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腰の痛みで毎日がつらい方へ|理学療法士が解説する腰痛改善へのステップ

「朝起きたとき、腰がこわばって動き出すのがつらい」
「長時間座っていると、立ち上がるときに痛みが走る」
「庭仕事や掃除のあと、腰が重くてソファから動けない」

もしこんな経験に心当たりがあるなら、この記事を読んでみてください。

腰の痛みは、日常の何気ない動作を奪っていきます。
孫と遊びたいのに、しゃがむのが怖い。
趣味のガーデニングも、腰を気にしながらになってしまう。

でも、諦める必要はありません。
適切な知識と対処法を知ることで、多くの方が痛みと上手に付き合い、活動的な生活を取り戻しています。


令和4年の厚生労働省国民生活基礎調査によると、腰痛は男女ともに自覚症状の第1位です。日本では約2,800万人、つまり国民の4人に1人が腰痛に悩んでいるといわれています。

特に注目すべきは、年齢とともに腰痛の有病率が上昇する点です。

  • 30代以降から増加が顕著に
  • 70代以上では約7割の方が腰痛を経験
  • 男性では有訴者率91.6(人口千対)で第1位
  • 女性では有訴者率111.9(人口千対)で第2位(第1位は肩こり)

「歳のせいだから仕方ない」そう思われるかもしれません。でも、適切な対処をすることで、症状を和らげることは可能です。


腰痛を放置すると、悪循環に陥りやすくなります。

痛いから動かない⇨筋力が落ちる⇨もっと動けなくなる⇨さらに痛みが強くなる

この「悪循環」に一度入ってしまうと、回復に時間がかかります。

腰痛は単なる痛みだけでなく、生活の質全体に影響を与えます。

  • 日常動作(立つ、座る、歩く)が困難に
  • 趣味や外出を控えるようになる
  • 睡眠の質が低下する
  • 気分が落ち込みやすくなる
  • 家族に負担をかけることへの罪悪感

 2019年の東京大学と日本臓器製薬の共同研究によると、腰痛による経済的損失は年間3兆円と試算されています。

だからこそ、「そのうち」ではなく「今」対処することが大切なんです。


従来の情報:「腰痛の約85%は原因不明」

最新情報(2019年改訂版):「丁寧な問診と診察により、75%以上で診断が可能

つまり、原因が特定できない腰痛は約22%程度で、適切な診察により多くの腰痛で原因部位を特定できるようになりました。

腰痛診療ガイドライン2019(改訂第2版)では、腰痛を以下の3つに分類しています。

すぐに医療機関を受診すべき重篤な疾患

主な原因

  • がんの骨転移
  • 骨粗鬆症による圧迫骨折
  • 感染症(化膿性脊椎炎など)
  • 重篤な内臓疾患(腹部大動脈瘤、解離性大動脈瘤など)

割合:全腰痛の約1〜2%

危険信号のチェックリスト

  • ⚠ 発症年齢が20歳以下または55歳以上
  • ⚠ 原因不明の体重減少
  • ⚠ 安静にしていても痛みが続く
  • ⚠ 発熱を伴う
  • ⚠ 排尿・排便障害
  • ⚠ 足の麻痺や筋力低下
  • ⚠ がんの既往歴
  • ⚠ 外傷歴(転倒、事故など)

これらの症状がある場合は、早急に医療機関を受診してください。


画像検査で原因が特定できる腰痛

背骨の骨と骨の間にある椎間板が飛び出し、神経を圧迫する状態です。

主な症状

  • 腰痛
  • お尻から足にかけての痛みやしびれ(坐骨神経痛)
  • 前かがみの姿勢で痛みが増強
  • 咳やくしゃみで痛みが悪化

好発年齢:20〜40歳代の働き盛り

割合:全腰痛の約4〜5%

予後について
画像検査でヘルニアが確認されても、必ずしも症状があるとは限りません。保存療法(手術をしない治療)で約7〜8割の方が3ヶ月程度で自然に症状が軽快することが分かっています。

背骨の中を通る神経の通り道(脊柱管)が狭くなり、神経が圧迫される状態です。

主な症状

  • 腰痛(比較的軽度なことが多い)
  • 足の痛みやしびれ
  • 間欠跛行(歩くと痛みが出るが、少し休むとまた歩ける)
  • 前かがみで休むと楽になる
  • 自転車には乗れる

好発年齢:60〜70歳代に多い

割合:全腰痛の約4〜5%(推定患者数約580万人)

特徴的な症状:間欠跛行

歩き始める⇨200〜300m歩くと足が痛くなる・しびれる⇨前かがみで休憩(2〜3分)⇨また歩けるようになる⇨しばらくするとまた痛くなる。この繰り返しが特徴です。


定義(腰痛診療ガイドライン2019より)「腰背部の痛みを呈し、腰部に起因するが、下肢に神経根や馬尾由来の症状を含まないもの」つまり、神経症状(しびれ、麻痺など)がない腰痛のことです。

割合:全腰痛の約22%

従来は「原因不明が85%」とされてきましたが、2019年の改訂版では、丁寧な問診と診察により多くの腰痛で原因部位を特定できることが明らかになりました。

原因として考えられるもの

脊椎には様々な組織が存在し、これらのどれが痛みの原因かを特定するのが難しいのです。

  • 椎間板の変性
  • 椎間関節(背骨の関節)の問題
  • 仙腸関節(骨盤の関節)の機能障害
  • 筋・筋膜性の痛み
  • 心理社会的要因(ストレス、不安、抑うつなど)

重要なポイント

「原因不明だから治らない」という誤解が広まっていますが、適切な診察と治療により改善が期待できます。特に慢性腰痛では、心理社会的要因(ストレス、仕事や家庭の問題、不安など)が痛みを遷延化させることが分かっています。


多くの方が実感している改善には、共通する3つのステップがあります。

まずは、自分の腰痛がどのタイプなのかを知ることが大切です。

  • 危険信号(Red Flags)はないか
  • 神経症状を伴うか
  • 非特異的腰痛か

整形外科で適切な診断を受けることで、不安が和らぎます。

  • いつから痛いか
  • どんな時に痛むか
  • 足のしびれはあるか
  • 排尿・排便に問題はないか
  • 過去の病気や外傷
  • レントゲン検査
  • 必要に応じてMRI検査

避けるべき動作

  • ❌ 中腰での長時間作業
  • ❌ 腰を大きくひねる動き
  • ❌ 重いものを急に持ち上げる
  • ❌ 長時間同じ姿勢を続ける

推奨される工夫

  • ✅ 物を持ち上げるときは膝を曲げて腰を落とす
  • ✅ こまめに姿勢を変える(30分ごと)
  • ✅ 椅子に深く腰掛け、背もたれを使う
  • ✅ デスクワーク時は足裏全体が床につく高さに調整

立ち姿勢

  • 左右均等に体重をかける
  • 顎を引く
  • 肩の力を抜く

座り姿勢

  • 深く腰掛ける
  • 背もたれに腰を当てる
  • 両足を床につける
  • パソコン画面は目線の高さ

腰痛診療ガイドライン2019では、以下のように推奨されています。

【推奨度1】強く推奨

  • 慢性腰痛に対する運動療法(運動器リハビリテーション)

【推奨度2】提案

  • 急性腰痛(ぎっくり腰)でも安静ではなく「活動性維持」

つまり、運動療法が極めて大事ということです。

厚生労働省も、腰痛改善のために1日8,000歩程度歩くことを推奨しています。


現場でよく見かけるのが、「運動したいけど、何をすればいいか分からない」という声です。

ここでは、自宅で手軽にできる効果的なストレッチをご紹介します。

  • 強い痛みがある場合は中止してください
  • 痛くない範囲で行ってください
  • 呼吸を止めず、ゆっくり深呼吸しながら
  • 急性期(ぎっくり腰直後など)は無理をしない

効果:腰の筋肉を優しく伸ばし、脊柱管を広げる

  1. 仰向けに寝て、両膝を曲げる
  2. 両手で膝を抱え、胸に引き寄せる
  3. 20〜30秒間その姿勢を保つ
  4. ゆっくり元に戻す

ポイント

  • 呼吸を止めず、ゆっくり深呼吸
  • 背中が丸くなるのを感じながら行う
  • 1日3セット

脊柱管狭窄症の方に特におすすめ


効果:背中の柔軟性を高め、血流を促進

  1. 四つん這いになる
  2. 息を吐きながら背中を丸める(猫のポーズ)
  3. 息を吸いながら背中を反らす
  4. これを10回繰り返す

ポイント

  • ゆっくりとした動きで
  • 呼吸に合わせて動く
  • 腰だけでなく背中全体を動かす

効果:体を支える重要な筋肉をほぐす

  1. 仰向けに寝る
  2. 片方の膝を胸に引き寄せる
  3. もう片方の足は伸ばしたまま
  4. 20〜30秒キープ
  5. 反対側も同様に

ポイント

  • 伸ばしている足の付け根が伸びているのを感じる
  • 無理に引き寄せない
  • 左右各3セット

効果:前かがみ姿勢による「腰痛借金」を解消

東京大学医学部附属病院の松平浩特任教授が考案した、腰痛予防・改善に効果的な体操です。

  1. 足を肩幅より少し広めに開いて立つ
  2. 両手を腰(お尻の上)に当てる
  3. 膝を伸ばしたまま、骨盤を前に押し出すように腰を反らす
  4. 3秒キープして元に戻す
  5. 1〜2回行う

ポイント

  • 前かがみ作業の後に行うと効果的
  • 1日に何度でもOK
  • 痛みが出ない範囲で

現場で多くの方を見てきて感じるのは、普段の姿勢が腰痛に大きく影響しているということです。

デスクワーク時の姿勢

  • 椅子に深く座る
  • 背もたれに腰を当てる
  • 足裏全体が床につく高さに調整
  • パソコン画面は目線の高さ
  • 30分ごとに姿勢を変える

立ち仕事での注意点

  • 片足に体重をかけ続けない
  • こまめに重心を移動
  • 可能であれば足台を使用

腰痛の予防・改善には、筋力の維持が欠かせません。

推奨される運動

  • ウォーキング(1日20〜30分、目標8,000歩)
  • 水中ウォーキング(浮力で腰への負担が軽減)
  • 軽いストレッチ(毎日継続)
  • 体幹トレーニング(腹筋・背筋の強化)

運動のポイント

  • 痛みが強いときは無理をしない
  • 症状が落ち着いてから徐々に開始
  • 継続できる運動を選ぶ
  • 「少しずつ」が大切

腰周りの筋肉は、姿勢を保つために常に緊張状態にあります。しっかり休めることも大切です。

休養のポイント

  • 入浴で血行促進(38〜40℃のぬるめのお湯)
  • 十分な睡眠(7〜8時間)
  • ストレス管理
  • 適度なリラックス時間

Q1. 腰が痛いときは安静にすべきですか?

A. 強い急性の痛みがある初期(1〜2日程度)は、無理をせず休むことも必要です。

しかし、長期間の安静は筋力低下を招き、かえって回復を遅らせます

腰痛診療ガイドライン2019でも、急性腰痛(ぎっくり腰)でさえ「活動性維持」が推奨されています(推奨度2)。痛みがある程度落ち着いたら、無理のない範囲で体を動かすことが推奨されています。

「痛くない範囲で動く」ことを意識してください。


Q2. マッサージや整体は効果がありますか?

A. 筋肉の緊張をほぐし、一時的な症状緩和には効果が期待できます。

ただし、根本的な改善には、日常生活での姿勢改善や運動習慣が重要です。マッサージだけに頼らず、セルフケアと組み合わせることをおすすめします。


Q3. 湿布は温湿布と冷湿布、どちらがいいですか?

A. 一般的な目安

冷湿布:急性期の炎症がある場合(ぎっくり腰直後など)
温湿布:慢性的な痛みやこわばりがある場合

ただし、冷湿布も温湿布も消炎鎮痛成分は同じです。自分が心地よいと感じる方を選んで構いません。


Q4. いつ病院に行くべきですか?

A. 以下のような危険信号(Red Flags)がある場合は、早めに整形外科を受診してください。

  • ⚠ 足に力が入らない(筋力低下)
  • ⚠ 排尿・排便が困難
  • ⚠ 足のしびれが強い
  • ⚠ 安静にしていても痛みが続く
  • ⚠ 発熱がある
  • ⚠ 徐々に痛みが強くなる
  • ⚠ 原因不明の体重減少

これらは重大な病気のサインかもしれません。


Q5. 腰痛ベルトやコルセットは使ったほうがいいですか?

A. 急性期や重い物を持つ作業時など、一時的な使用は有効です。

ただし、長期間常に着用し続けると、腰周りの筋肉が衰えてしまう可能性があります。症状に応じて、医師や理学療法士に相談しながら使用しましょう。

使用の目安

  • 急性期(ぎっくり腰直後):1〜2週間程度
  • 重労働時:作業中のみ
  • 日常生活:基本的に不要

Q6. 運動は痛みがなくなってから始めるべきですか?

A. 完全に痛みがなくなるのを待つ必要はありません。

「痛くない範囲で動く」ことが大切です。強い痛みがある動作は避けつつ、できる範囲で体を動かすことで、回復が早まります。

腰痛診療ガイドライン2019でも、慢性腰痛に対する運動療法は「行うことを強く推奨する(推奨度1)」とされています。

不安な場合は、理学療法士の指導を受けることをおすすめします。


Q7. 非特異的腰痛は治らないのですか?

A. そんなことはありません。

従来「原因不明だから治らない」という誤解がありましたが、非特異的腰痛でも適切な治療で改善が期待できます。

腰痛診療ガイドライン2019によると、最初の3ヶ月で33%の患者の症状が改善。ただし、1年後でも65%の患者に腰痛が残存とあります。

改善のポイント

  • 運動療法の継続(推奨度1)
  • 心理社会的要因への対処(ストレス管理など)
  • 患者教育(正しい知識を持つ)
  • 過度の不安を避ける

慢性化を防ぐためには、早期からの適切な対処が重要です。


多くの方が「もっと早く対処すれば良かった」と後悔されています。腰痛を放置すると、以下のようなリスクが高まります。

身体的な影響

  • ⚠ 筋力がさらに低下し、日常動作がもっと困難に
  • ⚠ 活動量が減り、全身の体力が低下
  • ⚠ 慢性痛として定着し、治りにくくなる

心理・社会的な影響

  • ⚠ 抑うつや不安が増強
  • ⚠ 社会活動の制限
  • ⚠ 生活の質(QOL)が大きく低下

将来的なリスク

  • ⚠ フレイル(虚弱状態)に陥るリスクが増加
  • ⚠ 要介護状態になる可能性が高まる

今日から対処を始めれば、数ヶ月後には変化を実感できるかもしれません。

1年後に始めれば、今よりさらに筋力が落ち、回復に倍の時間がかかるかもしれません。

まずは、明日の朝にストレッチ1つから始めてみませんか?


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

この記事では、腰痛の最新情報と改善方法についてお伝えしてきました。

✓ 腰痛は日本人の4人に1人が抱える一般的な症状
✓ 最新情報:75%以上で診断が可能(従来の「85%が原因不明」は古い情報)
✓ 腰痛は3つに分類される(Red Flags、神経症状を伴う腰痛、非特異的腰痛)
✓ 長期の安静は逆効果、適度に動くことが大切
✓ 運動療法は強く推奨されている(推奨度1)
✓ 自宅でできるストレッチで改善が期待できる
✓ 姿勢の改善と運動習慣が予防に有効
✓ 危険信号がある場合は早急に受診
✓ 痛みがあっても、できる範囲で体を動かす

完璧を目指す必要はありません。

まずは1日1回のストレッチから。
朝起きたときの習慣にしてみる。
1ヶ月続けて、体の変化を感じてみる。

それだけで十分です。

何歳になっても、体は変化していきます。

もちろん、個人差はあります。
すぐに劇的な変化が現れるわけではありません。

でも、焦らず継続することで、何らかの改善を実感される方は多くいらっしゃいます。

ご自身のペースで、無理なく。
できることから始めてみてください。


  • 危険信号(Red Flags)がある場合は、すぐに医療機関を受診してください
  • 効果には個人差があります
  • 痛みが強い場合や不安がある場合は、自己判断せず専門家にご相談ください
  • この記事は医療相談に代わるものではありません

📚 参考文献

  1. 厚生労働省. 令和4年国民生活基礎調査の概況. 2023.
  2. 日本整形外科学会, 日本腰痛学会 監修. 腰痛診療ガイドライン2019(改訂第2版). 南江堂, 2019.
  3. 日本整形外科学会, 日本脊椎脊髄病学会. 腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン改訂第3版. 2021.
  4. 日本整形外科学会, 日本脊椎脊髄病学会. 腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン2021. 南江堂, 2021.
  5. 厚生労働省. 職場における腰痛予防対策指針. 2013年改訂.
  6. 松平浩. これだけ体操®. 東京大学医学部附属病院22世紀医療センター. Available from: https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/shintai-kenkou/yotsu.html
  7. 日本腰痛学会. 腰痛に関する全国調査報告書2023年版. 2024.
  8. 折田純久. 腰痛診療ガイドライン改訂版に基づく最新の腰痛診療. 臨床雑誌整形外科. 2022;73(4):359-365.

執筆者情報

理学療法士
専門分野:運動器リハビリテーション、高齢者リハビリテーション

免責事項

本記事は最新の医学的知識(腰痛診療ガイドライン2019改訂第2版)に基づいて作成されていますが、個別の医療相談に代わるものではありません。健康状態に不安がある場合や、症状が続く場合は、必ず医師にご相談ください。


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