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呼吸が浅いとリハビリ効果が半減する?理学療法士が解説する呼吸と回復の意外な関係

2026.06.14

リハビリ

呼吸が浅いとリハビリ効果が半減する?理学療法士が解説する呼吸と回復の意外な関係

リハビリや運動を続けているのに、なかなか効果を感じられない。そんな経験はありませんか。

実は、その原因は「呼吸の浅さ」にあるかもしれません。呼吸は1日に約2万回行われる、体の基本動作です。この呼吸が浅くなると、体幹の安定性や自律神経のバランスが崩れ、リハビリや運動の効果にまで影響を及ぼす可能性があります。

この記事では、理学療法士の専門的視点から、呼吸と体の回復の意外な関係をわかりやすく解説します。今日からできる呼吸改善のセルフケアもお伝えしますので、ぜひ最後までお読みください。

💡 この記事について

この記事は一般的な健康情報を提供するものであり、個別の医学的診断や治療の代わりとなるものではありません。症状や不安がある場合は、必ず医療機関を受診してください。


目次

  1. 「呼吸が浅い」とはどういう状態?
  2. 呼吸の主役「横隔膜」の知られざる役割
  3. 浅い呼吸がリハビリ効果を下げる3つの理由
  4. デスクワークと浅い呼吸の悪循環
  5. 今日からできる呼吸改善セルフケア3選
  6. こんな症状がある場合は医療機関へ
  7. よくある質問(FAQ)
  8. まとめ

「呼吸が浅い」とはどういう状態?

呼吸が浅いとは、1回の呼吸で取り込む空気の量が少ない状態を指します。

通常、安静時の呼吸回数は1分間に12〜20回程度です。しかし、呼吸が浅くなると回数が増え、1分間に20回以上になることもあります。体が必要な酸素を確保しようと、回数で補おうとするためです。

浅い呼吸のセルフチェック

自分の呼吸が浅いかどうか、簡単にチェックする方法があります。

椅子に座った状態で、片手を胸に、もう片手をおなかに置いてみてください。普段どおりに呼吸をしたとき、胸だけが動いておなかがほとんど動かない場合は、浅い呼吸になっている可能性があります。

また、「最長発声持続時間」も一つの目安です。一定の高さで「あー」とできるだけ長く声を出してみてください。成人男性で約30秒、成人女性で約20秒が平均とされています。これを大きく下回る場合は、呼吸が浅くなっているサインかもしれません(本間, 2015)。

ただし、これはあくまで簡易的なセルフチェックです。気になる場合は、医療機関で正確な検査を受けることをおすすめします。


呼吸の主役「横隔膜」の知られざる役割

呼吸というと「肺」をイメージする方が多いかもしれません。しかし、実際に呼吸の動力源となっているのは「横隔膜(おうかくまく)」という筋肉です。

横隔膜は「体の天井」

横隔膜は、胸とおなかの間にあるドーム状の筋肉です。焼肉の「ハラミ」にあたる部分、といえばイメージしやすいかもしれません。

息を吸うとき、横隔膜は下に収縮して胸の空間を広げます。これによって肺が膨らみ、空気が入ってきます。息を吐くとき横隔膜はリラックスして元の位置に戻り、肺の空気が押し出されます。

呼吸だけではない「もう一つの役割」

理学療法士の視点から特に注目したいのは、横隔膜には呼吸以外にも重要な役割があるという点です。

横隔膜は「体幹を安定させるインナーユニット」の一部として機能しています。インナーユニットとは、横隔膜を天井、骨盤底筋群(こつばんていきんぐん)を床、腹横筋(ふくおうきん)を壁として構成される、体の中心を支える筒状の構造です。

横隔膜がしっかり収縮すると、おなかの中の圧力(腹腔内圧)が高まります。この圧力が腰椎(腰の骨)を内側から支え、体幹を安定させるのです。

つまり、横隔膜がうまく働かないと、呼吸が浅くなるだけでなく、体幹の安定性も低下する可能性があります。これがリハビリや運動の効果に影響する大きな理由です。


浅い呼吸がリハビリ効果を下げる3つの理由

では、具体的に浅い呼吸はどのようにリハビリや運動の効果に影響するのでしょうか。主に3つの経路が考えられています。

理由1:体幹の安定性が低下する

先ほど説明したように、横隔膜は体幹を支えるインナーユニットの一部です。

呼吸が浅い状態では、横隔膜が十分に収縮せず、腹腔内圧が上がりにくくなります。その結果、体幹が不安定になり、運動時のフォームが崩れやすくなると考えられています。

2023年に発表された研究では、慢性腰痛の患者に対して、横隔膜呼吸エクササイズを体幹安定化エクササイズに加えたグループは、体幹安定化エクササイズのみのグループと比較して、腹横筋の活動や胸郭の可動性に改善がみられたと報告されています(Almutairi & Almarwani, 2023)。

つまり、呼吸を改善することが体幹の安定性向上につながり、結果としてリハビリや運動の効果を高める可能性があるのです。

理由2:自律神経のバランスが乱れる

呼吸と自律神経は密接に関連しています。

息を吸うときは交感神経(体を活動的にする神経)が、息を吐くときは副交感神経(体をリラックスさせる神経)が優位になりやすいとされています(荒田, 2019)。

浅い呼吸が続くと、交感神経が優位な状態が長くなりやすく、体が常に緊張した状態になる可能性があります。この状態では筋肉がこわばりやすく、血流も低下しがちです。

リハビリや運動の後には、副交感神経が優位になって体を回復モードに切り替えることが重要です。しかし、浅い呼吸によってこの切り替えがうまくいかないと、回復が遅れる可能性が考えられます。

理由3:疲労からの回復が遅くなる

2025年に発表された研究(Amiri & Zemková, Scientific Reports)では、デスクワーカーが体幹の筋肉を疲労させた後の回復方法として、横隔膜呼吸エクササイズと体幹安定化エクササイズが、フォームローリングや安静と比較して、姿勢の安定性回復に優れていたと報告されています。

この研究は、横隔膜呼吸が単なるリラクゼーションではなく、体幹の機能回復にも直接的に関与する可能性を示唆しています。

呼吸が浅い状態が続いていると、運動やリハビリ後の疲労回復にも時間がかかりやすくなるかもしれません。


デスクワークと浅い呼吸の悪循環

「浅い呼吸」と「座位姿勢の悪さ」は、互いに悪影響を及ぼし合う関係にあります。

日本人は世界一座りすぎ?

オーストラリアの研究機関の調査によると、日本人の1日の平均座位時間は約7〜8時間で、世界20カ国中最も長いとされています。

厚生労働省が2024年に公表した「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」でも、「座位行動(座りっぱなし)の時間が長くなりすぎないように注意する」ことが新たに推奨されました。

猫背が呼吸を浅くするメカニズム

長時間のデスクワークやスマートフォンの操作で、背中が丸まった猫背の姿勢が続くと、どのようなことが起こるでしょうか。

まず、胸郭(きょうかく)と呼ばれる肋骨で囲まれた部分が圧迫されます。すると肋骨の動きが制限され、肺が十分に膨らめなくなります。

さらに、猫背の姿勢では横隔膜が十分に下がることができません。横隔膜の可動範囲が狭くなると、1回の呼吸で取り込める空気の量が減り、呼吸が浅くなります。

悪循環のチェーン

この問題はさらに悪循環を生みます。

猫背の姿勢 → 横隔膜の動きが制限される → 呼吸が浅くなる → 体幹が不安定になる → 姿勢がさらに崩れる→ 猫背が悪化する

呼吸が浅くなると、体は首や肩の筋肉(呼吸の補助筋)を使って呼吸しようとします。これが肩こりや首の痛みの原因になることもあります。

つまり、姿勢を改善するためには呼吸を見直すこと、呼吸を改善するためには姿勢を見直すこと、その両方が大切なのです。


今日からできる呼吸改善セルフケア3選

ここからは、理学療法士の視点からおすすめする呼吸改善のセルフケアを3つご紹介します。どれも特別な道具は不要で、今日から始められるものです。

※以下のセルフケアは、一般的に安全とされる方法ですが、痛みや不調がある場合は無理をせず、専門家に相談してから行ってください。

セルフケア1:仰向け腹式呼吸(基本)

まずは基本の腹式呼吸です。仰向けの姿勢で行うと、横隔膜の動きを感じやすくなります。

やり方:

  1. 仰向けに寝て、両膝を軽く立てる
  2. 片手を胸に、もう片手をおなかに置く
  3. 鼻から4秒かけてゆっくり息を吸う(おなかが膨らむように)
  4. 口から6〜8秒かけてゆっくり息を吐く(おなかが凹むように)
  5. 5〜10回繰り返す

ポイント: 胸はあまり動かさず、おなかだけが上下するイメージです。最初はうまくいかなくても、毎日少しずつ続けることが大切です。

セルフケア2:座位での呼吸リセット(デスクワーク中に)

デスクワークの合間に行える、座ったままの呼吸改善法です。厚労省のガイドでは30分ごとに座位を中断することが推奨されています。その際にこの呼吸法を組み合わせると効果的です。

やり方:

  1. 椅子に浅く座り、背筋を伸ばす
  2. 両手を肋骨の横に当てる
  3. 鼻から息を吸いながら、肋骨が横に広がるのを手で感じる
  4. 口からゆっくり息を吐きながら、肋骨が戻るのを感じる
  5. 5回繰り返す

ポイント: 肋骨の動きを手で確認することで、胸郭の動きを意識しやすくなります。呼吸筋の柔軟性向上にもつながるとされています。

セルフケア3:四つん這い呼吸法(体幹の連動を意識)

横隔膜と体幹のインナーユニットの連動を意識できるエクササイズです。

やり方:

  1. 四つん這いになる(手は肩の真下、膝は股関節の真下)
  2. 背中を平らに保つ(反らない・丸めない)
  3. 鼻から息を吸いながら、おなかを軽く膨らませる
  4. 口から息を吐きながら、おなかを軽く引き込む(おへそを背中に近づけるイメージ)
  5. 5〜10回繰り返す

ポイント: 息を吐くときにおなかを引き込むことで、腹横筋と横隔膜の協調した動きを促すことが期待できます。腰に痛みがある方は無理をせず、痛みが出た場合は中止してください。


こんな症状がある場合は医療機関へ

呼吸の浅さが気になる場合でも、以下のような症状がある場合は、セルフケアだけで対処せず、早めに医療機関を受診してください。

  • 安静にしていても息苦しさを感じる
  • 呼吸時に痛みがある
  • 横になると息苦しくなる
  • 動悸やめまいを伴う
  • 症状が1週間以上続いている
  • 日常生活に支障が出ている

これらの症状は、呼吸器疾患や循環器疾患など、別の原因が隠れている可能性もあります。自己判断せず、医師の診察を受けることが大切です。


よくある質問(FAQ)

Q1:呼吸が浅いと、どんな体の不調が出やすいですか?

浅い呼吸が続くと、肩こりや首の痛み、疲れやすさ、集中力の低下、睡眠の質の低下などが現れやすいとされています。これは交感神経が優位になりやすいことや、呼吸補助筋への過度な負担が一因と考えられています。ただし、これらの症状には他の原因がある場合もありますので、症状が続く場合は医療機関を受診してください。

Q2:腹式呼吸と胸式呼吸、どちらが良いのですか?

どちらが「良い・悪い」ということではありません。安静時には横隔膜を主に使う腹式呼吸が中心となり、運動時には胸式呼吸も必要になります。大切なのは、状況に応じて両方をバランスよく使えることです。デスクワーク中に胸式呼吸ばかりになっている方は、意識的に腹式呼吸を取り入れてみることをおすすめします。

Q3:呼吸改善のセルフケアは、1日何回やれば良いですか?

明確な回数の基準はありませんが、1日2〜3回、1回あたり5〜10呼吸を目安にするとよいでしょう。朝起きたとき、デスクワークの合間、就寝前などに取り入れると習慣化しやすくなります。大切なのは回数よりも「毎日続けること」です。

Q4:浅い呼吸はストレスとも関係がありますか?

深く関係しています。ストレスを感じると交感神経が優位になり、呼吸は自然と浅く速くなりやすいとされています。一方で、意識的にゆっくり深い呼吸を行うことで、副交感神経を活性化させ、リラックスしやすい状態をつくることが期待できます。呼吸は自律神経に対して、唯一自分で意識的にコントロールできる入り口ともいえます。

Q5:リハビリ中に呼吸を意識すると効果が変わりますか?

呼吸を意識しながら運動やリハビリを行うことで、体幹の安定性が向上し、フォームが改善される可能性があります。たとえば、力を入れる動作で息を止めてしまう「努責」は血圧の急上昇を招くこともあるため、適切な呼吸のタイミングを意識することは安全面でも重要です。具体的な呼吸法は、担当の理学療法士や医師に相談してください。

Q6:高齢者でも呼吸改善のセルフケアはできますか?

基本的な腹式呼吸は、座った状態や仰向けの状態で安全に行える方法です。ただし、持病がある方や体力に不安がある方は、かかりつけ医や理学療法士に相談してから始めることをおすすめします。高齢者の方は特に、無理のない範囲で取り組むことが大切です。


まとめ

呼吸は、普段意識することが少ない体の基本動作です。しかし、理学療法士の視点から見ると、呼吸の質はリハビリや運動の効果と深く関わっています。

この記事のポイントをまとめます。

  • 横隔膜は呼吸の主役であると同時に、体幹を安定させるインナーユニットの一部
  • 浅い呼吸は体幹の不安定、自律神経の乱れ、疲労回復の遅延につながる可能性がある
  • デスクワークの猫背姿勢と浅い呼吸は悪循環を生みやすい
  • 腹式呼吸や呼吸筋のケアは、今日からでも始められる

まずは1日1回、深い呼吸を意識してみてください。それだけでも、体の変化を感じられるかもしれません。

もし、痛みが続いたり、日常生活に支障が出ている場合は、自己判断せず早めに医療機関や理学療法士に相談してください。適切な専門家のサポートを受けることが、回復への最も確かな道です。


免責事項

記事の目的と性質

本記事は、呼吸と身体の回復の関係に関する一般的な健康情報を提供することを目的としています。理学療法士の専門的視点から、科学的根拠に基づいた情報をわかりやすく解説していますが、以下の点にご注意ください。

本記事の限界

  • 個別診断の代替不可: 本記事の情報は、あなた個人の症状や状態に対する診断・治療を提供するものではありません
  • 医療行為ではない: 記事内容は医療行為や医学的助言ではなく、一般的な情報提供です
  • 自己判断のリスク: 本記事の情報のみに基づく自己判断や自己治療は、症状の悪化や重大な健康被害につながる可能性があります

医療機関受診の推奨

以下の場合は、必ず医療機関を受診してください:

  • 痛みや不調が続いている場合
  • 症状が悪化している場合
  • 日常生活に支障が出ている場合
  • 持病や既往歴がある場合
  • 高齢者や妊娠中の方

医師や理学療法士などの専門家による適切な診断と治療を受けることが最も重要です。

情報の正確性について

本記事は2026年2月時点の最新情報に基づいて作成されており、信頼できる医学的根拠や公的ガイドラインを参照しています。しかし、医学・医療情報は常に更新されており、将来的に内容が変更される可能性があります。

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参考文献

  1. 厚生労働省. 健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023. 2024年1月公表.
  2. 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会ほか. 呼吸リハビリテーションに関するステートメント. 2018.
  3. Amiri B, Zemková E. Trunk stability and breathing exercises superior to foam rolling for restoring postural stability after core muscle fatigue in sedentary employees. Scientific Reports. 2025;15(1):13909.
  4. Almutairi NA, Almarwani MM. Effect of Adding Diaphragmatic Breathing Exercises to Core Stabilization Exercises on Pain, Muscle Activity, Disability, and Sleep Quality in Patients With Chronic Low Back Pain. Journal of Chiropractic Medicine. 2023;22(4):247-256.
  5. 日本理学療法学会連合. 理学療法ガイドライン第2版. 2021.
  6. 本間生夫. 呼吸機能と健康. 日本東洋医学系物理療法学会誌. 2015;40(2).
  7. 荒田晶子. 呼吸の意識・無意識の切り替え─発声・呼吸モードスイッチング機構─. 自律神経. 2019;56(1).

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