こんにちは。理学療法士として肩の痛みに悩む患者さんと日々向き合う中で、「朝起きたら突然肩が痛くて動かせなくなった」「夜も痛くて眠れない」という切実な声をたくさん聞いてきました。そして、多くの方が「五十肩だから、時間が経てば治る」「我慢するしかない」と思い込んでいらっしゃいます。
でも、本当にそうでしょうか?
肩関節周囲炎、いわゆる五十肩は、確かに時間とともに改善する場合もあります。しかし、
適切なリハビリテーションを行うことで、回復までの時間を大幅に短縮し、後遺症を残さずに済む可能性が高まります
逆に、何もせずに放置すると、1年以上も痛みや動きの制限が続くこともあるんです。
今日は、五十肩のリハビリについて、各段階で何が起きているのか、どんなアプローチが効果的なのか、現場で実際に患者さんの回復を見てきた立場から、できるだけ分かりやすくお話ししたいと思います。
五十肩って、本当はどんな状態? 意外と知られていない真実
「五十肩」という呼び名はよく知られていますが、実際にどんな状態なのか、正しく理解している方は意外と少ないんです。
肩関節を包む「袋」が固まってしまう
肩関節は、関節包という袋のような組織に包まれています。五十肩では、この関節包に炎症が起こり、徐々に固く縮んでしまうんです。
イメージとしては、柔らかいビニール袋が乾燥して硬くなり、伸び縮みしなくなってしまう感じです。だから、腕を上げようとしても、この固まった袋が邪魔をして動かせなくなるわけです。
40代から60代に多いけれど、理由は完全には分かっていない
「五十肩」という名前ですが、実際には40代から60代の方に幅広く発症します。なぜこの年代に多いのか、実は医学的に完全には解明されていません。ホルモンバランスの変化や、長年の肩への負担の蓄積などが関係していると考えられています。
大切なのは、「年齢のせい」と諦めるのではなく、適切に対処することです。
五十肩の「3つの顔」を理解することが回復への第一歩
五十肩は、時間とともに症状が変化していきます。この変化を理解することが、効果的なリハビリの鍵になります。
第1段階:疼痛期(とうつうき)—激しい痛みとの戦い
発症から約1〜3ヶ月続くこの時期は、とにかく痛みが強い時期です。
- じっとしていても痛い
- 夜、寝ている時に痛みで目が覚める(夜間痛)
- 痛くて肩を動かせない
- 少し動かそうとするだけで激痛が走る
この時期の患者さんからよく聞くのは、「着替えができない」「髪を洗えない」「痛みで眠れない」という言葉です。日常生活のあらゆることが困難になり、精神的にも辛い時期なんです。
第2段階:拘縮期(こうしゅくき)—固まる肩との付き合い方
疼痛期を過ぎると、激しい痛みは少し落ち着いてきます。でも、安心するのはまだ早い。この時期、約3〜12ヶ月続く拘縮期では、肩の動きがどんどん制限されていきます。
- 激痛は減ったが、動かすと痛い
- 肩がガチガチに固まって動かない
- 腕が上がらない、後ろに回せない
- 生活上の不便さが続く
「痛くないから大丈夫」と油断して動かさないでいると、この時期に肩がどんどん固まってしまいます。実は、ここが最もリハビリが重要な時期なんです。
第3段階:回復期—希望の光が見えてくる
約6ヶ月から1年以上かけて訪れる回復期では、痛みがさらに軽減し、少しずつ動きが戻ってきます。
- 痛みがほとんど消える
- 徐々に動かせる範囲が広がる
- 日常生活の動作が楽になる
ただし、適切なリハビリをしないと、完全には元に戻らないケースも多いのが現実です。
最近の研究では、早期からの適切な理学療法介入が、痛みの期間短縮と機能回復に有効であることが示されています。つまり、「自然に治るのを待つ」より、「積極的にリハビリする」方が、明らかに良い結果が得られるんです。
各段階で「すべきこと」「してはいけないこと」
五十肩のリハビリで最も大切なのは、今、自分がどの段階にいるかを見極めることです。
疼痛期:無理は禁物、でも完全安静もNG
この時期、患者さんからよく聞かれるのが「動かしていいんですか?」という質問です。
答えは、「痛みの範囲内で、優しく動かす」です。
完全に動かさないでいると、固まるスピードが早まってしまいます。でも、無理に動かして炎症を悪化させるのも逆効果。このバランスが難しいんです。
この時期におすすめなのが
- 振り子運動(アイロン体操):体を前に倒し、重力に任せて腕を優しく揺らす
- 肩周りの筋肉を温める
- 痛み止めと並行したリハビリ
「我慢して動かす」のではなく、「痛くない範囲で、少しずつ」が合言葉です。
拘縮期:ここが勝負時!積極的に動かす
痛みが落ち着いてきたこの時期こそ、リハビリの本番です。ここで頑張るかどうかで、最終的な回復度合いが大きく変わります。
固まった関節包を少しずつ伸ばしていくイメージで、毎日コツコツと可動域を広げていきます。多少の痛みを伴っても、「伸ばされている感じ」を意識しながら運動することが大切です。
回復期:機能を取り戻す仕上げの時期
動きが戻ってきたら、筋力を回復させ、日常生活に必要な動作を滑らかに行えるように訓練します。ここで手を抜くと、微妙な動きの制限が残ってしまうことがあります。
現場で効果を実感しているリハビリ方法
理学療法士として、実際に効果が高いと感じているリハビリ方法をご紹介します。
振り子運動:五十肩リハビリの定番
椅子や机に手をついて体を前に倒し、痛い方の腕を重力に任せて前後左右に揺らします。
なぜこれが効果的かというと、自分の筋肉を使わず、重力の力だけで動かせるからです。力を入れる必要がないので、痛みが強い時期でも安全に行えます。
朝昼晩、1日3回、各方向30回ずつを目安に行いましょう。
壁登り運動:少しずつ高みを目指す
壁に向かって立ち、指で壁を歩くように腕を上げていきます。前からだけでなく、横からも行います。
ポイントは、毎日1センチずつでも高く登ることです。壁に印をつけて、昨日より上を目指すと、モチベーションも上がります。
抵抗バンドを使った筋力トレーニング
拘縮期から回復期にかけては、筋力の回復も重要です。
- 肩の外旋運動:脇を締めて、抵抗バンドを外側に引く
- 肩甲骨の運動:肩甲骨を寄せたり、上下に動かす
弱い抵抗から始めて、徐々に強くしていきます。
タオルを使った自主トレーニング
タオル一本あれば、自宅でも効果的なストレッチができます。
- タオルを背中で持ち、痛くない方の手で引っ張る
- 両手でタオルを持ち、腕を上げる
特別な器具がなくても、工夫次第で色々な運動ができるんです。
私たちが現場で感じる「タイミングの重要性」
長年、五十肩の患者さんと向き合ってきて、はっきりと言えることがあります。
早く始めた人ほど、回復も早い
発症から3ヶ月以内にリハビリを始めた方と、半年以上経ってから始めた方では、回復までの期間が明らかに違います。
国際的な研究でも、五十肩に対する早期の運動療法とモビライゼーション(関節を動かす手技)の有効性が証明されています。
「自己流」の限界
患者さんの中には、インターネットで調べた方法を自己流で試している方もいらっしゃいます。でも、正しくない方法で無理に動かすと、かえって症状を悪化させることもあるんです。
特に五十肩は、段階によってアプローチが全く異なるため、専門家の評価と指導が欠かせません。
「継続は力なり」を実感する毎日
週に1回1時間リハビリに来るより、毎日15分自宅で運動する方が、圧倒的に効果が高いです。
ある患者さんは、「毎朝、歯磨きの後に必ず振り子運動をする」と決めて習慣化したところ、見違えるほど回復されました。日常生活に組み込んで習慣化することが、成功の秘訣です。
「いつ治るの?」「どこまで治るの?」正直にお答えします
患者さんが最も知りたいのは、この2つの質問だと思います。
回復までの期間:個人差が大きい
正直に申し上げると、6ヶ月から2年程度と、個人差がとても大きいです。
- 早期からリハビリを開始した場合:6〜12ヶ月
- 放置して自然経過に任せた場合:1〜2年以上
適切なリハビリで、回復期間を半分程度に短縮できる可能性があります。
「完全に元通り」になるのか?
多くの場合、日常生活に支障のないレベルまで回復します。ただし、わずかな可動域制限が残ることもあります。
大切なのは、「元通り100%」を目指すより、「困らない生活ができること」を目標にすることです。
自費リハビリで得られるメリット
保険診療では、週に1〜2回、1回20分程度が一般的です。でも、五十肩の回復には、もっと丁寧で集中的なアプローチが効果的なんです。
- 60分かけて徹底的に評価と治療
- あなたの生活スタイルに合わせたプログラム作成
- 段階に応じた柔軟なアプローチ変更
- より専門的な手技療法の実施
時間をお金で買うことで、結果的に早く治り、トータルのコストも抑えられることが多いんです。
リハビリを始める前に知っておいてほしいこと
正しい心構えを持つことが、成功への第一歩です。
「焦らない、でも諦めない」が大切
五十肩の回復には時間がかかります。1週間や2週間で劇的に変わることはありません。でも、3ヶ月後、6ヶ月後に振り返ると、確実に変化を感じられます。
日記をつけて、「今日はここまで腕が上がった」と記録すると、小さな進歩を実感できてモチベーションが保てます。
「痛いけど動かす」勇気
拘縮期には、多少の痛みを伴っても動かす必要があります。これは「痛みを我慢する」のとは少し違います。
「伸ばされている痛み」はOK、「炎症が悪化する痛み」はNGです。この見極めが難しいので、専門家の指導が不可欠なんです。
反対側の肩も要注意
五十肩を経験した方の約20〜30%が、数年以内に反対側の肩にも発症すると言われています。
片方が治った後も、予防的な運動や姿勢の改善を続けることが大切です。
まとめ:時間はかかるけれど、今より良くなる
肩関節周囲炎(五十肩)は、確かに時間のかかる疾患です。でも、適切なリハビリテーションによって、回復期間を短縮し、より良い結果を得ることができます。
大切なポイントをもう一度
- 早期からのリハビリ開始が回復の鍵
- 段階に応じた適切なアプローチが必要
- 毎日のコツコツとした運動が最も効果的
- 専門家の指導で、正しく安全に進める
「夜も眠れないほど痛い」「もう腕が上がらない」と諦めている方、一人で悩まないでください。私たちと一緒に、一歩ずつ回復への道を歩んでいきましょう。
あなたの肩が、また自由に動く日は必ず来ます。その日を早く迎えるために、今日から始めませんか?
参考文献
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理学療法士 専門分野:整形外科リハビリテーション、肩関節疾患治療
免責事項 本記事は医学的知識に基づいて作成されていますが、個別の医療相談に代わるものではありません。健康状態に不安がある場合や、持病をお持ちの方は、必ず医師や理学療法士にご相談ください。