足の指の力が低下するメカニズム

なぜ加齢とともに足趾把持力は落ちてしまうのでしょうか?

理由はいくつか考えられています。

①加齢による筋肉量の低下

筋肉は40〜50代以降から少しずつ減少し始めます。

これをサルコペニアと呼びます。

足の指の筋肉も例外ではなく、気づかないうちに弱くなっていきます。

②「使われない」ことによる廃用

現代の生活では、足の指を積極的に使う機会が少なくなっています。

クッション性の高い靴や、平らな室内環境が続くと、足の指が「休眠状態」になりがちです。

使わない筋肉は衰える——これは体のどの部位にも当てはまる原則です。

③浮き趾・外反母趾などの変形

足の指が地面に接していない「浮き趾(うきゆび)」の状態では、把持力が働きません。

外反母趾や扁平足も足趾の機能低下につながる可能性があると考えられています5

見た目の変形だけでなく、機能面への影響にも目を向けることが大切です。

④感覚機能の低下

足の裏の感覚(体性感覚)は、地面の状態を脳に伝える重要な役割を担っています。

加齢や糖尿病などにより足の感覚が鈍くなると、地面からの情報がうまく処理できなくなります。

その結果、足の指が適切なタイミングで反応しにくくなる可能性があります。

なお、歩行機能の変化と転倒リスクの関係については、歩幅が狭くなったら黄色信号!認知症リスクと歩行の科学的関係でも詳しく解説しています。


足趾把持力を自分でチェックする方法

「自分の足の指の力は大丈夫かな?」と気になったら、以下の簡単なチェックを試してみてください。

特別な器具は不要です。

チェック①:タオルつかみテスト

やり方
床にタオルを1枚置き、足の指だけでタオルをたぐり寄せます。

判定の目安
5本の指が均等に動かせるか確認します。特定の指だけ動かせない、または全く動かせない場合は、把持力が低下している可能性があります。

チェック②:片脚立ちテスト

やり方
壁や机の近くに立ち、片足を床から少し浮かせて立ちます。

判定の目安
60歳未満なら15秒以上、60歳以上なら10秒以上を目安にしてください。 目を開けた状態で立ち続けられるかを確認します。短い方はバランス機能の低下が疑われます。

なお、チェックはあくまで目安です。心配な症状がある場合は、理学療法士や医師への相談をおすすめします。


今日からできる足指トレーニング3選

足趾把持力は、適切なトレーニングで維持・改善できる可能性があります。

成人女性の研究では、30〜50代でも足趾把持筋力とバランス能力に有意な相関が認められています6。 若いうちから取り組む意義があるとされています。

以下の3つは、椅子に座ったままできる安全なトレーニングです。

①タオルギャザー

床に広げたタオルを、足の指を使ってたぐり寄せます。

回数の目安:左右それぞれ10〜15回、1日2〜3セット。

足の裏の筋肉全体を動員できる、足趾トレーニングの代表的な方法です。

②足指じゃんけん

足の指で「グー・チョキ・パー」をつくります。

グー:全部の指を丸めてにぎる。
チョキ:親指だけ上に持ち上げ、残りは下に曲げる。
パー:5本の指を全て広げる。

回数の目安:各形10回ずつ、1日2セット。

個別の指の動きを鍛えることで、細かなバランス調整能力の向上が期待できます。

③足指のストレッチ(伸ばし&丸め)

足の指を思い切り上に反らせて3秒キープし、次に思い切り丸めて3秒キープします。

回数の目安:10回1セット、朝・夜の2回。

血流を改善しながら、筋肉の柔軟性と可動域を同時に高められます。

トレーニング時の注意点

足や膝に痛みがある場合は、無理に行わないでください。

糖尿病や神経疾患をお持ちの方は、事前に医師や理学療法士にご相談のうえ実施してください。

運動の継続に関しては、運動能力は何歳からでも上げられるもあわせてご覧ください。


よくある質問(FAQ)

Q1. 何歳から足趾把持力のトレーニングを始めるべきですか?

年齢に関わらず、早いほど良いと考えられています。研究では30〜50代女性でも足趾把持筋力とバランス能力の相関が認められています。 高齢になる前からの予防的な取り組みが重要とされています。まずは毎日の習慣として、足指じゃんけんなどの簡単な運動から始めてみてください。

Q2. 足の指を鍛えると、すぐに効果が出ますか?

継続的なトレーニングによって数週間から数カ月で変化を感じる方もいるとされています。ただし、効果の現れ方には差がありますので、焦らず続けることが大切です。大切なのは短期間で結果を求めるのではなく、日常の習慣として無理なく続けることです。

Q3. 外反母趾があっても足指トレーニングはできますか?

外反母趾がある場合でも、痛みが強くない範囲でのトレーニングは一般的に実施できると考えられています。ただし、変形の程度や痛みの状態によっては、専門家の指導のもとで行うことが安全です。痛みが気になる場合は、まず整形外科や理学療法士に相談することをおすすめします。

Q4. 高齢の親に転倒予防として何が最もおすすめですか?

まずは生活環境の見直し(段差の解消、滑りやすい床への対策など)と、継続できる運動習慣の確立が重要です。足指トレーニングに加え、下肢全体の筋力・バランス訓練を組み合わせることが効果的と考えられています。かかりつけ医や理学療法士に相談し、本人に合ったプログラムを検討されることをおすすめします。

Q5. 靴の選び方も転倒予防に関係しますか?

関係すると考えられています。研究では、靴下のみでの歩行は転倒関与の可能性が最も高く、適切な靴の重要性が示されています7。足に合ったサイズで、かかとがしっかり固定され、底の薄すぎないシューズを選ぶことが基本とされています。

Q6. フレイルと足の指の力は関係しますか?

関係があると考えられています。フレイル(虚弱)は全身の筋力・機能低下を伴うため、足趾把持力の低下もその一部として生じます。フレイル予防の観点からも、足の指を含む下肢全体の機能維持に取り組むことが重要です。フレイルについては、フレイル・プレフレイルとは?気づいていない人が多い虚弱の前兆サインでも詳しく解説しています。


まとめ

足の指は、私たちが「転ばないための最後の砦」として、日々静かに働き続けています。

その力(足趾把持力)が低下すると、転倒リスクが高まることが研究で示されています。

転倒は骨折・要介護につながる深刻なリスクです。 しかし、適切なトレーニングと生活習慣で予防できる可能性があります。

まずは今日から、足指じゃんけんやタオルギャザーを習慣に取り入れてみてはいかがでしょうか。

ただし、足・膝・股関節に痛みがある方や、転倒が続いている方はご注意ください。 セルフケアだけでなく、専門家への相談も大切です。

加齢による機能低下や転倒後のリハビリについては、リペアルポでも対応しています。 術後機能低下リハビリ加齢・関節の痛みリハビリをご覧ください。

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免責事項

記事の目的と性質

本記事は、足趾把持力と転倒予防に関する一般的な健康情報を提供することを目的としています。理学療法士の専門的視点から、科学的根拠に基づいた情報をわかりやすく解説していますが、以下の点にご注意ください。

本記事の限界

個別診断の代替不可:本記事の情報は、あなた個人の症状や状態に対する診断・治療を提供するものではありません。

医療行為ではない:記事内容は医療行為や医学的助言ではなく、一般的な情報提供です。

自己判断のリスク:本記事の情報のみに基づく自己判断や自己治療は、症状の悪化や健康被害につながる可能性があります。

医療機関受診の推奨

以下の場合は、必ず医療機関を受診してください。

  • 転倒や痛みが続いている場合
  • 症状が悪化している場合
  • 日常生活に支障が出ている場合
  • 持病や既往歴がある場合

情報の正確性について

本記事は2026年4月時点の最新情報に基づいて作成されており、信頼できる医学的根拠や公的ガイドラインを参照しています。医学・医療情報は常に更新されるため、将来的に内容が変更される可能性があります。

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当施設は、本記事の情報をできる限り正確かつ有用なものとするよう努めていますが、情報の完全性・正確性・有用性・適時性について保証するものではありません。本記事の情報を利用したことにより生じた損害について、当施設は一切の責任を負いかねます。


参考文献

1. 新井智之, 藤田博暁, 細井俊希 他. 地域在住高齢者における足趾把持力の年齢・性別および運動機能との関連. 理学療法学. 2011; 38(7): 489-496.

2. 能登真一, 田口孝行, 他. 地域在住男性高齢者の転倒リスクに関連するロコモ評価・足趾運動機能の検討. 日本健康科学学会誌. 2020; 16(2): 63.

3. 厚生労働省. 令和4年 国民生活基礎調査の概要. 2023.

4. 大須賀洋祐. 地域高齢者における転倒予防対策の現状と今後の課題. 健康長寿ネット. 2024.

5. 鈴木達也, 他. 足趾屈曲力と転倒リスク評価との関係. 日本フットケア学会雑誌. 2019; 17(1): 33-37.

6. 若山育郎, 他. 成人女性における足趾把持筋力の年代別比較とバランス能力との関連. 理学療法学術大会. 2013.

7. Menant JC, et al. Footwear and falls in older adults. 介護施設における転倒と履き物の関連(文献紹介). 2024.


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