お酒をよく飲む人は筋肉がつきにくい?飲酒と回復を理学療法士が解説
2026.09.14
豆知識
「運動しているのに、なかなか体が変わらない」もしお酒が好きなら、飲酒が一因かもしれません。
実は、飲酒は筋肉の回復や成長に影響する可能性が指摘されています2。晩酌を楽しみにしている方には、少し気になる話ではないでしょうか。理学療法士として回復に向き合う中で、生活習慣が体づくりを左右すると実感してきました。この記事では、お酒と筋肉・回復の関係を、その仕組みからわかりやすくお伝えします。
💡 この記事は、飲酒と体づくりに関する一般的な健康情報をお届けするものです。個別の診断や治療に代わるものではありません。飲酒や健康の不安がある場合は、医療機関にご相談ください。
目次
- お酒は筋肉づくりにどう関わるのか?
- 飲酒が筋肉の回復を妨げる仕組み
- お酒と睡眠の質の関係
- どのくらいの量が影響するのか?
- お酒と上手につきあうためのヒント
- 運動と回復を両立させる考え方
- よくある質問(FAQ)
- まとめ
お酒は筋肉づくりにどう関わるのか?
運動をすると、筋肉には小さな損傷が生まれます。体は、それを修復しながら、より強い筋肉をつくろうとします。この修復の作業を「筋タンパク質の合成」と呼びます。
ところが、飲酒はこの合成を妨げる可能性があります2。せっかく運動でスイッチが入った修復が、うまく進まなくなるのです。お酒好きの方には、少し残念な事実かもしれません。
ただし、これは「飲んだら筋肉が消える」という話ではありません。あくまで、回復の効率が下がりやすいという傾向です。仕組みを知れば、上手につきあう方法も見えてきます。お酒を悪者にするのではなく、飲み方を工夫するという視点が役立ちます。
飲酒が筋肉の回復を妨げる仕組み

修復のスイッチが入りにくくなる
筋肉の合成には、「mTOR」という司令塔が関わります。運動の後は、この司令塔が活発に働きます。しかし、アルコールを摂ると、その働きが抑えられると報告されています2。
ある研究では、運動後にアルコールを摂った場合、筋タンパク質の合成が下がったと報告されました2。運動でせっかく高めた修復力が、十分に生かせなくなるのです。とくに運動直後の飲酒は、影響が出やすいと考えられます。
水分やホルモンにも影響する
アルコールには、利尿作用があります。トイレが近くなり、体の水分が失われやすくなります。水分が不足すると、筋肉への栄養の巡りも滞りがちになります。
さらに、飲酒は体づくりに関わるホルモンにも影響するとされています。これらが重なることで、回復の効率が下がると考えられます。飲むときは、水分補給をあわせて意識したいところです。運動を頑張った日ほど、回復の環境を大切にしたいものです。
お酒と睡眠の質の関係
「お酒を飲むとよく眠れる」と感じる方は多いでしょう。確かに、寝つきはよくなることがあります。しかし、眠りの質という点では、注意が必要です。
体の修復には、深い眠りが欠かせません。入眠直後の深い睡眠に合わせて、修復に関わるホルモンが分泌されるとされています3。ところが飲酒は、夜間の眠りを浅くしやすいと言われています。
眠りが浅くなると、回復の効率も下がりがちです。寝つきの良さと、眠りの深さは別物なのです。深い休養を得るには、飲み方の工夫が大切になります5。
どのくらいの量が影響するのか?
ここで気になるのが、「どれくらい飲むと影響するのか」でしょう。厚生労働省は、飲酒量を「純アルコール量」で把握することを勧めています1。お酒の種類ではなく、含まれるアルコールの量で考える方法です。
ガイドラインでは、生活習慣病のリスクが高まる量も示されています。1日あたり、男性で純アルコール40グラム以上、女性で20グラム以上が一つの目安です1。ただし、少量でもリスクがゼロというわけではありません1。
また、アルコールの分解には個人差が大きいものです。顔が赤くなりやすい方は、体質的に量を控えるほうが安全です。自分の体質を知ることも、大切な視点になります。

飲んだ翌日、体に起きていること
飲みすぎた翌日、体が重いと感じることがあります。これは、体が回復に追われているサインかもしれません。アルコールの分解には、体のエネルギーや水分が使われます。
その分、筋肉の修復にまわる余力が減りがちです。運動のパフォーマンスも、落ちやすくなります。翌日に大事な予定があるなら、前夜の量を控える判断も一つの手です。
また、脱水が残るとむくみやだるさにもつながります。飲んだ後は、水分をしっかり補うことが役立ちます。翌朝の軽い水分補給も、体をいたわる小さな習慣になります。
年齢とともに気をつけたい飲酒と筋肉
飲酒と筋肉の関係は、年齢を重ねるほど意識したいテーマです。加齢とともに、筋肉は自然と減りやすくなります。この変化は「サルコペニア」とも呼ばれます。
筋肉が減ると、立つ・歩くといった動作にも影響します。だからこそ、中高年期は筋肉を保つ工夫が大切になります6。飲みすぎが続くと、その努力を打ち消してしまうこともあります。
「食事代わりのお酒」に注意
お酒を飲むと、食事がおろそかになりがちです。おつまみだけで済ませ、たんぱく質が不足することもあります。筋肉の材料が足りなければ、体づくりは進みません。
晩酌のときも、たんぱく質を含む食事を意識しましょう。魚・豆腐・卵などは、手軽に取り入れられます。お酒と食事のバランスが、筋肉を守る鍵になります。

飲まない日をつくる意味
毎日の飲酒は、体の回復に休む間を与えません。週に何日か、飲まない日を設けてみましょう。体を修復する時間を確保することにつながります。
休肝日は、肝臓だけでなく、体全体の回復にも役立ちます。無理なく続けられる頻度から始めるとよいでしょう。少しずつ、体をいたわる習慣を積み重ねていきましょう。
お酒と上手につきあうためのヒント
「お酒はやめたくない」という方も多いでしょう。完全にやめる必要はありません。少しの工夫で、体への負担を抑えることができます。
- 運動の直後は、飲酒を少し時間を空けてからにする
- 飲むときは水(チェイサー)をこまめにとる
- たんぱく質を含むおつまみを一緒に食べる
- 就寝の直前は、深酒を避ける
- 休肝日をつくり、飲まない日を設ける
これらは、どれも今日から始められる工夫です。完璧を目指すより、続けられる形を見つけることが大切です。無理のない範囲で、体をいたわる習慣を育てましょう。
運動と回復を両立させる考え方

体づくりは、運動だけで完成するものではありません。運動・栄養・休養の三つがそろって、はじめて効果が生きてきます。飲酒は、この栄養と休養の質に関わります。どれか一つが欠けると、全体の効果も下がりやすくなります。
言いかえれば、飲み方を整えることは、運動の効果を守ることでもあります。せっかくの運動を無駄にしないためにも、回復の環境づくりは大切です。お酒とのつきあい方も、その一部と考えてみましょう。
厚生労働省は、成人と高齢者に週2〜3日の筋力トレーニングを勧めています4。運動を続けることは、体づくりの土台です。その効果を生かすためにも、回復の環境を整えることが役立ちます。
自分の体づくりが思うように進まないときは、生活全体を見直してみましょう。運動の内容だけでなく、飲酒・睡眠・食事も含めて考える。筋肉がつくまでの時間と体の仕組みも、あわせて参考にしてみてください。
よくある質問(FAQ)
Q. お酒を飲むと、本当に筋肉がつきにくくなりますか?
A. 飲酒は筋タンパク質の合成を妨げる可能性が報告されています。とくに運動直後の飲酒は影響が出やすいとされています。ただし、影響の程度は量やタイミングによって変わります。適量を意識し、運動直後を避けることが一つの目安です。
Q. 運動後、どれくらい時間を空ければお酒を飲めますか?
A. 明確な時間は決まっていませんが、運動直後は避けるほうがよいとされています。まずは水分とたんぱく質で回復を優先しましょう。その上で、少し時間を空けてから楽しむのが一つの目安です。量を控えめにすることも役立ちます。
Q. お酒を飲むと眠れるのですが、体には良いのですか?
A. 寝つきはよくなることがありますが、眠りは浅くなりやすいとされています。深い眠りは体の修復に欠かせません。寝つきの良さと眠りの深さは別物です。深酒は避け、就寝前の量を控えることをおすすめします。
Q. お酒の適量はどのくらいですか?
A. 純アルコール量で把握するのが基本です。生活習慣病のリスクが高まる目安は、1日で男性40グラム以上、女性20グラム以上とされています。ただし少量でもリスクはゼロではありません。体質による個人差も大きいため、無理のない量を意識しましょう。
Q. お酒をやめれば、筋肉はつきやすくなりますか?
A. 飲酒による影響が減ることで、回復の環境は整いやすくなります。ただし、筋肉づくりは運動・栄養・休養の総合力で決まります。お酒を控えるだけでなく、運動と食事、睡眠もあわせて整えることが大切です。全体のバランスを意識しましょう。
まとめ|お酒は「量とタイミング」がカギ
飲酒は、筋肉の回復や睡眠の質に影響する可能性があります。運動で高めた修復力を、十分に生かせなくなることもあります。とはいえ、完全にやめる必要はありません。
大切なのは、量とタイミングを意識することです。運動直後を避ける、水分をとる、深酒を控える。こうした小さな工夫が、体づくりを後押しします。お酒を楽しみながら、体もいたわることは十分に両立できます。
そして、体づくりの本当の土台は、日々の動作にあります。立つ・歩く・しゃがむといった生活動作を、専門家と一対一で、無理のないペースで整えていく。地味に見えても、その積み重ねが、飲酒習慣に左右されにくい丈夫な体をつくります。お酒とのつきあい方を見直すことは、その第一歩になるかもしれません。
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参考文献
1. 厚生労働省. 健康に配慮した飲酒に関するガイドライン. 2024.
2. Parr EB, ほか. Alcohol Ingestion Impairs Post-Exercise Rates of Myofibrillar Protein Synthesis. PLOS One, 2014.
3. 厚生労働省 e-ヘルスネット. ノンレム睡眠.
4. 厚生労働省. 身体活動・運動ガイド2023 情報シート:筋力トレーニングについて. 2024.
5. 厚生労働省 e-ヘルスネット. 快眠と生活習慣.
6. 健康長寿ネット(長寿科学振興財団). 健康長寿を実現する運動. 2025.
執筆者情報
本記事は、理学療法士が監修・執筆しました。リハビリテーションの現場で、生活動作の回復に携わる立場から、科学的根拠に基づいた情報をお届けしています。