変形性関節症のリハビリテーション【2026年版】理学療法士が解説
2026.01.12
リハビリ
こんにちは。理学療法士として膝や股関節の痛みに悩む患者さんと日々向き合う中で、「痛いから動かさないようにしています」という言葉をよく耳にします。そのお気持ち、本当によく分かります。でも実は、この「動かさない選択」が、さらなる痛みと機能低下を招いてしまうことがあるんです。
変形性関節症(OA)は、関節の軟骨がすり減って痛みや動きの制限が出る病気です。特に膝や股関節に多く、日常生活に大きな影響を与えます。「もう歳だから仕方ない」「いずれは手術しかない」と諦めていませんか?
実は、適切なリハビリテーションによって、痛みを軽減し、機能を改善できる可能性は十分にあります。変形性膝関節症診療ガイドライン2023でも、運動療法が強く推奨されており、科学的な根拠に基づいた治療法として確立されています。
今日は、変形性関節症のリハビリについて、現場で実際に効果を実感している立場から、できるだけ分かりやすくお話ししたいと思います。
変形性関節症って、どんな病気?まずは敵を知ることから
「変形性関節症」と聞くと、難しく感じるかもしれませんが、実はとても身近な病気なんです。
あなたの関節で何が起きているのか
関節は、骨と骨の間でクッションの役割を果たす「軟骨」に守られています。この軟骨が長年の使用や加齢によって徐々にすり減っていくと、骨同士がこすれ合うようになり、痛みや炎症が起こります。これが変形性関節症です。
例えるなら、車のタイヤのようなもの。長く使っていれば摩耗していくのは自然なことですが、メンテナンス次第で寿命を延ばすことができますよね。関節も同じなんです。
多くの方が経験する疾患
日本整形外科学会の調査によると、X線所見上の変形性膝関節症の患者数は約2,500万人、そのうち痛みのある方は約800万人にのぼります。40歳以上では約半数の方に何らかの変化が見られており、決して珍しい病気ではなく、むしろ「誰にでも起こりうる」ものなのです。
だからこそ、早めの対策が重要になってきます。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| X線所見上の患者数 | 約2,500万人 |
| 痛みのある方 | 約800万人 |
| 40歳以上の有病率 | 約55% |
| 女性の発症率 | 男性の1.5〜2倍 |
なぜリハビリが必要なのか?痛みの悪循環を断ち切る
ここが最もお伝えしたいポイントです。
「痛い→動かない→筋力低下→さらに痛くなる」という悪循環を断ち切ることが、リハビリの最大の目的です。
痛みが生まれる本当のメカニズム
変形性関節症の痛みは、軟骨のすり減りだけが原因ではありません。実は、関節を支える筋肉が弱くなることで、関節への負担が増え、痛みが強くなっているケースが非常に多いんです。
想像してみてください。柱(筋肉)がしっかりしている家と、柱が弱った家。どちらの家の方が土台(関節)に負担がかかるでしょうか?答えは明らかですよね。
「安静」が逆効果になることも
「痛いから安静にする」のは、一時的には正しい判断です。しかし、長期的に動かさないでいると、筋肉はどんどん衰え、関節も固くなってしまいます。実際、1週間寝たきりでいると、筋力は約20%も低下すると言われています。
変形性膝関節症診療ガイドライン2023では、運動療法が強く推奨されており、定期的な有酸素運動、筋力強化訓練、関節可動域訓練の継続が効果的であることが科学的に証明されています。つまり、適切に動かすことこそが、痛みを和らげる近道なんです。
リハビリで期待できる具体的な変化
では、実際にどのような改善が期待できるのでしょうか。
痛みの軽減
関節周囲の筋肉を強化することで、関節への負担が分散され、痛みが和らぎます。多くの患者さんが「階段の上り下りが楽になった」「朝起きた時の痛みが減った」と実感されています。
動きやすさの回復
ストレッチや運動を継続することで、固くなっていた関節の可動域が広がります。「しゃがめなかったのに、しゃがめるようになった」「正座ができるようになった」という喜びの声をよく聞きます。
日常生活の質の向上
痛みが減り、動きやすくなれば、買い物や旅行、趣味の活動など、諦めていたことにも再び挑戦できるようになります。これは単なる身体機能の改善ではなく、人生の質そのものの向上につながるんです。
手術を回避できる可能性
適切なリハビリによって、手術を先延ばしにしたり、場合によっては回避できることもあります。手術は最後の手段であり、その前にできることはたくさんあるんです。
現場で実感する「続ける人」の変化
私たちセラピストとして、長年リハビリに携わる中で、はっきりと分かることがあります。
3ヶ月が一つの目安
リハビリを始めて最初の1ヶ月は、変化を感じにくいかもしれません。でも、3ヶ月続けた方のほとんどが、何らかの改善を実感されています。体は正直で、継続すれば必ず応えてくれます。
「諦めない姿勢」が何より大切
痛みと向き合うのは、精神的にも辛いことです。でも、私たちが何度も目の当たりにしてきたのは、諦めずに続けた方ほど、想像以上の改善を見せてくれるということです。
年齢は関係ありません。80代、90代の方でも、適切なリハビリで驚くほど回復される方がいらっしゃいます。
国際的なガイドラインでも、変形性関節症の第一選択の治療として運動療法が推奨されており、私たち現場のセラピストにとっても、日々の励みとなっています。
効果的なリハビリの具体的な内容
実際にどんな運動をすれば良いのか、具体的にご紹介します。
筋力トレーニング:関節を守る「盾」を作る
大腿四頭筋(太ももの前側の筋肉)の強化が特に重要です。この筋肉は膝関節を支える最も重要な筋肉で、ここを鍛えることで膝への負担が大きく減ります。
具体的な運動例
- 椅子に座った状態で膝を伸ばす運動
- 壁に背中をつけて行うスクワット
- ベッドの上で仰向けになり、膝を伸ばしたまま足を持ち上げる運動
無理のない範囲から始めて、徐々に回数や強度を上げていきます。
ストレッチ:固まった関節をほぐす
関節の柔軟性を取り戻すことも重要です。
具体的な方法
- 仰向けに寝て、膝を胸に引き寄せるストレッチ
- 椅子に座って、膝をゆっくり伸ばすストレッチ
- お風呂上がりなど、体が温まっている時が効果的
ポイントは、痛みを感じない範囲で、じっくり時間をかけて行うことです。
有酸素運動:全身のコンディションを整える
推奨される運動
- ウォーキング:平地を無理のないペースで
- 水中ウォーキング:膝への負担が少なく、最もおすすめ
- 自転車こぎ:膝の曲げ伸ばしを繰り返す良い運動
週に3〜5回、20〜30分程度を目安に行うと効果的です。
バランス運動:転倒予防にも効果的
具体的な運動
- 片足立ち:壁や手すりにつかまってOK
- かかと歩き・つま先歩き
- バランスボードを使った運動
バランス能力を高めることで、日常生活での転倒リスクも減少します。
| 運動の種類 | 主な効果 | 実施頻度の目安 |
|---|---|---|
| 筋力トレーニング | 関節を支える力の向上 | 週3〜5回 |
| ストレッチ | 柔軟性の改善 | 毎日 |
| 有酸素運動 | 全身の持久力向上 | 週3〜5回、20〜30分 |
| バランス運動 | 転倒予防 | 週2〜3回 |
「いつから始めればいいの?」よくある疑問にお答えします
診断されたらすぐに始めるのがベスト
「痛みが強い時はどうすれば?」という質問をよく受けますが、急性期の強い炎症がある時以外は、早めに始めることをお勧めします。
ただし、自己判断は禁物です。必ず医師や理学療法士の評価を受けてから始めましょう。
慢性期でも遅くない
「もう何年も前から痛い」「かなり進行している」という方も、諦める必要はありません。どの段階からでも、適切なリハビリによる改善は期待できます。
自費リハビリという選択肢
保険診療では、時間や回数に制限があります。でも、自費リハビリなら、
- あなたの症状に合わせた十分な時間の確保
- より専門的で個別化されたプログラムの提供
- 必要な頻度での集中的な治療
より効果的なリハビリを受けることができます。
リハビリを始める前に知っておいてほしいこと
正しい期待値を持つことが、継続のカギになります。
「魔法」ではなく「積み重ね」
リハビリは、一回で劇的に変わるものではありません。地道な積み重ねが必要です。でも、その積み重ねが、確実にあなたの体を変えていきます。
痛みとの上手な付き合い方
リハビリ中に多少の痛みを感じることはありますが、「我慢できる程度の痛み」と「我慢できない痛み」は区別が必要です。運動後に2時間以上痛みが続く場合は、強度を下げる必要があります。
生活習慣の見直しも大切
リハビリだけでなく、日常生活での姿勢や動作、体重管理なども重要です。総合的なアプローチが、最良の結果を生みます。
こんな時は速やかに医療機関へ
以下のような症状がある場合は、運動を中止し、速やかに医療機関を受診してください。
| 症状 | 対応 |
|---|---|
| 運動後2時間以上痛みが続く | 運動強度を下げる、医師に相談 |
| 痛みが日に日に強くなる | 速やかに受診 |
| 膝が腫れて熱を持つ | 炎症の可能性、すぐに受診 |
| 膝がロックして動かない | 速やかに受診 |
| 安静時も強い痛みが続く | 医師の診察が必要 |
効果には個人差がありますので、無理せず、自分のペースで続けることが大切です。
まとめ:「動く」ことが最良の薬
変形性関節症のリハビリテーションは、痛みを軽減し、機能を改善するための最も重要な治療法です。「痛いから動かない」のではなく、「痛いからこそ、正しく動かす」ことが大切なんです。
この記事のポイント
✓ 変形性関節症は約2,500万人が抱える身近な疾患 ✓ 痛みの悪循環を断ち切ることがリハビリの目的 ✓ ガイドライン2023で運動療法が強く推奨されている ✓ 筋力トレーニング、ストレッチ、有酸素運動、バランス運動を組み合わせる ✓ 3ヶ月継続で多くの方が改善を実感 ✓ 年齢は関係ない、諦めないことが大切 ✓ 自己判断せず、専門家の指導のもとで行う
今日からできること
まずは、日常生活の中で意識してみましょう。エレベーターの代わりに階段を使う、いつもより少し速く歩いてみる。
小さなことから始めて、無理なく続けることが大切です。
専門家に相談するタイミング
もし不安なことがあれば、理学療法士などの専門家に相談してみましょう。
一人ひとりの状態に合わせた適切なアドバイスを受けることができます。手術を避けたい、痛みを何とかしたい、もっと活動的になりたい、そんな思いをお持ちの方は、ぜひ一度ご相談ください。
専門家の指導のもとで、あなたに最適なリハビリプログラムを一緒に作っていきましょう。
痛みに負けない、あなたらしい人生を取り戻すお手伝いをさせてください。
よくあるご質問
Q1. 運動は毎日やらないとダメですか?
毎日でなくても大丈夫です。週2〜3回でも、継続することで効果は現れます。大切なのは「続けること」です。ストレッチは毎日、筋力トレーニングは週3〜5回が理想的ですが、まずは無理のない範囲から始めましょう。
Q2. 運動の強度はどれくらいが適切?
「ややきつい」と感じる程度が目安です。会話ができるくらいの強度が理想的です。運動後に2時間以上痛みが続く場合は、強度を下げる必要があります。
Q3. 痛みがある時も運動していいの?
急性期の強い炎症がある時は安静が必要ですが、慢性的な痛みの場合は、適切な範囲で運動することが推奨されています。ただし、必ず医師や理学療法士に相談してから始めてください。
Q4. どのくらいで効果が出ますか?
個人差はありますが、3ヶ月継続した方のほとんどが何らかの改善を実感されています。最初の1ヶ月は変化を感じにくいかもしれませんが、諦めずに続けることが大切です。
Q5. サプリメントやヒアルロン酸注射との併用は?
運動療法と併用することで、より効果的な場合もあります。ただし、運動療法が基本であり、これらは補助的な治療と考えてください。詳しくは医師にご相談ください。
📚 参考文献
- 日本整形外科学会. 変形性膝関節症診療ガイドライン2023. 南江堂, 2023.
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執筆者情報
理学療法士
本記事は、変形性膝関節症診療ガイドライン2023および最新の文献・ガイドラインに基づいて作成しています。
免責事項
本記事の情報は一般的な内容です。個人の状態により適切な方法は異なります。
持病のある方、運動制限のある方は、必ず医師にご相談ください。
症状が改善しない場合や悪化する場合は、速やかに医療機関を受診してください。