箱根駅伝選手の運動能力を徹底解説【2026年版】理学療法士が身体機能を分析
2026.01.23
豆知識
「箱根駅伝の選手って、どれくらいすごいの?」
2026年1月2-3日に開催された第102回箱根駅伝。青山学院大学が史上初となる2度目の3連覇を達成し、大会新記録(10時間37分34秒)で幕を閉じました。
テレビで見ていると軽快に走っているように見えますが、実は箱根駅伝の選手たちは、一般の方が全力疾走するレベルのスピードを20km以上維持しています。
本記事では、箱根駅伝選手の驚異的な運動能力について、理学療法士の視点から分かりやすく解説します。身体のどの機能がどれほど優れているのか、科学的データとともにご紹介しますので、ぜひ最後までお読みください。
箱根駅伝選手の驚異的なスピード
時速20kmで走り続ける持久力
箱根駅伝の選手たちは、平均して時速20km(1kmを約3分ペース)で走り続けています。
これがどれくらいのスピードかというと、一般の方が100mを全力疾走するペースに近い速さです。それを20km以上、場合によっては23kmも維持するのですから、まさに驚異的です。
区間による速度の違い
| 区間 | 平均速度 | 特徴 |
|---|---|---|
| 平坦区間(1区、2区など) | 時速20〜22km | 高速ペースが可能 |
| 5区(山登り) | 時速18km前後 | 標高差864mを駆け上がる |
| 6区(山下り) | 時速25km | 最高速度区間 |
2026年大会では、青山学院大学の黒田朝日選手が5区で1時間7分17秒という区間新記録を樹立。従来の記録を1分54秒も更新する圧巻の走りでした。
理学療法士の視点:なぜこのスピードが維持できるのか
理学療法士として見ると、このスピードを維持するには3つの身体機能が高度に発達している必要があります。
- 心肺機能:酸素を効率よく取り込み、全身に送る能力
- 筋持久力:筋肉が長時間働き続ける能力
- 体幹の安定性:疲労してもフォームを維持する能力
次のセクションから、それぞれを詳しく見ていきましょう。
心肺機能:一般人の約2倍のVO2max
VO2max(最大酸素摂取量)とは
箱根駅伝選手の運動能力を語る上で欠かせないのが、VO2max(最大酸素摂取量)です。
VO2maxとは、1分間に体重1kgあたり、どれだけ酸素を取り込んで利用できるかを示す指標です。単位は「ml/kg/min」で表されます。
この数値が高いほど、長時間の激しい運動に耐えられる身体だということです。
箱根駅伝選手のVO2maxは70〜80ml/kg/min
箱根駅伝に出場するレベルの選手は、VO2maxが70〜80ml/kg/minに達しています。
研究データによると、箱根駅伝ランナーで70ml/kg/minを下回る選手はほとんどいないとされています。つまり、箱根駅伝に出場するには、最低でも70ml/kg/min以上の心肺機能が必要と言えます。
VO2maxの比較
| 対象 | VO2max(ml/kg/min) | 比較 |
|---|---|---|
| 一般男性(20〜30代) | 40〜45 | 基準値 |
| 一般女性(20〜30代) | 35〜40 | 基準値 |
| 市民ランナー | 50〜60 | 一般人の1.3倍 |
| 箱根駅伝選手 | 70〜80 | 一般人の約2倍 |
| トップランナー | 80以上 | 一般人の2倍以上 |
箱根駅伝の選手たちは、一般人の約2倍の酸素を取り込めるということです。
理学療法士の視点:VO2maxが高いとなぜ速く走れるのか
VO2maxが高いということは、以下のような利点があります。
酸素供給能力の向上
- 肺が一度に多くの酸素を取り込める
- 心臓が一回の拍動で多くの血液を送り出せる
- 筋肉が効率よく酸素を利用できる
つまり、エンジン性能が高い車のようなものです。
高速道路を長時間走り続けても余裕があるように、箱根駅伝の選手たちは時速20kmで走り続けても、まだ余力がある状態なのです。
筋持久力:20km以上走り続ける脚の力
筋持久力とは
筋持久力とは、筋肉が長時間働き続ける能力のことです。
箱根駅伝の各区間は20km前後。この距離を高速で走り続けるには、脚の筋肉が疲労に負けず、力を発揮し続ける必要があります。
遅筋(赤筋)の発達
理学療法士の視点で見ると、箱根駅伝の選手たちは遅筋(赤筋)が非常に発達しています。
筋肉の種類
| 筋肉のタイプ | 特徴 | 主な役割 |
|---|---|---|
| 速筋(白筋) | 瞬発力が高い、疲れやすい | 短距離走、ジャンプ |
| 遅筋(赤筋) | 持久力が高い、疲れにくい | 長距離走、マラソン |
箱根駅伝の選手は、トレーニングによって遅筋の割合が高まり、長時間の運動に適した身体になっています。
ミトコンドリアの増加
さらに、長距離トレーニングを続けることで、筋肉内のミトコンドリア(エネルギーを作る小器官)が増加します。
ミトコンドリアが多いほど、酸素を使って効率よくエネルギーを生み出せるため、長時間走り続けることができるのです。
理学療法士の視点:筋持久力を高めるポイント
箱根駅伝の選手のような筋持久力を高めるには、以下のトレーニングが効果的です。
有酸素運動の継続
- ジョギング、ランニング
- 週2〜3回、20分以上
適度な負荷
- 「ややきつい」と感じる程度
- 会話ができるくらいの強度
段階的な負荷増加
- いきなり長距離は走らない
- 徐々に距離や時間を伸ばす
一般の方でも、継続的なトレーニングで筋持久力は向上します。ただし、箱根駅伝レベルになるには、長年の積み重ねが必要です。
体幹の安定性:疲労してもブレないフォーム
体幹が重要な理由
箱根駅伝で20km以上を高速で走り続けるには、体幹の安定性が不可欠です。
疲れてくるとフォームが崩れ、エネルギーロスや怪我につながります。箱根駅伝の選手たちは、徹底的な体幹トレーニングで、極限状態でも姿勢を保つ力を養っています。
理学療法士の視点:体幹の役割
体幹とは、胴体部分の筋肉群のことです。具体的には以下の筋肉が含まれます。
主要な体幹筋
- 腹直筋(お腹の前面)
- 腹斜筋(お腹の側面)
- 腹横筋(お腹の深層)
- 脊柱起立筋(背中)
- 多裂筋(背骨の深層)
これらの筋肉が協調して働くことで、走行中の身体の揺れを最小限に抑え、効率的な走りが可能になります。
体幹が弱いとどうなるか
体幹が弱いと、以下のような問題が起こります。
フォームの崩れ
- 上半身が左右に揺れる
- 骨盤が前後に傾く
- 腕振りが不安定になる
エネルギーロス
- 無駄な動きが増える
- 推進力が落ちる
- 疲労が早まる
怪我のリスク増加
- 膝への負担増加
- 腰痛のリスク
- 足首の捻挫
箱根駅伝の選手は、これらの問題を体幹トレーニングで解決しています。
2026年大会のエピソード:黒田朝日の体幹力
2026年大会の5区で区間新記録を樹立した青山学院大学の黒田朝日選手。
5位から一気にトップへ逆転する走りの裏には、圧倒的な体幹の安定性がありました。標高差864mの山登りという過酷な区間でも、フォームが崩れることなく、最後まで力強いストライドを維持していました。
これこそ、日々の体幹トレーニングの賜物と言えるでしょう。
科学的トレーニング:青山学院大学の「原メソッド」
データに基づくトレーニング
2026年大会で史上初となる2度目の3連覇を達成した青山学院大学。
その強さの秘密は、原晋監督が確立した「原メソッド」と呼ばれる科学的トレーニングにあります。
原メソッドの特徴
- 心拍数データの活用
- AI(人工知能)によるフォーム分析
- 走行距離や練習消化率の客観的評価
- 選手の自主性を重視
理学療法士の視点:科学的トレーニングの重要性
理学療法士として、原メソッドのようなデータに基づくアプローチは非常に理にかなっていると感じます。
データ活用のメリット
個別最適化
- 各選手の体力レベルに合わせた負荷設定
- オーバートレーニングの防止
- 怪我のリスク軽減
客観的評価
- 感覚ではなく数値で進捗を把握
- モチベーション維持
- 次の目標設定が明確
フォーム改善
- AIによる動作分析
- 効率的な走りの習得
- 負担の少ない走法
一般の方がトレーニングする際も、このような科学的アプローチを取り入れることで、より効果的に運動能力を高めることができます。
一般の方との比較:どれくらい違うのか
スピードの違い
箱根駅伝の選手と一般の方では、走るスピードがどれくらい違うのでしょうか。
5kmを走る場合の比較
| 対象 | タイム | ペース |
|---|---|---|
| 一般の市民ランナー | 約25分 | 1km 5分ペース |
| 箱根駅伝選手 | 約15分 | 1km 3分ペース |
同じ距離を走るのに、箱根駅伝の選手は10分も早く走り切ります。
心肺機能の違い
前述したように、VO2maxは一般人の約2倍です。
心肺機能の違い(具体例)
一般の方が「ややきつい」と感じる運動強度で、箱根駅伝の選手は「楽」と感じる可能性があります。
これは、心臓や肺の働きが根本的に異なるためです。
理学療法士の視点:一般の方が目指すべきレベル
箱根駅伝の選手と同じレベルを目指す必要はありません。
一般の方が健康維持のために目指すべきVO2maxは、以下の通りです。
厚生労働省の基準(2013年版)
| 年代・性別 | 推奨VO2max(ml/kg/min) |
|---|---|
| 20〜30代男性 | 40〜45 |
| 20〜30代女性 | 35〜40 |
| 40〜50代男性 | 35〜40 |
| 40〜50代女性 | 30〜35 |
この基準を維持することで、生活習慣病のリスクを減らし、健康寿命を延ばすことができます。
箱根駅伝から学ぶ:運動を続けるコツ
継続が最も大切
箱根駅伝の選手たちの運動能力は、一朝一夕で身につくものではありません。
長年の継続的なトレーニングの積み重ねによって、あの驚異的な身体能力が築かれています。
理学療法士の視点:一般の方へのアドバイス
一般の方が運動を続けるには、以下のポイントが大切です。
無理のない目標設定
- いきなり長距離は走らない
- 週2〜3回、20〜30分から始める
- 徐々に時間や距離を伸ばす
楽しみを見つける
- 好きな音楽を聴きながら
- 景色の良いコースを選ぶ
- 仲間と一緒に運動する
身体の声を聴く
- 痛みがあれば休む
- 疲労が溜まったら無理しない
- 定期的に休養日を設ける
専門家への相談も大切
もし運動を始めたいけれど不安がある場合は、理学療法士などの専門家に相談することをおすすめします。
一人ひとりの身体の状態に合わせた、適切なアドバイスを受けることができます。
よくあるご質問
Q1. 箱根駅伝の選手は毎日どれくらい練習しているの?
A. 月間走行距離は選手によって異なりますが、一般的に月間600〜800km程度と言われています。1日あたり約20〜25km走る計算です。
ただし、これは長年のトレーニングで身体が適応した結果です。一般の方がいきなり同じ量を走ると、怪我のリスクが非常に高くなります。
Q2. 一般人でもVO2maxを70まで上げられる?
A. VO2maxには遺伝的な要素もありますが、継続的なトレーニングで向上させることは可能です。
ただし、70ml/kg/minまで到達するには、長期間の本格的なトレーニングが必要です。一般の方は、まず自分の年代の推奨値を目指すことをおすすめします。
Q3. 体幹トレーニングは毎日やるべき?
A. 体幹トレーニングは週2〜3回で十分です。
筋肉は休息中に成長するため、適度な休養も大切です。初めての方は、まず週2回、1回10〜15分程度から始めてみましょう。
Q4. 箱根駅伝の選手は怪我をしないの?
A. 箱根駅伝の選手も怪我をすることはあります。
むしろ、高い負荷をかけるため、怪我のリスクは一般の方より高いとも言えます。だからこそ、日々のケア、適切なトレーニング計画、専門家のサポートが欠かせません。
Q5. 運動を始めるのに年齢は関係ある?
A. 運動を始めるのに、年齢は関係ありません。
ただし、年齢や体力レベルに応じた適切な運動強度や内容を選ぶことが大切です。持病がある方や運動制限がある方は、医師に相談してから始めましょう。
まとめ
箱根駅伝選手の驚異的な運動能力について、理学療法士の視点から解説してきました。
この記事のポイント
✓ 走行速度:時速20km(1km約3分)を20km以上維持 ✓ VO2max:70〜80ml/kg/min(一般人の約2倍) ✓ 筋持久力:遅筋の発達とミトコンドリアの増加 ✓ 体幹の安定性:疲労してもフォームを維持する力 ✓ 科学的トレーニング:データに基づく個別最適化
2026年大会のハイライト
青山学院大学が史上初となる2度目の3連覇を達成。黒田朝日主将の5区区間新記録(1時間7分17秒)は、従来の記録を1分54秒も更新する驚異的な走りでした。
今日からできること
箱根駅伝の選手と同じレベルを目指す必要はありません。
大切なのは、自分のペースで、無理なく続けることです。週2〜3回、20〜30分のウォーキングやジョギングから始めてみませんか?
運動を続けることで、心肺機能が向上し、疲れにくい身体になっていきます。
専門家に相談するタイミング
もし不安なことがあれば、理学療法士などの専門家に相談してみましょう。
一人ひとりの身体の状態に合わせた、適切なアドバイスを受けることができます。
📚 参考文献
- 厚生労働省. 健康づくりのための身体活動基準2013. 2013.
- 文部科学省. 新体力テスト実施要項. 2023年版.
- 宮川俊平(RUNNING CLINIC). マラソンの記録向上のために必要なトレーニングとは?「最大酸素摂取量VO2max」の理論と実践. 2023年12月.
- 笹川スポーツ財団. 2026年第102回箱根駅伝はここをみよう ~青学の3連覇、高速化、シューズ覇権~. 2025年.
- ユリーカスポーツ. 最大酸素摂取量(VO2max)の基本と競技パフォーマンスへの影響. 2024年11月.
- 健康長寿ネット. 最大酸素摂取量. 2023年更新版.
- 関東学生陸上競技連盟. 第102回東京箱根間往復大学駅伝競走 公式記録. 2026年1月.
執筆者情報
理学療法士
本記事は、2026年1月の最新情報と科学的エビデンスに基づいて作成しています。
免責事項
本記事の情報は一般的な内容です。個人の状態により適切な運動方法は異なります。
持病のある方、運動制限のある方は、医師にご相談ください。
運動中に体調不良を感じた場合は、すぐに中止し、必要に応じて医療機関を受診してください。