リハビリテーション継続の重要性【2025年版】理学療法士が解説
2026.01.12
リハビリ
はじめに
「リハビリは、いつまで続ければいいんですか?」 「もう良くなったから、やめても大丈夫ですよね?」
このような質問をいただくことがあります。
リハビリテーションは、一度良くなったら終わりというものではありません。継続することで、さらなる改善が期待できますし、回復した機能を維持していくためにも欠かせないものです。
本記事では、なぜリハビリを続けることが重要なのか、その科学的な根拠と効果について、理学療法士がわかりやすく解説します。2025年6月に公開された最新のガイドラインも含めてご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
リハビリ継続の5つの効果
リハビリテーションを継続することで、様々な効果が得られます。
1. 機能の向上:回復は段階的に進む
「歩けるようになった」「手が動くようになった」。そこからが次のステップです。
回復の段階
脳卒中後の運動機能回復を例に取ると、まず「動く」ことが目標でした。次は「上手に動く」、そして「日常生活で実際に使える動き」へと段階的に進化していきます。
定期的なリハビリを継続することで、身体機能の向上や自立した生活の実現により大きく貢献することが、研究でも示されています。
日常生活動作の質的向上
単に「できる」から「上手にできる」への変化は、実際の生活において大きな意味を持ちます。
例えば、着替えができるようになった次の段階では、より早く、より楽に着替えができるようになります。そうすることで、朝の支度時間が短縮され、生活リズムが改善されていきます。
2. 神経可塑性の促進:脳の学習能力を活かす
脳には「神経可塑性」という能力があります。これは、脳が新しい神経経路を作り出したり、既存の回路を強化したりする能力のことです。
脳は何歳になっても学習できる
年齢に関係なく、脳には学習能力があります。特に脳卒中後の早期リハビリでは、この神経可塑性を最大限に引き出すことができます。
ただし、この能力は「使わなければ失われる」特性があります。
継続的な刺激が新しい回路を強化する
新しく形成された神経回路は、継続的に使われることで強化され、安定していきます。
これは道路に例えるなら、新しくできた小道を何度も歩くことで、やがてしっかりとした道になっていくのと同じです。
脳卒中後の運動回復に関する研究では、神経可塑性を促進するためには継続的なリハビリが不可欠であることが示されています。
3. 精神的健康の改善:体と心のつながり
リハビリの効果は身体面だけにとどまりません。継続的なリハビリは、精神的な健康にも良い影響を与えます。
運動が心に与える影響
定期的な運動は、セロトニンやエンドルフィンの分泌を促進します。これらの物質は、うつ病や不安症状の軽減に効果があることが科学的に示されています。
達成感と自己効力感の向上
「今日は昨日よりも10歩多く歩けた」「今週は階段を一人で上がれるようになった」。
こうした小さな達成感の積み重ねが、「自分はできる」という自己効力感を育てていきます。この感覚は、リハビリ以外の日常生活においても前向きな気持ちをもたらしてくれます。
生活の質の向上
全体的な生活の質(QOL:Quality of Life)の向上も、継続的なリハビリの大きなメリットです。
身体機能の向上と精神的な安定が相乗効果を生み、より充実した日々を送れるようになります。
4. 社会的参加の促進:人とのつながりを取り戻す
病気や怪我の後、多くの方が社会との接点を失いがちになります。しかし、継続的なリハビリは、再び社会とのつながりを築く重要な役割を果たします。
自信の回復が社会参加への第一歩
リハビリを通じて身体機能が向上し、精神的にも安定してくると、「外に出てみよう」「人と会ってみよう」という気持ちが湧いてきます。
これは、病気や怪我によって一度失いかけた自信を取り戻すプロセスでもあります。
地域コミュニティとの関わり
地域社会で行われるリハビリプログラムは、同じような経験を持つ方との出会いの場にもなります。
お互いに励まし合い、情報交換をすることで、社会的な支援ネットワークが自然に形成されていきます。
家族関係の改善
機能が向上し、できることが増えることで、家族内での役割も変わってきます。
家族との会話も弾むようになり、関係性が良くなることもあります。
5. 長期的な健康維持:予防という視点
最後に、長期的な健康維持です。これは特に慢性疾患を抱える方にとって、重要な要素です。
廃用症候群の予防
「使わなければ衰える」これは人間の体の基本原則です。
一度回復した機能も、使わなければ徐々に低下していきます。これを「廃用症候群」と呼びますが、継続的なリハビリはこの現象を効果的に予防できます。
病状進行の抑制
慢性疾患の場合、完全に治ることは難しくても、進行を遅らせることは可能です。
定期的なリハビリは、病状の進行を抑制し、現在の機能レベルを長期間維持する効果があります。
二次的合併症の予防
例えば、脳卒中の場合、麻痺側の筋力低下や関節拘縮、肩の痛みなどの二次的な問題が起こりやすくなります。
継続的なリハビリは、これらの合併症を予防し、より快適な生活を維持するために重要です。
2025年版ガイドラインの新しい知見
2025年6月に公開された「脳卒中治療ガイドライン2021【改訂2025】」では、リハビリテーションに関する新しい知見が追加されました。
新しいリハビリ技術の評価
以下の技術が、推奨度を上げています。
| 技術 | 内容 |
|---|---|
| Brain-computer interface (BCI) | 脳波を利用した訓練システム |
| 反復性経頭蓋磁気刺激 (rTMS) | 脳を磁気で刺激する治療法 |
| 経頭蓋直流電気刺激 (tDCS) | 脳を弱い電流で刺激する治療法 |
| ロボット療法 | ロボットを用いた運動訓練 |
これらの新しい治療法は、脳の可塑性を引き出す可能性のあるアプローチとして注目されています。
ガイドラインの改訂方針
2015年以降、5〜6年ごとの全面改訂では急速な知見の蓄積に追いつけないため、2年ごとに最新エビデンスを反映する方針が取られています。
今回の改訂では、2022年1月〜2023年12月の文献が新たに収集されました。
継続するためのコツ
「継続が大切なのは分かったけど、続けるのが大変」という声もあります。
そこで、長続きさせるための実践的なコツをお伝えします。
現実的な目標設定
大きな目標も大切ですが、まずは「今週は○○ができるようになろう」といった、短期間で達成可能な目標を設定しましょう。
小さな成功体験の積み重ねが、長期的な継続につながります。
楽しみながら行う
リハビリは「つらい訓練」である必要はありません。
音楽に合わせて体を動かしたり、ゲーム要素を取り入れたりして、楽しみながら続けられる方法を見つけることが大切です。
記録をつける
日々の変化は小さくて気づきにくいものです。歩いた距離や時間、できるようになったことを記録しましょう。
後で振り返ったときに、確実な進歩を実感できます。
リハビリを始める前の注意点
安全にリハビリを行うために、以下の点に注意しましょう。
医師への相談が必要な方
以下に該当する方は、リハビリを始める前に必ず医師に相談してください。
- 心臓病や高血圧などの持病がある方
- 急性期で病状が不安定な方
- 関節に強い痛みがある方
- 医師から運動制限を受けている方
運動中に注意すべき症状
運動中に以下の症状が出たら、すぐに中止して医療機関を受診してください。
- 胸の痛みや圧迫感
- 強いめまいや吐き気
- 呼吸困難
- 関節の激しい痛み
個人差(健康状態、体力レベル)を踏まえて、無理のない範囲で行うことが大切です。
よくあるご質問
Q1. リハビリは毎日やらないとダメですか?
A. 毎日でなくても大丈夫です。
研究では、週2〜3回でも継続することで効果は現れることが示されています。大切なのは「続けること」です。
ただし、8週間以上の継続で効果が向上し、12週間ではさらに効果が増大することも報告されています。
Q2. いつまで続ければいいですか?
A. 明確な終了時期はありません。
回復の程度や目標によって異なりますが、長期的な継続が推奨されます。研究でも、長期的にリハビリを行うことに悪影響はないと報告されています。
Q3. 脳卒中発症から半年以上経っても効果はありますか?
A. はい、効果は期待できます。
以前は「半年でプラトー(頭打ち)になる」と言われていましたが、最近の研究では、半年以降でも適切なリハビリを行うことで回復する可能性があることが示されています。
Q4. どれくらいの強度が適切ですか?
A. 「ややきつい」と感じる程度が目安です。
研究では、運動強度60%を超えるリハビリを8週間以上行うと、より効果が期待できるとされています。
ただし、個人差がありますので、専門家と相談しながら調整しましょう。
Q5. 効果が実感できないのですが?
A. 日々の変化は小さくて気づきにくいものです。
記録をつけて定期的に振り返ることで、確実な進歩を実感できます。また、リハビリの内容や方法が適切か、専門家に相談することもおすすめします。
まとめ
リハビリテーションの継続について、最新の知見を含めてご紹介しました。
この記事のポイント
継続リハビリの5つの効果
- 機能の向上:回復は段階的に進む
- 神経可塑性の促進:脳の学習能力を活かす
- 精神的健康の改善:体と心のつながり
- 社会的参加の促進:人とのつながりを取り戻す
- 長期的な健康維持:予防という視点
2025年版ガイドラインの新知見
- BCI、rTMS、tDCS、ロボット療法の評価向上
- 2年ごとに最新エビデンスを反映
- 継続的なリハビリの重要性を再確認
今日からできること
まずは、できる範囲で継続することを意識してみましょう。
- 週2〜3回のリハビリでも効果あり
- 小さな目標を設定する
- 記録をつけて進歩を確認する
- 楽しみながら続ける工夫をする
無理のない範囲で、長期的に続けることが大切です。
専門家に相談するタイミング
以下のような場合は、理学療法士などの専門家に相談することをおすすめします。
- 自分に合ったリハビリが分からない
- 持病があり運動に不安がある
- 効果が実感できない
- 正しい方法を確認したい
一人ひとりの状態に合わせた適切なアドバイスを受けることができます。
リハビリテーションの継続は、より良い明日への投資です。あなたの可能性を広げるために、今日も一歩ずつ、継続していきましょう。
📚 参考文献
- 日本脳卒中学会 脳卒中ガイドライン委員会. 脳卒中治療ガイドライン2021【改訂2025】. 協和企画, 2025.
- 厚生労働省. 健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023. 2024.
- 公益社団法人日本理学療法士協会, 一般社団法人日本理学療法学会連合 理学療法標準化検討委員会ガイドライン部会. 理学療法ガイドライン第2版. 医学書院, 2021.
- World Health Organization. WHO Guidelines on Physical Activity and Sedentary Behaviour. 2020.
- 公益財団法人長寿科学振興財団. 高齢者リハビリテーションの理念. 健康長寿ネット.
執筆者情報
理学療法士
本記事は、最新の文献・ガイドラインに基づいて作成しています。
免責事項
本記事の情報は一般的な内容です。個人の状態により適切な方法は異なります。
持病のある方、運動制限のある方は、必ず医師にご相談ください。
症状が改善しない場合や悪化する場合は、速やかに医療機関を受診してください。