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体内時計とリハビリ効果の関係|朝と夕方、どちらが効果的?理学療法士が最新研究をもとに解説

2026.04.07

リハビリ

体内時計とリハビリ効果の関係|朝と夕方、どちらが効果的?理学療法士が最新研究をもとに解説

「リハビリって、朝やるのと夕方やるので効果が違うの?」

そんな疑問を持ったことはありませんか。実は、私たちの体には「体内時計」が備わっています。この体内時計が、筋力の発揮や脳の学習能力にまで影響を与えていることが、近年の研究で明らかになってきました。

この記事では、理学療法士の視点から、体内時計とリハビリ効果の関係を最新の研究をもとにわかりやすく解説します。「自分にとってベストなリハビリの時間帯」を考えるヒントになれば幸いです。

💡 この記事について

この記事は一般的な健康情報を提供するものであり、個別の医学的診断や治療の代わりとなるものではありません。症状や不安がある場合は、必ず医療機関を受診してください。


目次

  1. そもそも「体内時計」とは?
  2. 体内時計が体にもたらす1日のリズム
  3. 筋力発揮のピークは夕方だった?最新研究が示す事実
  4. 脳の学習能力にも「ベストタイム」がある
  5. では、リハビリに最適な時間帯は?
  6. 朝型?夜型?「クロノタイプ」という考え方
  7. 夜勤・夜職の方へ|体内時計が乱れた状態での対応法
  8. 体内時計を味方につける5つの生活習慣
  9. よくある質問(FAQ)
  10. まとめ

そもそも「体内時計」とは?

私たちの体には、約24時間周期で体の働きを調整する仕組みがあります。これが「体内時計(サーカディアンリズム)」です。

この時計の司令塔は、脳の奥にある「視交叉上核(しこうさじょうかく)」という小さな部位にあります。目から入った光の情報をもとに、全身にリズムの指令を送っています。

さらに、筋肉や肝臓、心臓など全身の細胞にも「末梢時計」と呼ばれる小さな時計が存在します。脳の「親時計」と体中の「子時計」が連動することで、私たちの体は1日のリズムを刻んでいるのです(長寿科学振興財団, 2023)。

専門的にいうと、この仕組みは時計遺伝子(Clock、Bmal1、Per、Cryなど)の働きによって制御されています。難しい名前ですが、「体の中に時間を刻む遺伝子がある」と考えていただければ十分です。


体内時計が体にもたらす1日のリズム

体内時計は、1日の中でさまざまな体の機能を変動させています。主な変化を見てみましょう。

体温の変化

体温は早朝に最も低く、日中にかけて上昇します。最も高くなるのは16時頃です。その後は徐々に低下し、夜に向かって休息モードに入ります。

この約1℃の変動が、筋肉の柔軟性や血流に大きく影響します。体温が高いときは筋肉が動きやすく、パフォーマンスが上がりやすい状態といえます。

ホルモンの日内変動

体内時計に影響を受ける代表的なホルモンは3つあります。

  • コルチゾール:起床前から午前中にかけてピークを迎えるストレスホルモン。体を覚醒させる役割があります
  • テストステロン:夜明け前から午前中に分泌が多くなります。筋肉の合成を促す働きがあるホルモンです
  • メラトニン:夜間に分泌される「睡眠ホルモン」。体を休息に導きます

つまり、午前中はホルモン面で筋肉の成長に有利な環境が整っています。一方で、体温やコルチゾールの変動を考えると、夕方は体が最も活動的な状態にあるといえるのです。


筋力発揮のピークは夕方だった?最新研究が示す事実

20年以上にわたる研究の蓄積から、筋力発揮は夕方16時〜20時にピークを迎えることが示されています(Schmoll et al., 2021)。

2025年に発表されたナラティブレビューでも、この傾向は改めて確認されました。体温の上昇、コルチゾールの低下、筋肉内の時計遺伝子の発現パターンが、夕方の身体パフォーマンスを後押ししていると考えられています(MDPI Biology, 2025)。

夕方トレーニングのメリット

2025年にPeerJに掲載された研究では、若年サッカー選手を対象に4つの時間帯(朝・昼・午後・夕方)で身体パフォーマンスを比較しました。その結果、夕方18時頃にスプリント能力や敏捷性が最も高くなることが確認されています(Bougrine et al., 2025)。

筋肥大にも時間帯の影響が?

ある研究では、朝と夕方のトレーニング群を24週間比較したところ、夕方に筋トレを行った群のほうが、13〜24週目の筋肉量の増加が大きかったという結果が報告されています。

ただし、筋力の向上そのものは朝・夕方ともに同程度でした。つまり、「どちらの時間帯でもトレーニング効果はある」という点が重要です。


脳の学習能力にも「ベストタイム」がある

リハビリでは、筋力だけでなく「動作の学習」も非常に大切です。歩き方を覚え直したり、新しい動作パターンを身につけたりするには、脳の「神経可塑性(しんけいかそせい)」が関わります。

この神経可塑性にも、体内時計が影響していることがわかってきました。

東北大学の研究(2025年)

2025年に東北大学の研究チームが発表した論文では、脳の神経細胞の反応性が時間帯によって異なることが直接観察されました。同じ刺激を与えても、時間帯によって脳の反応が変わるのです。

研究者は「脳が変化を受け入れやすいタイミングを知ることで、リハビリや学習の効率を高められる可能性がある」と述べています。

クロノタイプとの関係

Nature Communications(2021年)に掲載された研究では、朝型の人は午前中に、夜型の人は夕方に運動学習の成績が向上することが示されました。つまり、神経可塑性の高まる時間帯は「自分の体内時計のタイプ」によって異なる可能性があるのです。

⚠️ 神経可塑性に関する注意点

脳の学習能力と体内時計の関係は、まだ研究が進んでいる段階です。「この時間帯にリハビリをすれば確実に効果が上がる」と断定できるほどのエビデンスは、現時点では十分ではありません。あくまで参考情報としてお考えください。


では、リハビリに最適な時間帯は?

サーカディアンリズム

ここまでの内容を整理してみましょう。

時間帯強み向いているリハビリ
午前中(9〜11時)テストステロンが高い、覚醒度の上昇、体内時計リセットの好タイミング軽い運動療法、体内時計の調整目的の活動、認知系のリハビリ(朝型の人)
午後〜夕方(14〜18時)体温がピーク、筋力発揮が最大、筋肉の柔軟性が高い筋力トレーニング、バランス練習、持久系の運動、運動学習(夜型の人)

理学療法士としての見解

研究結果を総合すると、筋力発揮やパフォーマンスの観点では夕方が有利という傾向があります。

しかし、リハビリの現場ではもっと大切なことがあります。それは「継続できる時間帯を選ぶこと」です。

どれほど科学的に最適な時間帯であっても、生活リズムに合わなければ続きません。体調がよくモチベーションの高い時間帯に行うことが、結果として最も効果的なリハビリにつながると考えられています。


朝型?夜型?「クロノタイプ」という考え方

人にはそれぞれ「朝型」「夜型」という体内時計の個人差があります。これをクロノタイプと呼びます。

2025年のレビュー論文では、クロノタイプを考慮した個別化トレーニングが推奨されています(MDPI Biology, 2025)。

クロノタイプの簡易チェック

以下に当てはまるものが多い方を確認してみてください。

朝型タイプの特徴:

  • 朝早く自然に目が覚める
  • 午前中に集中力が高い
  • 夜は早めに眠くなる

夜型タイプの特徴:

  • 朝が苦手で起きるのがつらい
  • 夕方〜夜にかけて調子が上がる
  • 夜遅くまで活動できる

朝型の方は午前中のリハビリで効果を感じやすく、夜型の方は午後〜夕方のほうが体が動きやすいかもしれません。ただし、クロノタイプはあくまで目安です。実際の体調やスケジュールと合わせて判断することが大切です。


夜勤・夜職の方へ|体内時計が乱れた状態での対応法

夜勤や夜間のお仕事をされている方は、体内時計が通常とは異なるリズムで動いています。日本では労働者の約2割以上が深夜業を含む交代勤務に従事しているとされています(厚生労働省, 2012)。

体内時計のリズムが乱れた状態では、運動やリハビリの効果にも影響が出る可能性があります。ここでは、夜勤・夜職の方が体内時計をできるだけ整えながら運動やリハビリに取り組むための対応法をご紹介します。

1. 「起床後2〜3時間後」を運動のタイミングに

夜勤の方は、一般的な「夕方が最適」というアドバイスがそのまま当てはまりません。代わりに、自分の起床時刻を基準に考えることがポイントです。

体温は起床後に徐々に上昇し、起きてから約8〜10時間後にピークを迎えます。そのため、起床2〜3時間後であれば体温が十分に上がり、軽い運動やストレッチに適した状態になっています。

2. 光のコントロールが鍵

体内時計のリセットに最も強く作用するのは「光」です。

  • 夜勤明け:帰宅時にサングラスをかけて強い朝日を避ける
  • 起床後:室内で明るい照明を浴び、覚醒を促す
  • 就寝前:スマートフォンやPCのブルーライトを避ける

これにより、乱れた体内時計をできるだけ安定させることが期待できます。

3. 夜勤明けの激しい運動は避ける

夜勤明けの体は、体温が低下し始めるタイミングにあたります。この状態で激しい運動を行うと、ケガのリスクが高まるだけでなく、その後の睡眠の質にも悪影響を及ぼす可能性があります。

夜勤明けに体を動かしたい場合は、軽いストレッチや短時間のウォーキング程度にとどめることをおすすめします。

4. 食事のタイミングも体内時計に影響する

食事は体内時計の「末梢時計」をリセットする重要な同調因子です。

  • 起きてから1時間以内に朝食をとる
  • 夜勤中の食事は軽めにし、高脂肪食を避ける
  • 就寝3時間前には食事を終える

これらを意識するだけでも、体内時計の乱れを最小限に抑える効果が期待できます。

5. 無理をしないことが最優先

夜勤・交代勤務による体内時計の乱れは、睡眠障害や生活習慣病のリスクを高めることが報告されています(厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」)。

運動やリハビリの時間帯にこだわるよりも、まずは十分な睡眠を確保することが最も大切です。体調に不安がある場合は、無理をせず医療機関や理学療法士に相談してください。


体内時計を味方につける5つの生活習慣

リハビリの効果を最大限に引き出すには、日々の生活で体内時計を整えることが土台になります。以下の5つの習慣を意識してみてください。

1. 朝起きたら光を浴びる

朝日を浴びることで、体内時計がリセットされます。起床後15〜30分、窓際で過ごすだけでも効果が期待できます。曇りの日でも屋外の光は室内の数倍の明るさがあります。

2. 毎日同じ時間に起きる

休日も含めて起床時間を一定に保つことで、体内時計のリズムが安定します。「寝だめ」で遅くまで寝ると、かえってリズムが乱れてしまいます。

3. 朝食を抜かない

朝食は末梢時計のリセットに重要な役割を果たします。糖質とタンパク質を含む食事が効果的とされています。

4. 運動は日中〜夕方に

激しい運動は就寝の3時間前までに終えましょう。就寝直前の運動は交感神経を活発にし、寝つきが悪くなることがあります。

5. 夜のブルーライトを減らす

就寝1〜2時間前にはスマートフォンやパソコンの使用を控えましょう。メラトニンの分泌を妨げず、質の良い睡眠につながります。


よくある質問(FAQ)

Q1. リハビリは朝と夕方、どちらが効果的ですか?

研究では、筋力発揮は夕方にピークを迎える傾向があります。ただし、効果の差は大きくありません。最も大切なのは「継続できる時間帯」に行うことです。体調や生活リズムに合わせて選ぶことをおすすめします。

Q2. 朝のリハビリにはメリットがないのですか?

そんなことはありません。朝は体内時計のリセットに適しており、テストステロンの分泌も活発です。軽い運動で自律神経を切り替え、1日の活動モードに入るきっかけになります。朝型の方にとっては、運動学習の効率も高まる可能性があります。

Q3. 夜にしかリハビリの時間が取れません。問題ありますか?

就寝直前の激しい運動でなければ、大きな問題はありません。就寝の2〜3時間前までに終えるようにしましょう。軽いストレッチやヨガは、むしろ副交感神経を優位にし、睡眠の質を高める効果が期待できます。

Q4. 高齢者の場合、リハビリの時間帯は変わりますか?

加齢に伴い、体内時計のリズムが前倒しになる傾向があります。そのため、高齢者は朝方に体調が良い方が多い傾向にあります。ただし、個人差がありますので、担当の理学療法士に相談して最適な時間帯を決めることをおすすめします。

Q5. 体内時計の乱れは運動で改善できますか?

運動は体内時計の「同調因子」の一つとされています。特に日中の適度な運動は、夜のメラトニン分泌を促進し、睡眠の質を向上させる効果が期待できます。ただし、運動だけでなく、光や食事のタイミングも合わせて整えることが重要です。

Q6. 夜勤をしていますが、リハビリに通うべき時間帯はありますか?

夜勤の方は、起床後2〜3時間後を目安に体を動かすのが良いとされています。「時計の針」よりも「自分の体のリズム」を基準にすることがポイントです。無理のない範囲で、担当の専門家と相談しながらスケジュールを調整してください。

Q7. 毎日同じ時間にリハビリをしたほうが良いですか?

可能であれば、同じ時間帯に行うことをおすすめします。体が「この時間は運動の時間」と認識することで、体温やホルモンの準備が整いやすくなると考えられています。リハビリの習慣化にもつながります。


まとめ

体内時計は、筋力の発揮や脳の学習能力に影響を与えています。研究では夕方にパフォーマンスがピークを迎える傾向がありますが、リハビリで最も大切なのは**「自分のリズムに合った時間帯で、無理なく続けること」**です。

朝型・夜型というクロノタイプの違いや、夜勤などの生活環境も考慮しながら、自分に合ったリハビリのタイミングを見つけてみてください。

体内時計を整える生活習慣は、リハビリ効果を高めるだけでなく、日々の健康維持にもつながります。まずは「朝の光を浴びること」「食事と睡眠のリズムを整えること」から始めてみてはいかがでしょうか。

痛みや不調が続いている場合、症状が悪化している場合は、自己判断せず医療機関や理学療法士に相談してください。


免責事項

記事の目的と性質

本記事は、体内時計(サーカディアンリズム)とリハビリテーション効果の関係に関する一般的な健康情報を提供することを目的としています。理学療法士の専門的視点から、科学的根拠に基づいた情報をわかりやすく解説していますが、以下の点にご注意ください。

本記事の限界

  • 個別診断の代替不可: 本記事の情報は、あなた個人の症状や状態に対する診断・治療を提供するものではありません
  • 医療行為ではない: 記事内容は医療行為や医学的助言ではなく、一般的な情報提供です
  • 自己判断のリスク: 本記事の情報のみに基づく自己判断や自己治療は、症状の悪化や重大な健康被害につながる可能性があります

医療機関受診の推奨

以下の場合は、必ず医療機関を受診してください:

  • 痛みや不調が続いている場合
  • 症状が悪化している場合
  • 日常生活に支障が出ている場合
  • 持病や既往歴がある場合
  • 高齢者や妊娠中の方
  • 夜勤・交代勤務により体調不良が続いている場合

医師や理学療法士などの専門家による適切な診断と治療を受けることが最も重要です。

情報の正確性について

本記事は2026年2月時点の最新情報に基づいて作成されており、信頼できる医学的根拠や公的ガイドラインを参照しています。しかし、医学・医療情報は常に更新されており、将来的に内容が変更される可能性があります。

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参考文献

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  3. Schmoll C, et al. Time of Day and Muscle Strength: A Circadian Output? Physiology, 2021. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8425416/
  4. Bougrine H, et al. Effects of four different times of day on various aspects of maximal short-term physical performance in young soccer players. PeerJ, 2025. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC12553368/
  5. Galan-Lopez P, Casuso RA. Metabolic Adaptations to Morning Versus Afternoon Training: A Systematic Review and Meta-analysis. Sports Medicine, 2023. https://doi.org/10.1007/s40279-023-01879-0
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  10. 公益財団法人長寿科学振興財団. 高齢者の時間栄養学. 2023. https://www.tyojyu.or.jp/kankoubutsu/gyoseki/shokuji-eiyo-kokucare/h31-4-2-5.html

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本記事は、理学療法士の専門的視点から作成しました。科学的根拠に基づいた信頼性の高い情報提供を心がけています。

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