あなたの体は発電所!人間の力で電気を起こしたら、何ができる?
2026.02.08
豆知識
導入:もし今、停電したら?
もし突然停電になったら、あなたは何ができるでしょうか。
スマホの充電が切れそう、テレビも見られない、冷蔵庫も止まってしまう。そんなとき、もし自分の体で電気を作れたら?
実は、人間の体は立派な「発電機」なんです。自転車を漕いだり、手でハンドルを回したりするだけで、電気を作ることができます。
でも、実際にどれくらいの電気が作れて、何ができるのでしょう。スマホの充電はできる?テレビは見られる?ドライヤーは使える?
今回は、理学療法士の視点で「人間が起こせる電気とエネルギー」について、面白く分かりやすく解説していきます。
人力発電ってどういうこと?
電気を作る仕組み
人力発電は、シンプルな仕組みです。
自転車のペダルを漕ぐと、後輪が回転します。その回転で発電機を回すと、磁石とコイルの働きで電気が生まれます。手回し発電機も同じ原理です。
つまり、あなたの筋肉が生み出す力が、そのまま電気になるのです。
ワット(W)って何?
電気の世界では「ワット(W)」という単位を使います。これは「どれだけの電気のパワーがあるか」を表す数字です。
例えば:
- スマホ充電:5〜10W
- LED電球:10〜20W
- ノートパソコン:50〜80W
- 液晶テレビ(40型):70〜90W
- ドライヤー:1,000〜1,200W
数字が大きいほど、たくさんの電気が必要になります。
あなたは何ワット出せる?
一般的な大人の場合
自転車を普通に漕ぐ場合、一般的な大人で約50〜100ワット程度の電気を作ることができます。
頑張って漕いでも、せいぜい100〜150ワットくらいが限界です。これは、体の大きさや体力、漕ぐスピードによって変わります。
手回し発電の場合
手でハンドルを回す発電機の場合、出せる電気はもっと少なくなります。
一般的な手回し発電:数ワット〜数十ワット
手の筋肉は脚の筋肉より小さいので、出せるパワーも小さくなるんです。
競輪選手だとどうなる?
参考までに、プロの競輪選手の場合を見てみましょう。
競輪選手は一般人の3〜5倍の発電能力があり、約200〜700ワットも出せることが研究で分かっています。さすがプロですね。
でも、私たち一般人は100ワット前後と考えておくのが現実的です。
対決!人力発電vs家電製品
それでは、人間が出せる100ワット程度の電気で、実際に何ができるのか見ていきましょう。
○ スマホ充電:余裕です!
スマホ充電:5〜10ワット
100ワット出せれば、スマホ充電は余裕でできます。自転車を普通に漕いでいれば、問題なく充電できるでしょう。
実際、災害時用の足漕ぎ発電機(最大42ワット)でも、複数のスマホを同時に充電できることが確認されています。
○ LED電球:点灯できます!
LED電球:10〜20ワット
LED電球も点灯できます。自転車を漕ぎ続ければ、部屋を明るくすることができますね。
昔ながらの自転車のライトは、まさにこの仕組みで点いていました。
△ ノートパソコン:ちょっと頑張れば
ノートパソコン:50〜80ワット
ノートパソコンは少し頑張れば使えます。100ワット出せれば、なんとかギリギリ動かせるでしょう。
ただし、作業しながらずっと自転車を漕ぎ続けるのは大変ですね。
△ 液晶テレビ:かなり頑張る必要あり
液晶テレビ(40型):70〜90ワット
テレビを見るには、かなり一生懸命漕ぐ必要があります。1時間のドラマを見るには、1時間ずっと漕ぎ続ける覚悟が必要です。
途中で疲れて漕ぐのをやめたら、テレビも消えてしまいます。
× ドライヤー:ほぼ不可能
ドライヤー:1,000〜1,200ワット
ドライヤーは、一般人にはほぼ不可能です。
100ワットしか出せないのに、1,000ワット必要なのですから、10人で同時に漕ぐ必要があります。しかもずっと全力で漕ぎ続ける必要があります。
× エアコン:諦めましょう
エアコン:500〜1,500ワット
エアコンも無理ですね。夏の暑い日にエアコンをつけようと自転車を漕いだら、汗だくになって余計に暑くなるだけです。
理学療法士が解説:発電と体の関係
なぜ脚の方がパワーが出る?
手回し発電より自転車発電の方がパワーが出る理由、それは筋肉の大きさです。
脚の筋肉(大腿四頭筋やハムストリングス)は、体の中で最も大きな筋肉群です。手の筋肉とは比べ物にならないくらい大きいのです。
大きな筋肉ほど、大きな力を出せます。だから、脚で漕ぐ方が圧倒的に有利なんです。
発電は全身運動
自転車発電は、実は全身運動です。
- 脚:ペダルを漕ぐ
- 体幹:体を安定させる
- 腕:ハンドルを支える
特に、体幹(お腹や背中の筋肉)で体を安定させることが重要です。体幹が弱いと、力がうまくペダルに伝わりません。
どれくらいのカロリーを使う?
体重60kgの人が自転車を1時間漕ぐと、約200〜300キロカロリーを消費します。
これは:
- ご飯お茶碗1杯分(約240kcal)
- 食パン1枚半(約250kcal)
に相当します。
つまり、1時間自転車を漕いで100ワットの電気を作ると、ご飯1杯分のカロリーを消費するということです。
発電量は運動量:健康とのつながり
体を動かすとエネルギーが生まれる
発電量は、そのままあなたの運動量を表しています。
100ワット出せるということは、それだけ体を動かしているということ。つまり、発電は「運動の見える化」なんです。
最新ガイドラインから見る運動量
2024年1月に公表された厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」では、成人には以下が推奨されています:
- 1日60分以上の歩行(約8,000歩)
- 週に60分以上の息が弾む運動
- 週2〜3日の筋力トレーニング
自転車を30分漕いで発電すれば、「息が弾む運動」の半分をクリアできることになります。
運動強度の単位「メッツ」
運動の強さを表す単位に「メッツ(METs)」があります。これは、安静にしているときの何倍のエネルギーを使うかを表す数字です。
- 座っている:1メッツ
- 歩く:3〜4メッツ
- 自転車を普通に漕ぐ:6〜8メッツ
- 全力で漕ぐ:10メッツ以上
自転車発電は、6〜8メッツの運動強度になるので、立派な有酸素運動なんです。
日常の動きも「発電」と考えてみる
階段を上る
階段を上るときも、あなたの筋肉は大きなエネルギーを使っています。
もし階段を上る動きで発電できたら、けっこうな電気が作れるはずです。体重を持ち上げるのは、それだけエネルギーが必要なんです。
荷物を運ぶ
重い荷物を持って歩くのも、大きなエネルギーを使います。
10kgの荷物を持って10分歩くだけで、相当なカロリーを消費しています。これも立派な「体の発電」です。
家事をする
掃除機をかける、洗濯物を干す、布団を運ぶ。こうした家事も、すべて「体のエネルギー」を使っています。
もし家事の動きすべてで発電できたら、家中の電気が賄えるかもしれませんね。
人力発電の現実と可能性
現実:日常使いは難しい
正直なところ、人力発電で日常の電気をすべて賄うのは現実的ではありません。
1時間全力で自転車を漕いでも、せいぜい100ワット程度。これでは、スマホ充電やLED電球くらいしか使えません。
でも、意味がないわけじゃない
ただし、人力発電には大きな意味があります。
- 災害時の備え:停電時にスマホ充電やラジオが使える
- 運動の動機づけ:「発電量」という目に見える目標ができる
- エネルギーの実感:電気がどれだけ貴重かを体感できる
特に、自分の体で電気を作る体験は、「エネルギーを大切にしよう」という気持ちにつながります。
フィットネスとの組み合わせ
最近では、運動しながら発電できるフィットネスバイクも販売されています。
運動しながら、スマホやタブレットを充電できる。これは面白いアイデアですよね。
運動のモチベーションにもなりますし、「自分の体はこれだけのエネルギーを生み出せるんだ」という実感が持てます。
よくある質問
Q1. 一番効率よく発電できる体の動きは?
A. 自転車漕ぎです。理由は、脚の大きな筋肉を使えること、そして体重を支える必要がないので疲れにくいことです。
ランニングでも発電できますが、体重を支えながら走るのは疲れやすく、長時間続けるのが難しくなります。
Q2. 筋トレで筋肉をつければ発電量は増える?
A. はい、増えます。筋肉が大きくなれば、出せる力も大きくなります。
特に、脚の筋肉(スクワットなど)を鍛えると、自転車発電の効率が上がります。
Q3. 高齢者でも発電できる?
A. もちろんできます。ただし、出せる電気は少なめになります。
無理のない範囲で、軽く自転車を漕ぐだけでも十分です。スマホ充電程度なら問題ありません。
発電を「運動の目標」にするのも良いかもしれませんね。
Q4. 複数人で協力すれば大きな家電も使える?
A. 理論上は可能です。10人で協力すれば、1,000ワット程度の電気が作れるので、ドライヤーも使えるはずです。
ただし、全員が同じタイミングで同じペースで漕ぐ必要があり、実際にはかなり難しいでしょう。
Q5. 発電しながら運動するメリットは?
A. 「目に見える目標」ができることです。
「今日は○○ワット発電した」「スマホを○%充電できた」という具体的な数字があると、運動のモチベーションが上がります。
また、エネルギーの大切さを実感できるのも大きなメリットです。
まとめ:あなたの体は動かすほどエネルギーを生む
人力発電から分かること
人力発電を通して、いくつかの大切なことが分かります。
- 人間の体は想像以上にパワフル:100ワットも出せるのは、すごいことです
- でも、電気はもっとすごい:普段何気なく使っている家電が、どれだけ大きなエネルギーを使っているか
- 体を動かすことの大切さ:運動は、目に見えないエネルギーを生み出している
日常生活への応用
発電できなくても、日常の動き一つ一つが「エネルギー」を生み出しています。
- 階段を使う
- 少し遠回りして歩く
- 家事を積極的にする
こうした小さな動きの積み重ねが、あなたの健康を作ります。
厚生労働省のガイドラインでも、「今よりも少しでも多く体を動かす」ことが推奨されています。
体は動かすほど元気になる
人間の体は不思議なもので、動かせば動かすほど元気になります。
逆に、動かさないでいると、どんどん衰えていきます。これは、若い人も高齢者も同じです。
発電できるくらい体を動かせることは、実は素晴らしいことなんです。
最後に
もし停電になったとき、自転車を漕いでスマホを充電する。そんな経験をすると、きっと電気のありがたみを実感するでしょう。
そして、「自分の体ってすごいんだな」とも思うはずです。
あなたの体は、立派な発電所。今日も明日も、元気に動かしていきましょう。
参考文献
- 厚生労働省. 健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023. 2024.
- 国立健康・栄養研究所. 改訂版『身体活動のメッツ(METs)表』. 2011.
- 月刊競輪WEB. 自転車を使った発電システムの研究. 2024.
- NTT東日本ビジネス. 自転車ダイナモの発電量はどれくらい?人力の発電方法について解説. 2024.
- 東京電力エナジーパートナー. 家電製品の消費電力について. 2024.
- 高精度計算サイト. 生活や運動の消費カロリーの計算(厚生労働省『運動基準・運動指針の改定に関する検討会 報告書』に基づく). 2025.
執筆者情報
リハビリテーション専門職(理学療法士)の視点で、健康と体の仕組みを分かりやすく解説しています。
2026年1月時点の最新情報に基づいて執筆しています。
注意事項
- 人力発電を行う際は、無理のない範囲で行ってください
- 体調が悪いときや、持病がある方は医師に相談してください
- 長時間の発電作業は体への負担が大きいため、適度に休憩を取りましょう