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運動の原理・原則をわかりやすく解説【2025年版】理学療法士が教える基本

2026.01.12

リハビリ

運動の原理・原則をわかりやすく解説【2025年版】理学療法士が教える基本

はじめに:運動を始める前に知っておきたい大切なこと

「運動を始めたいけど、何からすればいいの?」 「リハビリって、どうやって進めるのが正しいの?」

このような疑問を持ったことはありませんか?

実は、運動には「基本の原理・原則」があります。これを知っているだけで、効率が全然違ってくるんです。

本記事では、リハビリや運動を効果的に行うための基本的な考え方を、理学療法士がわかりやすく解説します。2024年1月に公表された厚生労働省の最新ガイドラインも含めてご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。


運動の「原理」と「原則」って何が違うの?

まず、言葉の意味を整理しましょう。

原理とは、「必ずそうなること」を指します。どんな運動でも当てはまる、揺るがない法則です。

原則とは、「守ると効率が上がること」を指します。効果的に運動を進めるためのルールです。

この2つを理解しておくことで、運動の効果を最大限に引き出すことができます。


運動効果を最大化する3つの基本原理

効果的なリハビリや運動を行うには、まず「トレーニングの3原理」を理解することが大切です。

1. 過負荷の原理:「いつもより少し」が効果を生む

どういうこと?

日常生活以上の負荷をかけないと、運動の効果は現れません。

いつもと同じ刺激では、体は変わらないということです。

適切な負荷の目安

「ややきつい」と感じる程度が理想的です。会話ができるくらいの強度を目安にしましょう。

厚生労働省の最新ガイドライン(2024年1月公表)では、成人は「歩行またはそれと同等以上の強度の身体活動を1日60分以上」が推奨されています。

日常生活での例

  • エレベーターの代わりに階段を使う
  • いつもより少し速く歩いてみる
  • 買い物の荷物を持って歩く距離を伸ばす

注意点

負荷が低すぎると効果が現れにくく、高すぎると怪我のリスクが高まります。

「ややきつい」程度を意識することが大切です。


2. 特異性の原理:やった運動の効果が現れる

どういうこと?

トレーニングで刺激した部位や機能にだけ、効果が現れます。

腕の運動をしたら腕が、足の運動をしたら足が鍛えられます。持久的な運動をしたら持久力が、筋力トレーニングをしたら筋力がつきます。

目的に合った運動を選ぶ

  • 脚を強くしたい → スクワットや階段昇降
  • 持久力をつけたい → ウォーキングやジョギング
  • 柔軟性を高めたい → ストレッチング

注意点

SNSなどで話題の「〇〇に効く体操」は、人によって効果に差があります。

自分の目的に合った運動を選ぶことが重要です。


3. 可逆性の原理:やめると効果は失われる

どういうこと?

運動をやめてしまうと、せっかく得られた効果が徐々に失われていきます。

ダイエットのために運動しても、やめれば元に戻りやすいのも可逆性の原理です。

継続するためのコツ

  • 無理のない範囲で始める
  • 生活の中に組み込む(歯磨きの後にストレッチなど)
  • 小さな目標を設定する

良いニュース

以前トレーニングしていた人が再開すると、効果が出やすいことも分かっています。

筋肉には「覚えている力」があるんです。


効果的なリハビリのための5つの原則

基本原理に加えて、以下の5つの原則を意識することで、さらに効果的な運動が可能になります。

1. 意識性の原則:目的を理解して取り組む

なぜ大切?

何のために運動しているのか、どこの筋肉を使っているのかを意識することで、効果が高まります。

意識すべき3要素

要素内容
目的何のために行うのか(健康維持、体力向上など)
意義どんな効果があるのか(転倒予防、生活の質向上など)
内容どの部位をどう動かすのか

例:ウォーキングの場合

  • 目的:健康維持のため
  • 意義:心肺機能の向上、生活習慣病の予防
  • 内容:大きく腕を振って、姿勢を意識しながら歩く

2. 全面性の原則:バランスよく鍛える

なぜ大切?

特定の部位だけを鍛えると、体のバランスが崩れて怪我のリスクが高まります。

バランスの良い運動とは

  • 上半身だけでなく下半身も鍛える
  • 筋力トレーニングだけでなくストレッチも行う
  • 有酸素運動と無酸素運動を組み合わせる

厚生労働省の推奨

最新ガイドラインでは、筋力トレーニングを週2〜3日行うことが推奨されています。

有酸素運動だけでなく、筋力トレーニングも取り入れましょう。


3. 専門性の原則:目的に合わせて選ぶ

なぜ大切?

健康維持、リハビリ、競技力向上など、目的によって適した運動は異なります。

健康維持に効果的な組み合わせ

運動の種類具体例効果
有酸素運動ウォーキング、水泳、自転車心肺機能向上、生活習慣病予防
筋力トレーニングスクワット、腕立て伏せ筋力維持、転倒予防
ストレッチラジオ体操、ヨガ柔軟性向上、怪我予防

自分の目標に合わせて、適切な運動を選びましょう。


4. 個別性の原則:自分に合った方法で

なぜ大切?

年齢、性別、体力、健康状態など、一人ひとり違います。

他の人と全く同じ運動が、自分にも合うとは限りません。

考慮すべき個人差

  • 体格(身長・体重)
  • 年齢
  • 運動経験
  • 持病の有無
  • 現在の体力レベル

注意点

持病のある方や運動制限のある方は、必ず医師や理学療法士に相談してから始めましょう。

自分に合った内容で行うことが、安全で効果的な運動につながります。


5. 漸進性の原則:段階的に進める

なぜ大切?

いきなり高い目標に挑戦すると、怪我のリスクが高まります。

少しずつ難易度を上げていくことが、安全で効果的です。

段階的に進める例

段階歩行距離補助具
第1段階室内1〜5m平行棒
第2段階室内10m歩行器
第3段階屋外100m
第4段階屋外200m以上自立歩行

できることを少しずつ増やしていくことが、効果的です。


運動を始める前の注意点

安全に運動を行うために、以下の点に注意しましょう。

医師への相談が必要な方

以下に該当する方は、運動を始める前に必ず医師に相談してください。

  • 心臓病や高血圧などの持病がある方
  • 関節に痛みがある方
  • 手術後の方
  • 医師から運動制限を受けている方

運動中に注意すべき症状

運動中に以下の症状が出たら、すぐに中止して医療機関を受診してください。

  • 胸の痛みや圧迫感
  • 強いめまいや吐き気
  • 呼吸困難
  • 関節の強い痛み

個人差(健康状態、体力レベル)を踏まえて、無理のない範囲で行うことが大切です。


2024年版ガイドラインの新しいポイント

厚生労働省が2024年1月に公表した最新ガイドラインでは、新しい概念が加わりました。

「座位行動」という新概念

じっと座っている時間が長すぎると、健康に悪影響があることが分かってきました。

推奨される行動

  • 30分に1回は立ち上がる
  • 座りっぱなしを避ける
  • 立位が困難な方も、少しでも体を動かす

推奨事項の変化

ガイドラインは「基準」から「ガイド」に変わりました。

個人差を踏まえて、可能なものから取り組むことが推奨されています。

「今よりも少しでも多く体を動かす」ことが基本です。


よくあるご質問

Q1. 運動は毎日やらないとダメですか?

A. 毎日でなくても大丈夫です。

週2〜3回でも、継続することで効果は現れます。大切なのは「続けること」です。

厚生労働省のガイドラインでは、筋力トレーニングは週2〜3日が推奨されています。


Q2. 運動の強度はどれくらいが適切?

A. 「ややきつい」と感じる程度が目安です。

会話ができるくらいの強度が理想的です。息が上がりすぎる場合は、強度を下げましょう。


Q3. 年齢が高くても運動を始めて大丈夫?

A. 大丈夫です。むしろ、高齢者ほど運動が重要です。

ただし、持病のある方や体力に不安がある方は、医師や理学療法士に相談してから始めましょう。

個人差を踏まえた運動強度の調整が大切です。


Q4. どの運動を選べばいいか分かりません

A. 自分の目的に合わせて選びましょう。

健康維持なら、ウォーキングなどの有酸素運動と、週2〜3日の筋力トレーニングの組み合わせがおすすめです。

迷ったら、理学療法士などの専門家に相談すると安心です。


Q5. 効果が出るまでどれくらいかかりますか?

A. 個人差がありますが、2〜4週間程度で変化を感じる方が多いです。

ただし、長期的な継続が大切です。運動をやめると効果は失われていきます(可逆性の原理)。


まとめ

運動やリハビリの基本となる「原理・原則」についてご紹介しました。

この記事のポイント

3つの原理(必ずそうなること)

  • 過負荷の原理:「ややきつい」が効果的
  • 特異性の原理:目的に合った運動を選ぶ
  • 可逆性の原理:継続が大切

5つの原則(守ると効率が上がること)

  • 意識性の原則:目的を理解して取り組む
  • 全面性の原則:バランスよく鍛える
  • 専門性の原則:目的に合わせて選ぶ
  • 個別性の原則:自分に合った方法で
  • 漸進性の原則:段階的に進める

今日からできること

まずは、日常生活の中で意識してみましょう。

  • エレベーターの代わりに階段を使う
  • いつもより少し速く歩いてみる
  • 30分に1回は立ち上がる

小さなことから始めて、無理なく続けることが大切です。

専門家に相談するタイミング

以下のような場合は、理学療法士などの専門家に相談することをおすすめします。

  • 自分に合った運動が分からない
  • 持病があり運動に不安がある
  • 正しいフォームを確認したい
  • リハビリの進め方を知りたい

一人ひとりの状態に合わせた適切なアドバイスを受けることができます。

運動の原理・原則を理解して、安全で効果的な健康づくりを始めましょう。


📚 参考文献

  1. 厚生労働省. 健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023. 2024.
  2. 公益社団法人日本理学療法士協会, 一般社団法人日本理学療法学会連合 理学療法標準化検討委員会ガイドライン部会. 理学療法ガイドライン第2版. 医学書院, 2021.
  3. 厚生労働省. 運動プログラム作成のための原理原則. e-ヘルスネット.
  4. World Health Organization. WHO Guidelines on Physical Activity and Sedentary Behaviour. 2020.
  5. 日本栄養士会. 【厚生労働省】「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」を公表. 栄養業界ニュース.

執筆者情報

理学療法士

本記事は、最新の文献・ガイドラインに基づいて作成しています。


免責事項

本記事の情報は一般的な内容です。個人の状態により適切な方法は異なります。

持病のある方、運動制限のある方は、必ず医師にご相談ください。

症状が改善しない場合や悪化する場合は、速やかに医療機関を受診してください。

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