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体幹を鍛えるとどう変わる?一般人からアスリートまで使える”コアの科学”【2026年版】

2026.05.23

リハビリ

体幹を鍛えるとどう変わる?一般人からアスリートまで使える”コアの科学”【2026年版】

💡 この記事について
本記事は体幹トレーニングに関する一般的な健康情報を提供するものです。個別の症状や疾患をお持ちの方は、必ず医療機関にご相談のうえ実施してください。

「体幹を鍛えなさい」と言われたとき、真っ先に思い浮かぶのは腹筋運動でしょうか。

あるいはプランクポーズ?実は「体幹=腹筋」という理解は、少し惜しいんです。

体幹とは、腕と脚を除いた胴体全体のこと。そこには腹筋はもちろん、背中の深い筋肉、横隔膜、骨盤底筋群まで含まれます。これら全部が連動して初めて「体幹が使えている」状態になるのです。

この記事では、体幹の基礎知識から日常生活への影響まで解説します。アスリートのパフォーマンスとの関係も理学療法士の視点からお伝えします。「なんとなく大事そう」で終わっていた体幹トレーニングの「なぜ」が、きっとスッキリするはずです。

目次

  • 体幹とは何か?よくある誤解を整理する
  • 体幹が担う3つの役割
  • 日常生活への影響|「なんとなくしんどい」の正体
  • アスリートの体幹はどう違う?
  • 年齢別・目的別のトレーニングアプローチ
  • 今日からできる体幹トレーニング3選
  • よくある質問(FAQ)
  • まとめ

体幹とは何か?よくある誤解を整理する

「体幹=腹筋」ではない

体幹(コア)とは、頭・腕・脚を除いた胴体部分全体を指します。具体的には以下の筋群が含まれます1

  • 腹部の深層筋:腹横筋・腹斜筋・腹直筋
  • 背部の深層筋:多裂筋・脊柱起立筋
  • 体幹の天井:横隔膜
  • 体幹の床:骨盤底筋群

この4つが円筒形の「コアシリンダー」を形成しています。いわば胴体の中にある圧力容器のようなイメージです。腹筋だけを鍛えても、横隔膜や骨盤底筋が使えていなければ不十分です。シリンダーとしての機能は半分以下になってしまいます。

ちなみに、横隔膜の体幹への関わりについては、呼吸を鍛えると体が強くなる?横隔膜と心肺機能の科学でも詳しく解説していますので、あわせて読んでみてください。

表層筋と深層筋の違いが重要

体幹の筋肉は大きく2種類に分けられます。

グローバル筋(表層筋)は腹直筋や外腹斜筋など、見た目にわかる大きな筋肉です。素早い動きや大きな力を発揮するのが得意です。

ローカル筋(深層筋)は腹横筋や多裂筋など、体の深部にある細い筋肉です。動き出しの0.03秒前から自動的に収縮し、脊椎を守る「先行収縮」を担います2

腰痛持ちの方に多いのが、このローカル筋の機能低下です。表面の筋肉でカバーしようとするため、疲れやすくなり、慢性痛にもつながりやすいとされています。

体幹が担う3つの役割

①脊椎の保護と安定

脊椎は24個の椎骨が積み重なった構造です。この積み木の塔を支えるのが体幹筋群の最大の役割です。体幹が機能しているとき、腹腔内の圧力(腹腔内圧)が高まり、脊椎への負担を大幅に減らします1

重いものを持ち上げる直前に、自然と息を止めて腹圧をかける経験はありませんか?あれは体幹が脊椎を守ろうとしている無意識の反応なんです。

②力の伝達路として機能する

野球のピッチャーが速い球を投げるとき、力は足から始まって体幹を通り、腕へと伝わります。この「運動連鎖」において、体幹は力の中継点です。

体幹が不安定だと、足で生み出したエネルギーが途中で分散してしまいます。腕や脚どれだけ鍛えても、体幹が弱ければ「水漏れするホース」状態です。力が逃げてしまうんです3

③バランスと姿勢の維持

立つ・歩く・座る、これら全ての動作において体幹は絶えず微細な調整を行っています。目を閉じて片足立ちをするとき、体がゆらゆら動くのを感じますよね。あの細かい調整の多くは体幹筋が担っています。

高齢になると転倒リスクが高まりますが、その背景には体幹機能の低下も大きく関係しています4

日常生活への影響|「なんとなくしんどい」の正体

慢性腰痛との関係

日本人の約3,000万人が腰痛に悩んでいるとされています5。慢性腰痛の多くは、体幹深層筋(特に多裂筋)の萎縮や機能低下が関係しています。

面白いのは、腰痛が発症すると体幹筋の活動が落ちる点です。それがさらに腰痛を悪化させる悪循環につながります。痛みが怖くて動かさない→筋肉が使われない→さらに不安定になる、というサイクルです。

現在の腰痛診療ガイドラインでは、慢性腰痛に対する適切な運動療法が推奨されています5。体幹安定化トレーニングもその一つです。「安静にするのが一番」という時代は、もう過去のことになっています。

疲れやすさ・肩こりとの意外な関係

「デスクワークで夕方になると肩がバキバキになる」という方は多いと思います。実はこれ、体幹の問題が絡んでいることがあります。

体幹が弱いと、座っているだけで姿勢を保つために表層筋が常にがんばり続けます。特に首・肩まわりの筋肉が過剰に働くため、疲労が蓄積しやすくなるんです。

腰だけでなく、肩こりや首こりに悩んでいる方にとっても、体幹トレーニングは「意外な特効薬」になり得ます。

高齢者の転倒予防にも直結

65歳以上の転倒は深刻な問題です。転倒した高齢者の約20%がその後1年以内に介護が必要な状態になるとされています4。体幹トレーニングは転倒予防においても効果が期待されており、バランス能力の向上に貢献します。

転倒リスクの詳細は、別の記事でも解説しています。「転びやすくなった」は老化じゃない|転倒リスクを下げる3つの機能もあわせてご覧ください。

アスリートの体幹はどう違う?

プロアスリートのコア戦略

トップアスリートの体幹は、一般人と比べて「反応速度」が段違いです。動き出しの瞬間に体幹がすでに収縮していて、関節を守りながら最大のパワーを発揮できる状態になっています。

サッカーでは方向転換・シュート・ヘディングなど、瞬時の体幹制御が要求される動作が連続します。世界トップレベルの選手ほど、体幹トレーニングに多くの時間を割いているのはそのためです3

アスリートの体幹活用については、こちらの記事もご覧ください。サッカー選手の驚異的な身体能力|理学療法士が解説するトップアスリートの秘密

競技種目別の体幹の使い方

体幹の使い方は競技によって異なります。

水泳では、水の抵抗を最小限にする「流線型の体軸」を保つために体幹が使われます。腹圧をかけながら腰のそりを抑えることで、推進力が最大化されます。

陸上短距離では、地面反力を効率よく推進力に変換する役割を体幹が担います。接地時間が0.1秒を切る世界では、体幹の反応速度が記録を左右します。

格闘技では、打撃を受けたときの衝撃吸収と、打つ瞬間の爆発的なパワー発揮の両方を体幹が担います。攻防の両面で体幹が機能していなければ、技術をいくら磨いても伸び悩みます。

一般人とアスリートの差はどこにある?

体幹の「強さ」よりも「制御力(コントロール)」の差が大きいとされています。同じプランクができる秒数でも、アスリートは体幹の各筋肉を適切なタイミングで使い分けています。

これは何年もかけて習得されるものです。しかし逆にいえば、適切なトレーニングを続ければ年齢を問いません。体幹の「使い方」は改善できるということでもあります2

年齢別・目的別のトレーニングアプローチ

20〜40代:パフォーマンス向上と腰痛予防

この世代は仕事・育児・スポーツなど、体幹への需要が最も高い時期です。腰痛の予防と競技パフォーマンスの両立が目標になります。

まずはドローインやバードドッグから始めましょう。慣れてきたらプランクやデッドバグへステップアップします。週3回・10〜15分の継続が現実的な目安です1

50〜60代:姿勢改善と転倒予防の準備

加齢とともに深層筋は特に失われやすいとされています。この世代では「強く鍛える」よりも「正しく使える」ことが優先されます。

ポイントは「腹圧を高める感覚」を身につけることです。呼吸に合わせてお腹を引き込む練習(ドローイン)は、特別な道具も場所も不要で始められます。

70代以降:安全に動ける体を維持する

高齢者の体幹トレーニングでは、転倒リスクを下げながら実施することが最優先です。椅子に座った状態でできる「シーテッドコアエクササイズ」も有効です。

運動能力は何歳になっても改善できます。運動能力は何歳からでも上げられる|理学療法士が教える5つの鍛え方も参考にしてみてください。

今日からできる体幹トレーニング3選

ここでは、深層筋に効果的で、腰への負担が少ない3つのエクササイズを紹介します。痛みがある場合は無理せず、専門家に相談してから行ってください。

①ドローイン(難易度:初級)

深層筋(腹横筋)を直接活性化させる基本中の基本です。

  • 仰向けに寝て膝を軽く立てる
  • 鼻からゆっくり息を吸う
  • 口から細く息を吐きながら、おへそを背骨に近づけるようにお腹を引き込む
  • この状態で10秒キープ。5〜10回繰り返す

ポイントは「お腹を凹ませる」だけで、息を止めないこと。呼吸しながらキープできることが正しい深層筋への刺激につながります。

②バードドッグ(難易度:初〜中級)

体幹の安定性と四肢の協調性を同時に鍛えられる優れたエクササイズです。

  • 四つん這いになり、背中をフラットに保つ
  • 右腕と左脚を同時にゆっくり伸ばす
  • 3秒キープして、ゆっくり元に戻す
  • 反対側も同様に。左右10回ずつ行う

腰が反ったり、体が傾いたりしないように注意します。体幹が使えていると、背中が板のように安定します。

③サイドプランク(難易度:中級)

腹斜筋と腰方形筋を強化し、体の側面からも安定性を高めます。

  • 横向きに寝て、肘を肩の真下に置く
  • 腰を持ち上げて体を一直線に保つ
  • 15〜30秒キープ。両側実施する

難しい場合は膝をついた状態から始めても大丈夫です。まず「お腹を引き込む」感覚を身につけることが先決です。

よくある質問(FAQ)

Q1. 体幹トレーニングは毎日やったほうがいいですか?

深層筋を中心としたトレーニングであれば、毎日実施しても回復への影響は少ないとされています。ただし、強度が高いものは週2〜3回が適切です。疲労感がある日は休息を優先してください。

Q2. 腰痛があってもできますか?

痛みのない範囲であれば、適切な体幹トレーニングは腰痛改善に役立つ可能性があります。ただし痛みが強い場合は医療機関を受診してから始めてください。神経症状(足のしびれなど)がある場合も同様です。自己判断は禁物です。

Q3. シックスパックと体幹の強さは別物ですか?

はい、別物です。腹直筋(シックスパック)は表層筋で、見た目には反映されやすいです。しかし脊椎の安定性に関与する深層筋とは役割が異なります。外見上お腹が割れていても、腰痛になる方は少なくありません。

Q4. プランクだけやっていれば十分ですか?

プランクは優れたエクササイズですが、静止した状態での安定性を鍛えるものです。日常生活では動きながら体幹を使う場面が多くあります。バードドッグのような「動的安定性」を鍛える種目も取り入れると効果的です。

Q5. 骨盤底筋も体幹に含まれるのですか?

はい、含まれます。骨盤底筋は体幹シリンダーの「底」を担い、腹腔内圧の維持に重要な役割を果たします。産後や高齢者で尿漏れが気になる方にとっても、体幹トレーニングは関係のある話です。詳しくは骨盤底筋を鍛えると何が変わる?産後・高齢者に必要な理由を理学療法士が解説もご覧ください。

まとめ

体幹トレーニングは「腹筋を鍛えること」ではありません。横隔膜・骨盤底筋・深層筋を含む胴体全体を「使える状態にする」ことです。

その効果は幅広い領域に及びます。慢性腰痛の予防・姿勢改善・肩こりの軽減・転倒予防・パフォーマンス向上など。一般の方もアスリートも、根っこにある「体幹の科学」は同じです。

まずはドローインから。1日5分、続けることが何よりの近道です。

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免責事項

記事の目的と性質

本記事は、体幹トレーニングに関する一般的な健康情報を提供することを目的としています。理学療法士の専門的視点から、科学的根拠に基づいた情報をわかりやすく解説していますが、以下の点にご注意ください。

本記事の限界

  • 個別診断の代替不可:本記事の情報は、あなた個人の症状や状態に対する診断・治療を提供するものではありません。
  • 医療行為ではない:記事内容は医療行為や医学的助言ではなく、一般的な情報提供です。
  • 自己判断のリスク:本記事の情報のみに基づく自己判断や自己治療は、症状の悪化や健康被害につながる可能性があります。

医療機関受診の推奨

以下の場合は、必ず医療機関を受診してください。

  • 痛みや不調が続いている場合
  • 症状が悪化している場合
  • 日常生活に支障が出ている場合
  • 持病や既往歴がある場合

情報の正確性について

本記事は2026年5月時点の最新情報に基づいて作成されており、信頼できる医学的根拠や公的ガイドラインを参照しています。医学・医療情報は常に更新されるため、将来的に内容が変更される可能性があります。

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参考文献

1. Akuthota V, Ferreiro A, Moore T, Fredericson M. Core stability exercise principles. Curr Sports Med Rep. 2008;7(1):39-44.

2. Huxel Bliven KC, Anderson BE. Core stability training for injury prevention. Sports Health. 2013;5(6):514-522.

3. Willardson JM. Core stability training: applications to sports conditioning programs. J Strength Cond Res. 2007;21(3):979-985. PMID:17685697.

4. 厚生労働省. 介護予防について. 厚生労働省, 2024.

5. 日本整形外科学会・日本腰痛学会監修. 腰痛診療ガイドライン2019(改訂第2版). 南江堂, 2019.(書籍のためリンクなし)

6. 厚生労働省. 健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023. 厚生労働省, 2023.

執筆者情報

本記事は、理学療法士の専門的視点から作成しました。科学的根拠に基づいた信頼性の高い情報提供を心がけています。

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