痛みの種類とメカニズムを理学療法士が解説|あなたの痛みはどのタイプ?
2026.08.25
健康について
💡 この記事について
本記事は、痛みの種類・メカニズム・原因に関する一般的な健康情報を提供するものです。個別の症状に対する診断・治療の代わりとなるものではありません。気になる症状がある場合は、必ず医療機関を受診してください。
「ずっと痛みが続いているのに、病院でははっきりした原因が分からないと言われた」「同じ場所を痛めたはずなのに、友人はすぐ治ったのに自分はなかなか良くならない」
こんな経験をしたことはありませんか?
実は、痛みには種類があります。そしてその種類によって、メカニズムも、改善のアプローチも大きく変わるんです。
この記事では、理学療法士の視点から、痛みの3つの分類と、それぞれのメカニズム・特徴を分かりやすく解説します。自分の痛みがどのタイプなのかを知ることが、改善への第一歩になります。
目次
- そもそも「痛み」とは何か?
- 痛みの種類①:侵害受容性疼痛
- 痛みの種類②:神経障害性疼痛
- 痛みの種類③:痛覚変調性疼痛
- 3つの痛みを比較表で整理
- 痛みの種類ごとの改善アプローチ
- 慢性的な痛みと再生医療の選択肢
- こんな症状がある場合は早めに受診を
- よくある質問(FAQ)
- まとめ
そもそも「痛み」とは何か?
国際疼痛学会(IASP)は2020年、41年ぶりに痛みの定義を改訂しました。それによると、痛みとは「実際の、または潜在的な組織損傷に関連した不快な感覚的・感情的体験」とされています。
この定義で重要なのは、痛みは感覚だけでなく、感情や経験にも影響されるという点です。
つまり、同じケガをしても、その人の心理状態や生活環境によって、感じる痛みの強さは変わります。これは「気のせい」ではなく、科学的に証明された事実なんです。
また、痛みには大きく2つの側面があります。
- 急性痛:ケガや病気の直後に起こる、警告としての痛み
- 慢性痛:3か月以上続く痛み。急性痛とは異なるメカニズムが働いています
日本の慢性疼痛患者は推計約2,315万人とされています。成人人口の約22.5%にあたる数字です(日本医療政策機構, 2023)。腰痛は男女ともに自覚症状のトップでもあります(厚生労働省「令和4年国民生活基礎調査」)。
痛みを「ただ我慢するもの」と捉えるのではなく、その種類とメカニズムを理解することが、改善への近道です。

痛みの種類①:侵害受容性疼痛
「現場で起きている痛み」
侵害受容性疼痛は、最も一般的な痛みのタイプです。
皮膚・筋肉・関節・骨などの組織が傷つくと、そこにある「侵害受容器(痛みセンサー)」が刺激されます。その信号が神経を通じて脳に届き、「痛い」と感じる仕組みです。
切り傷、打撲、ねんざ、骨折、筋肉痛——日常でよく経験するこれらの痛みは、ほとんどがこのタイプです。
侵害受容性疼痛の特徴
- 痛む場所と、実際に傷ついている場所が一致している
- 「ズキズキ」「ジンジン」と表現されることが多い
- 圧迫したり、特定の動作をすると痛みが再現される
- 組織が回復するにつれて、痛みも改善していくのが基本
発痛物質のメカニズム
組織が傷つくと、その「現場」からプロスタグランジンやブラジキニンといった発痛物質が放出されます。これが侵害受容器をさらに刺激することで、痛みが増幅されます。
一般的な鎮痛薬(NSAIDs)は、この発痛物質の生成を抑えることで効果を発揮します。つまり、侵害受容性疼痛には通常の痛み止めが比較的有効です。
侵害受容性疼痛の代表例
- 変形性膝関節症(軟骨のすり減りによる関節の痛み)
- 椎間板ヘルニア(椎間板が神経を圧迫する痛み)
- 筋・腱の炎症(腱炎、筋膜炎など)
- 骨折、ねんざ、打撲
痛みの種類②:神経障害性疼痛
「神経そのものが傷ついている痛み」
神経障害性疼痛は、痛みを伝える神経そのものが損傷・圧迫されることで生じます。
侵害受容性疼痛との大きな違いは、「現場(組織)に問題がなくても痛む」点です。神経経路のどこかが傷ついていれば、その神経が支配する領域に痛みやしびれが出ます。
神経障害性疼痛の特徴
- 「ビリビリ」「チクチク」「電気が走るような」という表現が多い
- 安静にしていても痛みが続く(自発痛)
- 軽く触れただけで強い痛みを感じる(アロディニア)
- 通常の鎮痛薬が効きにくい
- 長期間にわたって痛みが続きやすい
なぜ通常の痛み止めが効かないのか
神経障害性疼痛では、神経内のイオンチャネルの変化やNMDA受容体の活性化など、複雑なメカニズムが働いています。このため、炎症を抑えるNSAIDsはほとんど効果がありません。代わりに、抗てんかん薬(プレガバリン・ミロガバリンなど)や抗うつ薬が治療に使われることがあります。
また、神経が自然に修復されるまでに、長いケースでは数年かかることもあります。
神経障害性疼痛の代表例
- 坐骨神経痛(ヘルニアや脊柱管狭窄症による神経圧迫)
- 帯状疱疹後神経痛
- 糖尿病性神経障害
- 脊髄損傷後の疼痛
⚠️ 神経障害性疼痛が疑われる場合は、自己判断せず早めに医療機関を受診してください。適切な診断と治療薬の選択が重要です。
痛みの種類③:痛覚変調性疼痛
最新の概念「脳が痛みを学習してしまった状態」
痛覚変調性疼痛(英語:nociplastic pain)は、比較的新しい概念です。2021年に日本痛み関連学会連合が採用しました。
侵害受容性疼痛のように「組織の異常」もない。神経障害性疼痛のように「神経の損傷」もない。それなのに痛みが続く——そのような状態を指します。
一言で表すなら、「痛みの警報装置が過敏になりすぎている」状態です。
なぜ痛みの警報が誤作動するのか
痛みの刺激が繰り返されると、脳や脊髄が「痛みを学習」してしまいます。これを中枢感作と呼びます。
本来なら痛くないはずの刺激にも過剰に反応するようになります。軽い圧力や温度変化でも強い痛みを感じ、実際の組織の状態とは関係なく痛みが続くようになります。
痛覚変調性疼痛の特徴
- 痛みが広範囲に及ぶ、または日によって場所が変わる
- 天候の変化やストレスで痛みが強くなる
- 疲労感、睡眠障害、感覚過敏を伴うことがある
- 検査をしても「異常なし」と言われることが多い
- 慢性的な痛みの多くに、この要素が関わっていると考えられている
理学療法士が特に注目する理由
痛覚変調性疼痛は、適切なリハビリと生活習慣の改善によって回復が期待できる状態です。
理学療法士が「痛みを怖がらずに、少しずつ動いていきましょう」と伝えるのには、理由があります。過度な安静は中枢感作を悪化させ、痛みへの過敏性をさらに高めてしまう可能性があるためです。
運動や段階的な活動の再開は、脳の痛みの処理システムを正常化する助けになると考えられています。
痛覚変調性疼痛の代表例
- 線維筋痛症
- 非特異的慢性腰痛(検査で異常が見つからない腰痛)
- 複合性局所疼痛症候群(CRPS)
- 過敏性腸症候群
3つの痛みを比較表で整理
| 侵害受容性疼痛 | 神経障害性疼痛 | 痛覚変調性疼痛 | |
|---|---|---|---|
| 原因 | 組織の損傷・炎症 | 神経の損傷・圧迫 | 中枢神経系の過敏化 |
| 痛みの質 | ズキズキ・ジンジン | ビリビリ・電気が走る | 広範囲・場所が変わる |
| 痛む場所 | 損傷部位と一致 | 神経支配領域 | 広範・不定 |
| 検査所見 | 異常あり | 異常あり(神経) | 異常なし |
| 通常の鎮痛薬 | 有効 | 無効なことが多い | 部分的 |
| 代表例 | 捻挫・変形性関節症 | 坐骨神経痛・帯状疱疹後 | 線維筋痛症・慢性腰痛 |
| 改善の見通し | 比較的良好 | 時間がかかる | リハビリで改善期待 |

痛みの種類ごとの改善アプローチ
侵害受容性疼痛へのアプローチ
組織の修復を助けることが中心になります。
- 急性期は炎症を適切にコントロール(過度な安静は避ける)
- 損傷部位の負担を減らしながら、段階的に動きを回復させる
- 筋力強化や関節の安定性を高めるリハビリ
- 重症例では、組織の再生を促す再生医療の検討も選択肢のひとつ
神経障害性疼痛へのアプローチ
神経の回復には時間がかかることを理解しながら、焦らず対処することが大切です。
- 医師による適切な薬物療法(プレガバリン等)
- 痛みをかばうことで生じる姿勢・動作の崩れを整えるリハビリ
- 血流改善・神経栄養(ビタミンB12等)のサポート
- 神経の圧迫が原因の場合は、その解除を検討
痛覚変調性疼痛へのアプローチ
「動けない・触れない」という痛みへの恐怖から抜け出すことが重要です。
- 段階的な運動療法:痛みを怖がらず、少しずつ活動量を増やす
- 認知行動療法:痛みの捉え方・対処行動を修正する
- 睡眠・ストレス管理:心理社会的因子へのアプローチ
- 社会参加や日常活動の回復を段階的に目指す
💡 ポイント:3種類の痛みは、実際には重なり合っていることがほとんどです。理学療法士は、どの要素が主体かを評価しながら、その人に合わせたアプローチを組み立てます。
慢性的な痛みと再生医療の選択肢
侵害受容性疼痛の中でも、変形性関節症や半月板損傷・腱板損傷などは、組織そのものが傷ついている状態です。従来の保存療法だけでは改善に限界があることがあります。
そのような方の選択肢のひとつとして、近年注目されているのが再生医療です。
リペアルポが連携するリペアセルクリニックでは、厚生労働省に再生医療提供計画を届出・受理しています。以下の治療を提供しています。
幹細胞治療(自己脂肪由来幹細胞)
ご自身の脂肪から採取した幹細胞を培養し、患部に投与する治療法です。傷ついた組織の修復・再生を促すことが期待されています。変形性関節症(膝・股関節・肩)や慢性疼痛、脊髄損傷などが主な対象です。ご自身の細胞を使うため、拒絶反応のリスクが低いことも特徴のひとつです。
PRP療法(多血小板血漿)
ご自身の血液から血小板を濃縮したPRPを患部に注射する治療法です。血小板に含まれる成長因子が、組織の修復を助けると考えられています。日帰りで治療が完結できる点も利点です。
ただし、再生医療はすべての症状に適応となるわけではありません。また、効果には個人差があります。ご自身の症状が対象となるかどうかは、専門の医師にご相談ください。
再生医療について詳しくは、リペアセルクリニックの再生医療ページをご覧ください。
こんな症状がある場合は早めに受診を
以下のような症状がある場合は、自己判断せず、早めに医療機関を受診してください。
- 安静にしていても強い痛みが続く
- 手足にしびれや麻痺がある
- 発熱・体重減少・倦怠感を伴う痛み
- 痛みが急激に悪化している
- 排尿・排便に障害が出ている
- 1週間以上改善がみられない
特にしびれ・麻痺・排泄障害を伴う痛みは、緊急性が高い場合があります。速やかに受診してください。

よくある質問(FAQ)
Q1. 痛みが続いているのに検査で異常なしと言われました。これは気のせいですか?
A. 決して気のせいではありません。「痛覚変調性疼痛」のように、組織や神経に明らかな異常がなくても、中枢神経系の過敏化によって本物の痛みが生じることがあります。痛みは主観的な体験であり、個人の感情・経験によっても変化します(IASP, 2020)。「異常なし=痛みがない」ではありません。気になる場合は、ペインクリニックや整形外科に相談することをおすすめします。
Q2. 同じケガをしたのに、自分だけ痛みが長引くのはなぜですか?
A. 痛みの感じ方は、身体的な状態だけでなく、睡眠・ストレス・不安・過去の痛み体験など、多くの要因が影響します。これを「生物心理社会モデル」と呼びます。痛みが長引く場合、心理的・社会的な要因が関わっていることも多く、身体のリハビリとともに、そちらへのアプローチが重要になることがあります。
Q3. 神経障害性疼痛は治りますか?
A. 原因によって異なります。神経は回復に時間がかかることが多く、長い場合は数年かかることもあります。ただし、適切な治療(薬物療法・神経ブロック・リハビリなど)を継続することで、症状が改善するケースも多くあります。自己判断せず、専門医に相談することをおすすめします。
Q4. ストレスで痛みが強くなるのはなぜですか?
A. ストレスや不安は、脳の痛み抑制システムを弱める作用があると考えられています。とくに痛覚変調性疼痛では、心理社会的因子が痛みに大きく影響します。睡眠不足や過労も同様に痛みを増幅させる要因となります。痛みの管理には、身体的なアプローチとともに、ストレスや睡眠の改善も重要です。
Q5. 痛み止めを飲み続けていいですか?
A. 痛みの種類と原因によって、適切な薬は異なります。侵害受容性疼痛には一般的な鎮痛薬が有効なことがありますが、神経障害性疼痛には別の薬が必要な場合があります。また、長期の鎮痛薬使用は胃腸障害などの副作用リスクもあります。薬の選択と使用期間は、必ず医師に相談してください。
Q6. 「慢性痛」はどこに相談すればいいですか?
A. まずはかかりつけ医や整形外科への相談が一般的です。複合的な要因が疑われる場合は、ペインクリニック(痛み専門外来)への紹介を検討してもらうと良いでしょう。リハビリの観点からは、理学療法士への相談も有効です。一人で抱え込まず、専門家に相談することが改善への第一歩です。
Q7. 手術を勧められましたが、ほかに選択肢はありますか?
A. 症状や病態によりますが、手術以外の選択肢として、保存療法(薬物療法・リハビリ)や、近年では再生医療(幹細胞治療・PRP療法)という選択肢もあります。ただし、すべての症状に適応となるわけではないため、専門の医師に相談した上で、ご自身に合った治療法を選ぶことが大切です。
まとめ
痛みの種類は大きく3つに分けられます。
- 侵害受容性疼痛:組織が傷ついていることで生じる「現場の痛み」
- 神経障害性疼痛:神経そのものが傷ついていることで生じる痛み
- 痛覚変調性疼痛:脳や脊髄が痛みに過敏になった状態(中枢感作)
それぞれメカニズムが異なるため、適切な対処法も変わります。「なかなか痛みが取れない」と感じている場合、その痛みがどのタイプかを専門家と一緒に整理することが、改善の糸口になるかもしれません。
痛みを「我慢するもの」と思わず、適切に専門家へ相談することをおすすめします。痛みが続く場合、または日常生活に支障が出ている場合は、早めに医療機関を受診してください。
免責事項
記事の目的と性質
本記事は、痛みの種類・メカニズム・原因に関する一般的な健康情報を提供することを目的としています。理学療法士の専門的視点から、科学的根拠に基づいた情報をわかりやすく解説していますが、以下の点にご注意ください。
本記事の限界
- 個別診断の代替不可:本記事の情報は、あなた個人の症状や状態に対する診断・治療を提供するものではありません
- 医療行為ではない:記事内容は医療行為や医学的助言ではなく、一般的な情報提供です
- 自己判断のリスク:本記事の情報のみに基づく自己判断や自己治療は、症状の悪化や重大な健康被害につながる可能性があります
医療機関受診の推奨
以下の場合は、必ず医療機関を受診してください:
- 痛みや不調が続いている場合
- 症状が悪化している場合
- 日常生活に支障が出ている場合
- しびれ・麻痺・排泄障害を伴う場合
- 持病や既往歴がある場合
情報の正確性について
本記事は2026年3月時点の最新情報に基づいて作成しており、国際疼痛学会(IASP)の定義(2020年改訂)、日本痛み関連学会連合の分類(2021年)、および厚生労働省・日本ペインクリニック学会のガイドラインを参照しています。医学・医療情報は常に更新されており、将来的に内容が変更される可能性があります。
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参考文献
- 国際疼痛学会(IASP). IASP Terminology(痛みの定義2020年改訂). https://www.iasp-pain.org/resources/terminology/
- 厚生労働省・日本ペインクリニック学会. 慢性疼痛治療ガイドライン. 2021.
- 日本ペインクリニック学会. 神経障害性疼痛薬物療法ガイドライン 改訂第2版. 真興交易医書出版部, 2016.
- 日本腰痛学会. 痛みの分類(侵害受容性・神経障害性・痛覚変調性疼痛).
- 日本医療政策機構(HGPI). 集学的な痛み診療・支援体制の均てん化に向けて. 2023.
- 厚生労働省. 令和4年 国民生活基礎調査. 2022.
執筆者情報
本記事は、理学療法士の専門的視点から作成しました。国際疼痛学会(IASP)の最新定義(2020年改訂)および日本の最新ガイドラインに基づき、科学的根拠のある情報提供を心がけています。